第4話・・・朝ごはん_ジェネリック_前触れ・・・
朝8時半頃、食堂。
「へー、勇士って強化系火属性なんだ」
「うん。自分でも気に入ってる」
「なんかイメージ通り過ぎてつまんない」
「悪かったな!」
「強化…火…刀…イケメン………戦闘シーンはさぞ派手で格好良いだろうね。モテ街道まっしぐらだ」
「湊の中で俺のイメージが随分と捻じ曲がってるんだけど……」
勇士と湊は着替えを済ませ、食堂で朝飯を取りながら
寮は男女別だが、食堂は男女兼用である為、朝のこの時間帯だとかなりラフな格好の中学3年生男女が入り乱れている。
修学旅行の朝食タイムを何倍も緩くしたような時間だ。
ちなみに湊は今は長い夜色の髪を結い上げておらず、首の辺りで軽く束ねているだけの状態だ。今はヘッドホンも付けていない。眠気でテンションが低いのもあってか素朴な印象を与える。
それでも勇士をからかう口は止まらないのだが。
「勇士って所属する流派とかないの?」
「んー…、残念ながらそういうのはね…。あくまで基本を習っただけだし」
(意外と嘘が上手いね)
「ほう、
「今なんで言い直した!? イケメン関係ないよね!?」
「イケメンを、否定しない、勇士君」
「もう勘弁して下さい…」
勇士が首をがっくり落としていると、そこへ第三者の声が掛かった。
「おはようー。朝からにぎやかだね」
「あ、愛衣。おはよ」
「速水さん、おはよう」
トレイを持つ女生徒の名は速水愛衣。
亜麻色の髪をツーサイドアップにした明るく少し大人っぽい女子だ。朝の気が緩んだ服装が多い食堂で目立たないように、彼女にしては大人しめな服装だ(一度しか見たことないが)。
ちなみに、琉花、紫音が暮らす寮は別号館であるため、朝の食堂で顔を合わせることはない。
「お隣しつれー」
言いながら愛衣は湊の隣に腰かけた。
「なんの話してたの?」
「
「おい今のわざとだろっ」
「ほー」
愛衣は口を丸くし、湊に向けて小首を傾げた。
「湊の
「鎮静系風属性らしい。武器はナイフか狙撃銃を予定」
あらかじめ決めておいた仮の武器を口にする湊。
愛衣は白米をもぐもぐしていた口を呑み込んで、興味深そうに聞いてきた。
「なんでその武器なの?」
「ナイフは比較的扱いやすい武器だから。狙撃銃は動かずに済むから」
仮の武器だが、扱えないわけではないので、この先も困ることはない。
愛衣は唇の端を吊り上げ、面白そうに。
「ふーん。湊らしい選び方ね」
「そういう速水さんの
勇士の質問に、湊が心中で反応する。
愛衣はもったいぶらずにあっさり応えた。
「
「凝縮系は銃が定番だよね」
凝縮系の特色は『
球形に凝縮した
……しかし、
(愛衣がそんな普通の武器の気がしないんだよな)
湊の心情などつゆ知らず、愛衣の笑顔が迫ってきた。
「ねえねえ湊っ。どうせなら一緒に銃にしない?」
「それもいいかもね。体動かすとか面倒だし」
「おい…何事も楽な道はないんだぞ」
「さすが、イケメンは言うことが違うね」
「今日の名言だねっ、イケメン」
「2人してイケメン言うな」
すると、横から愛衣が一つの提案をした。
「そうそう。…今日ちょっとデパートに出掛けたいんだけど、琉花や紫音も誘ってみんなで一緒に行かない?」
湊はごはんを口に運びながら応えた。
「いいよ。今日届く荷物を運び終わった後なら」
「俺もいいよ。琉花たちにも大丈夫だと思うけど…一応聞いてみるね」
勇士がスマホを取り出し、電話をかける。
その間湊と愛衣が何気ない会話をしていた。
「そう言えば愛衣のルームメイトはまだいないのか? それとも元々いないとか?」
「ううん、ちゃんといるらしいけど、まだ来てないわね。どんな子かな」
「その子も勇士の毒牙にかかっちゃうのかなぁ」
「それはそれで面白そうだけどね」
「まあね」
「……何の話してるんだよ」
すると目の前から呆れた声が聞こえてきた。
どうやら電話は終えたらしい。
「2人とも大丈夫だって。何時ごろ行く?」
■ ■ ■
10時頃、寮前に引っ越し業者から宅配で多くの生徒の荷物が届き、それが入った段ボール箱を生徒達が自分で運んで行く。湊も段ボール箱を運んでから、勇士と一緒に集合場所に向かった。湊はいつものように夜色の髪を結い上げ、青と白を基調としたヘッドホンを首に巻いている。
集合場所である学園内の噴水前に着き、
「…はあ」
メンバーを見渡すと、つい溜息を吐いてしまう湊。
「何よ…出会い
彼女らしいさっぱりしたスカートを履いた琉花が複雑そうな表情で言う。琉花も湊の溜息の原因が分かっているのだろう。
それを、白を基調にしたふりふりなお嬢様っぽい清楚な服装の紫音が苦笑気味に言う。
「それは仕方ないと思います…5人中3人が武器を携帯しているのですから…」
そう。
レベルの高い
それは
勇士の昨日と同じく釣り竿ケースのような入れ物。
琉花はショルダーバッグと一緒に肩から掛けたソフトな素材の大きい四角い入れ物。
紫音はバッグ肘から下げるバッグとは別に、勇士と同じように肩から釣り竿ケースのような入れ物。だが紫音の場合は円柱状で勇志の刀が入った入れ物とはサイズが一回り小さくなる。
ちょっと不自然だが、3人とも美男美女なだけにそれほど違和感を覚えさせない。
「まあいいけどね」
そこまで気にした様子のない湊。
「ねえねえ、湊」
「ん?」
「どうよっ? 何か言うことない?」
そう言いながら今の自分の服装を見せ付けるに腕を軽く開く愛衣。服の感想を求めてるのだろう。
おしゃれな春物ジャケット(まだ冬だが)にミニスカニーソのギャル系ファッションがよく似合っている。
湊は気さくに微笑み、
「良いんじゃない? ちょっと小悪魔的なところがあるけど」
「ふふ、まあ誘惑してみたい人もいるしね」
唇に人差し指を当てながら、豊な胸を強調するポーズを取って、蠱惑気味に言う愛衣。その瞳はしっかり湊を捕らえている。
「そうなんだ。頑張ってね」
湊は特に表情を崩さず、気さくな微笑みでそう応えた。
勇士と違い、湊は鈍感でもなければ天然でもないので、それが自分であると当然気付いているし、それは間違っていない。だが、恋愛感情を抱いているかと言われれば怪しいところだ。
愛衣は不服そうに頬を膨らますが、それがどこまで本気なのか、湊には分からない。実力を隠してる点から見ても、判断のしようがない。
そんな裏事情が交錯する横では、イケメンが幼馴染とお嬢様の服装を褒めて赤面させていたりする。
お決まり的なやり取りを終え、5人はやっとデパートへと出発した。
■ ■ ■
「それじゃ、行ってくるねー」
「リルー、変な寄り道すんなよ」
「分かってるって、ラール。ビライもいるんだから大丈夫よ」
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