第10話 掌編集 2(グロあり)
いろんな夢を見た。
1 大人になれない白い町
長い長い旅の途中、白い町についた。日の光が射し、そこに影が出来るのだがその影まで白いのかというほどの、明るい町だった。旅行者として様々な国や町を巡ってきたがこんなにも美しい町並みは初めてだった。
町に入る道に、白い子供が立っていた。歳は十ほどか、真っ白な髪にこれまた白いワンピース。覗く手足も負けずに白く、靴を履いていなかった。白い町に飲み込まれそうなほどのその少女は唯一真っ赤な目をこちらに向けていて、ああ、彼女は生きているのだと思わせた。
「こんにちは、お嬢さん。私は旅行者でね、ここはどんな町なのかな」
子供に目線を合わせ問いかける。少女は私から目線をそらすと。さっと後ろを向いて走り去ってしまった。
どうしたのだろう。何か間違ったことをしただろうか。気落ちする私に、町の住人であろう男が私に話しかけてきた。
「すみません、あの子は不愛想なもので。旅の方、どうされましたかな」
その男も真っ白なシャツに真っ白なズボン。そして少女と同じ真っ白な髪をしていた。唯一違うのはその目が黒いことだけだった。
「いえ、まあ、私はこの町に来たばかりで。ここはどんな町ですかな」
「そうですね、ここは『大人になれない町』と呼ばれています」
「大人になれない?」
「ええ、ここでは子供の父親がいないと、その子供は大人になれないのです。あの子は両親を事故で亡くして、それ以来ずっとあの姿のままここにいるのです」
「誰かが父親になることは出来ないのですか」
「あの子がそれを認めれば、可能ですね」
私は彼女が走り去ったほうを見る。私では、彼女の父親になれないのだろう。彼女がそう決めたのだから。
***
2007/8/4
・父親がいないと大人になれない町にいた。私は旅行者だった。
・町の入り口に白い髪に赤い目をした子供が立っていた。両親が死んで大人になれない。白のワンピースに裸足で、一言もしゃべらなかった。
***
2 撃ち落とされた私
空を飛ぶのはとても楽しい。いろんな町、いろんな海、いろんな空を飛んできた。とん、とん、と空を蹴る。下に広がる緑の田園を眺めるのはいつだって飽きない。美しいものを見るのはとても楽しい。嬉しい。けれどそれは、あっという間に訪れた。
ターン、と音が響いた瞬間、私の左肩に衝撃が走る。ターン、ターン。続く音に何か小さなものが私の頭のすぐそばを一瞬で走り抜ける。痛みはない、私は痛みを感じない。けれどその衝撃は私を空から引きずり落とすには十分で、私はくるくると宙を舞い、地面に打ちつけられた。
頭の中で疑問符が湧き出て整理がちっともつかない。ごんごんと頭を叩く。あ、そうか。この国はまさしく、戦争の真っ最中なのだ。そんな国にふらふらのんきに迷い込んだ私は兵士に撃ち落とされたのだ。
きゃーっと悲鳴が上がり、私の傍を子供たちが駆け抜ける。兵士たちに追われているのだ。私も子供たちについて走る。こんな場所じゃとても飛んで歩けない。狙い撃ちされてしまう。
家屋が崩れた後だろうか。煉瓦でできた壁の影に子供たちと一緒に身を隠す。今にも泣きそうな小さな子供を肩を抱いてしーっとなだめる。
「見つけた! 壁の裏だ!」
兵士の声が響く。何故だ。私も子供たちも完全に息を殺し、気配を消していたはずなのにあっという間に見つかってしまった。私はふうっと口から煙を吐き出す。その隙に乗じて子供の手を引き走る。
今度隠れたのは茂みの中だった。子供たちの顔や服に泥や落ち葉を塗りたくってカモフラージュする。しかしまた、あの兵士の声が響き、私たちは走り出す。どうやらあの兵士も魔術師らしい。千里眼か、透視の能力をもつのだろう。空を飛ぶくらいしか能のない私で、この子供たちを守れるのだろうか。それともこんな見ず知らずの子供たちなんて見捨ててしまおうか。揺れる心を必死に支えて、私は子供たちと逃げ回った。
***
2007/8/某日
・空を気分よく飛んでいる(歩いている?)と下からたくさんの兵士が銃で撃ってきた。痛みはないが衝撃が強く、落ちてしまう。
・下では子供たちが兵士に狙われていて、その子供たちと一緒にレンガや資源実の中に隠れる。けれど兵士の中に千里眼+透視の能力を持つ奴がいて何度も見つかった。
***
3 給食室前、野犬注意
困ったことになったらしい。僕の通う小学校の給食室。その前に野犬が住み着いてしまったのだ。大きな黒い体をうろうろとさせ、なにかの病気だろうか、だらだらとよだれを垂らしながらこちらを見て唸り声をあげる。給食を貰うために近づいた児童に見境なく吠え掛かり、運が悪ければ噛みついてくる。まあしょうがない。そんなこともある。とりあえず給食係は三人いる。一人が囮になって犬の注意を引いている間に残った二人が配膳台を運べばいいのだ。今回は熊じゃないだけましかもしれない。
