第16話 『阿藤』雫

「こうしてはいられません、お父様に報告しなくては」

「え?雫・・・ちょっと」

「あら?洸祐。知らないの?

雫ちゃんって、阿藤なんでしょ」


阿藤?確かに、雫は阿藤 雫だけど。


それがどうしたというのだろう。


「アンタは、まったく。

この街に住んでて何で知らないのよ。

阿藤って言ったら、『あの』阿藤しかないでしょ」


この街・・・あ、阿藤製薬!


と言うことは、雫はお嬢様?


俺たちの住んでいる街には、阿藤製薬と言う大きな製薬会社がある。


そこは、阿藤家が何代も前から一族で経営をしている。


「洸祐、すごいわね。

お家が大きくなるわ」

「あの・・・雫?」

「もう、言ったじゃないですか。

洸祐くんのお家の事情は知っているって」


俺は、幼い頃に雫に会ったことがある気がする。


幼い頃に会ってそれ以来会った記憶はなかった。


「私には、姉さまが2人と兄さまがいますので・・・」

「あの・・・雫」

「雫ちゃん、とりあえずご飯を食べましょう。ね」

「はい、お姉さま」


それから、雫は落ち着いてご飯を食べ始めた。


それにしても、雫がお嬢様か。


確かに、高嶺の花だったわけだ。

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