第19話 画策(side)

「全くあの子ときたら!」

自室に戻ると、言葉とはうらはらに女王であるアデーレはにこにこしていた。

「わたしとロザリンデの一世一代の大芝居に感謝して欲しいわ!ねぇ、ロザリンデ?」

苦笑いをしながらローザが言った。

「今はローザという名です。それにしてもひどい三文芝居でした。」

「あら、王はすっかり信じていましたよ?」

「そうですね。驚くことに。」

「あの子が一緒になりたい人がいるって言ってきた時、わたしはそれが誰であろうと大賛成でしたよ!それをあの人ときたら、身分がどうとか言い出して。あげくに、「報告会」と称して身分の高い娘とお見合いさせたり。今日のことだって、あの子を遠くにおいやっておいて、リリィの方から身をひかせようとするおつもりだったんですから。」

アデーレは両手でローザの手をぎゅっと握って言った。

「本当にありがとう。ロザ、いえローザの養女だったら誰も反対なんてできないもの!」

「お礼にはおよびません。言われなくとも、わたしはリリィを養女に迎えるつもりでいましたから。」

「それにしても、リリィのマナーも誰も文句が言えないくらい完璧でしたわ!」

「ええ、それは。あの娘は、何も知らせてはいなかったのに、本当にがんばりました。」

「あなたが親友で良かった。」

アデーレはローザに抱きついた。


あの子とリリィの仲を、一見わたしが反対していると見せかけて、ローザの養女という確固たる身分を皆に知らしめる。

そうしておいて、今度は反対する理由がなくなった、と王にふたりを認めさせる。

我ながら完璧な計画だったと、アデーレは満足していた。

自分の子たちには、わたしのような政略結婚なんて絶対にさせたりなんかしない。

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