ある日、黒い犬の右後ろ足が左後ろ足に突き刺さっていた。いったい何をどうしたらそんな怪我を負うのだろう。犬はいつもより不機嫌らしく、三人の給食係を相手に順に噛みついて回っていた。給食係は病気になると泣きまわり、給食を無事に受け取ることのできたクラスは全学年あわせて、半分以下にも及んだ。
そしてついに保健所の人が来ることになった。保健所の人たちは丸い輪っかのついたぼうを持って犬を押さえつけ、車に乗せて運んでいった。先生が言うにはあの後ろ足を何とかしてやらないといけないらしい。ふーん。
それから数日間、給食係にとっては天国のような日々だった。犬は無し、熊も無し、どろどろまとわりついてくるスライムも無し。みんなうきうき足どり軽く、給食を運ぶことが出来た。
しかし結局、犬は後ろ足と病気を治療されたあと、野放しになったらしい。この学校の給食室前をいたく気に入り、給食係が来ては噛みついている。
それも結局、給食係ではない僕にとってどうでもいいことなのであった。
***
2007/9/18
・小学校の給食室の前で大きな黒い犬がうろついている。狂犬病らしく、よだれを垂らしながらあたりかまわず生徒を襲っている。
・日常らしく誰も気にしていない。
・ある日、犬の右後ろ足が左後ろ足に刺さっている怪我をしていた。
・保健所の人が犬をつかまえ治療したが、凶暴なのは元かららしく、また給食室の前で生徒を襲っていた。
***
4 それいけ三蔵法師
家のベランダで空を見ていた。雲がゆっくりと風に流されていく。ぼーっと眺めていると空の遠く向こうから黒い点が大きくなっていくのが見えた。
黒い点はだんだんと大きくなり、それが岩山だと気づいたころには、私はその大きな岩山の下敷きになっていた。お釈迦様の五行山に潰された孫悟空のようだ。そう思ってるうちに、いつしか私はまさにその孫悟空になっていた。
まあ待っていよう。これがもし西遊記ならそのうち三蔵法師がやってきて山の上のお札をはがしてくれる。そうすれば私はここから解放されて、たぶん天竺までのお供をさせられるのだろう。それもいいかもしれない。こんな岩山に潰され続けているくらいなら、冒険の旅にでるということのなんと魅力的なことか。頭に苔が生えていくのを感じながら、そんなことを考えていた。
ふと気がつくと、一人の人間が立っていた。三蔵法師だ。
「なあお坊さん、山のてっぺんにあるお札をはがしてくれよ。そしたらあんたの旅の道連れになるからさ」
三蔵法師は山を登り、札をはがしてくれた。なあお坊さん、ちょっと遠くに行ってくれよ。この岩山を吹き飛ばすからさ。
そんなことを言おうとした瞬間、三蔵法師から力の気配が立ち上るのを感じた。
「破っ!」
三蔵が一声あげこぶしを揮うと、岩山は粉々に砕け散った。ぽかんとその恐ろしい表情をみていると三蔵法師はすっと微笑んで、
「さあ、行きましょうか」
だとさ。
多分あんた一人で大丈夫だろうけど。ついて行く方がやっぱりおもしろそうだ。
***
2007/4/12
・家のベランダにいたら空から大きな岩山が降ってきた。
・気がついたら孫悟空になっていて山の下で動けなくなっていた。
・三蔵法師が来てお札をはがしたから出てこようとしたら三蔵が怖い顔になって山を一撃で粉々に砕いた。
***
以下グロ
5 ナメクジ鏡(グロ?)
不快である。なにが不快かだって? それは私がこんなにもナメクジにまみれているからだ。手に、足に、腹に、顔に。大小様々なナメクジ共が私の体を這いまわり、ねっとりと透明な跡を残す。一匹のなめくじが左目に差し掛かり、目をつむる。瞼の裏でぐろぐろと回る眼球の感触がナメクジにも伝わったのか、心持ち這うスピードが増す。いなくなれ、いなくなれナメクジ共。靴の中まで入ってきたナメクジがぶちゅりと潰れる感触が不快中の不快を極めていった。
ふと、両目を開けると目のまえに鏡が置いてあった。私の全身が映るほどの、四角い姿見だ。ああ、いやだいやだ。こんなものまで使って、私の気分をとことんどん底まで突き落としたいのか。のろのろと頭をあげると、鏡に映っていたのは自分ではなかった。
私の立っている場所は明るい。どこともいえぬ白い空間である。しかし鏡の中は真っ暗だった。そしてそこに立っているのは一人の少女である。長い黒髪にセーラー服を着たその少女は、私よりもっともっと多くのナメクジに覆われていた。
ずるずると、ぬるりぬるりと這いまわるそれは彼女の背後から湧き出てくるように見える。なんだその有様は。これを見て私は彼女よりましなのだから文句を言うなとでもいうのか。少女の暗い瞳に私は映らない。くだらない。結局の意味もない。
私は不快である。
***
2007/7/23
・ナメクジが体にまとわりついた状態で大きな鏡の前に立っていた。
・鏡の中に黒い長髪でセーラー服を着た女の子が私とは比べ物にならないほどのナメクジやよく分からないぬるぬるやべとべとを体につけていた。
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