第4話 織姫、ホームルームの出来事を知る。

病院特有の消毒液の匂いがする。


そうだ!ホームルームのときに体調が悪くなって保健室に来て寝てたんだ。


あれからどれくらい保健室のベッドに寝てたんだろう?


寝ていたせいで、少し体が重くなかなか起き上がれない。

時間と腕の力を使い、私は、体を起こしカーテンから首を伸ばして窓の外を見る。


保健室に来たときはまだ、完全に太陽が上りきっていないようだったが今では校舎の真上、すなわち完全に上りきっているらしい。


もう昼か。


ベッドから出て、立ち上がり保健室にある時計を見に行く。


12時30分。

もうすぐ4時限目が終わる時間になっている。


給食、どうしよう。

丘星清理がいるあの教室に戻れば、また体調が悪くなる。

そんな気がした。


あんな想いをするのはもう嫌だ。


さぁ、どうしよう。

そんなことを考えていると、


『キーンコーン カンコーン、、』

4時限目の終わりを告げるチャイムが鳴った。


あーもう!面倒くさい!どーしよー!


そのまま私が悩み続けて約10分後。


バタッ

大きな音がして勢いよく保健室の扉が開かれた。


「ッ、びっくりしたー。」

私が驚いていると、


「おっ邪魔しま~す!」

聞き慣れた声がワンテンポ遅れて聞こえてくる。

そして、3人の生徒が入ってきた。


私の友達の、

森坂莉子(もりさかりこ)と、

空狐輪廻(そらこりんね)と、

海星蛍(うみぼしけい)

である。


「大丈夫?教室出てったとき、凄く顔色悪かったけど、、、」

ミディアムの少しふんわりした栗色の髪が可愛らしい女の子が心配そうに言ってくる。

髪に合わせた縁が濃い茶色の眼鏡の下にある綺麗な瞳から、今にも涙がこぼれそう。

彼女は、莉子。

先程の言葉は、昔から心配性の彼女にピッタリの言葉だった。


「マジでみんな心配してたんだよー!」

焦げ茶の大体、肩辺りまであるポニーテールを大袈裟に揺らしているかと思っていたが、困った子犬の様にしゅんとうなだれている。

彼女は、輪廻。

いつもハイテンションで元気に絡んでくるが、今は元気がない。

まさか、輪廻にここまで心配してるなんて!

意外すぎる!


(保健室に入ってきたときの声は輪廻のものだが、考えないものとする)


私は、のどが渇いて水を飲んでいると、、、。


「ほら、給食。困ってたんだろ。体調悪いのに教室に戻るのが嫌で」

「ゲホッッッ!?」

少しびびった。

何故かって?

大体図星をついてきたからだ。

さすが蛍だ。

昔からだが、私のことをよくわかってる。

蛍はサラサラの茶髪をなびかせ、かつ、自信に満ち溢れた瞳をこちらに向け

「お?図星か?」

と軽く嬉しそうにしながら給食をこちらに差し出してくる。

それを私は

「ありがと」

と軽く礼を言い、受け取った。

本当にありがたい。


「体調は、ちょっと寝たから良くなったよ。

給食は、運んできてくれてありがとう。どうするか迷ってたんだー」

と苦笑しながら、私は3人に返す。


「そういえばさ、廊下からテンション高めの声が聞こえたけどどうしたの?

輪廻ならわかるけど、莉子と蛍があそこまでテンション高いのはあんま無くない?」


私は、さっきから気になっていたことを3人に質問した。

非常に3人は、私の事を心配しているのと同時に気分が非常に良いらしい。


「それはね、、、」

3人の中で、意気揚々と輪廻が話し始める。

でも、説明がなっていない。と、莉子と蛍にダメ出しされて、

結局、2人が説明してくれた。


要約するとこうらしい。


『私が、体調が悪くなった。と言って保健室に向かった後、あの丘星清理の自己紹介があったそうだ。それがその時、クラスの不良3人組が清理にちょっかいを出したらしい。それでも清理は、怯えずに3人組に言い返したそうだ。それが気に触った彼らの1人が、彼に殴りかかったらしい。しかし、それを清理は華麗にも背負い投げで彼らを制圧した』

とのことだ。


(なんとも、出来すぎた話だこと)


ちなみに、その行動により

『彼は、校内で英雄扱い』

されているそうだ。


まぁ、元々、あの3人組は地元の危険な暴力団とも関わっていて、校内でデカイ態度を取ってたから英雄扱いされるのは、当たり前だろう。

ここにいる莉子、輪廻、蛍は彼らの事を疎ましく思っていた。だからか、嬉しいのだろう。


でも、何か違和感がある。


なんか、丘星清理って、、、。

『胡散臭い』

なぜかそう感じてしまった。

彼が完璧過ぎるからだろうか。

これが、彼に対する私の第一印象だった。

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