第18話 再会
王と女王に、蜻蛉の最後について話終えた。
失礼はなかっただろうか?
まわりにいる貴族たちの視線が刺すように痛い。
振り向いてローザの顔を見て安心したかったが我慢した。
「リリィと申したが、聞けば記憶を失っておるとか。そなた本当の名前すらわからぬのであろう。」
王の言葉に場がざわめく。
わたしが呼ばれたのは蜻蛉のことではない?
「そのような身分の者が...」
突然女王が王の言葉さえぎり、すっとんきょうな声を出した。
「王のおっしゃるとおりです!ど、どこのー馬の骨ともわからない娘との婚姻など、み、認められませんわ!」
これ、どこかで聞いたような…
婚姻?
「ふぅ…」
私の後ろでローザの大きなため息が聞こえる。
「ここにおりますリリィは、先日、正式に私の養女となりました。この国において、私の養女という身分ほど確かなものはないと承知しております。それとも何か問題でもおありでしょうか?」
「まぁー!」
女王の話し方がますますおかしくなってくる。
「引退されたとはいえ、聖女でいらっしゃったロザリンデ様のご息女になられたということでしたらー、何の問題もないですわ!ね、あなた?」
「ふむ、ううん…まぁ、そうだな…」
王はしぶしぶ返事をしたが、この芝居がかったやりとりには何の疑いもないようだった。
ロザリンデ?
ローザが引退した聖女?
その時突如、後ろの扉が大きな音で開いた。
「あの、いけません。今は…」
「お待ちください」
「いいから通せ。」
兵士がとめるのも聞かず、声の主はずかずかと王の間に入ってくると、ちょうどわたしの横で歩みをとめた。
「わたしを隣国に使いにやっておいて何をやってるんですか!」
「ど、どうしてここに?」
王がうろたえる。
「アルトゥロが書簡をくれたので、急いで馬を走らせて帰って参りました。」
この声…
「全く!報告会だのなんだの、わたしをこの城にしばりつけていたかと思えば、今度はいろいろ用事を言いつけてこの国から遠ざけて。」
「いや、それはその…」
王はおろおろとしながら答える
「言わずとも結構です。大方何か理由でも見つけて、わたしのいない間に勝手なことをなさるつもりだったのでしょう。」
この声…
「わたしは父上のすすめる見合いもしませんし、どこぞの王女にも興味はありません!」
この声って…
恐る恐る見上げると、そこにスザークの姿があった。
「大切な用がありますので、失礼します。」
そう言うと、スザークはわたしの手を取り、扉の方へひっぱって行く。
え?え?え?
恐る恐る振り向くと、あんぐりと口を開けた王と、その横で笑いをこらえている女王が見えた。
ローザは、あきれ顔だった。
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