第7幕

校舎裏で、れいは四人の男子児童に囲まれていた。

 僕は、担任を呼ぶために、職員室へと向かった。

 いじめの対処法として最適なのはこれであろう。

 

 しかし、僕は一度立ち止まった。

 

 いじめてしまおう。

 彼らとともに。

 そんなアイデアが浮かんできた。

 そしてそのアイデアは、昨日のれいに対する、あのどす黒い気持ちを呼び起こしたのだ。

 

 僕は、職員室へと走った。

 あの気持ちに支配されたら暴走してしまう。


 担任を連れてれいの元へ行く。

 担任は四人をどこかに連れて行った。

 ぼくとれいがそこに残った。


 「大丈夫だった?」


 僕は若干かすれた声でそう言った。

 れいは、もぞもぞしながら言葉を、漏らすように、言った。

 

 「はい。大丈夫でした」


 互いに目が泳ぐ。

 

 「・・助けてくれて」

 

 彼がまた口を開いた。

 

 「ありがとうございます・・!」


 僕を真っ直ぐ見た。

 彼の目には恐怖が無く、そこには安堵や喜びがあった。

 

 「どういたしまして」


 僕はそっけなくそう言って走った。

 彼から離れたかった。

 彼は、彼は、善い人であった。

 そして、彼と一緒にいると、自分は極悪人であることを突き付けられる。

 だから、走った。遠くへ、遠くへ。

 自分が悪人なのは知っているが隠したかったのだ。

 こうして僕はまた逃げた。

 

 ・・・ああ嫌だな。うまく行かない。消えてくれないかな。彼は悪い人じゃない。だけど、僕をおかしくするんだ。どうすれば解決する?一旦、整理してみよう。僕をおかしくした元凶を探すところから始めよう。元凶は誰だ?れいか先生か?もちろん、僕は悪だ。害悪だ。でも、先生やれいがいなければ僕は、ここまで悪ではなかった。悪い部分が表面化しなかった。だから、元凶は先生とれいじゃないのか?先生は違う。先生は悪くない!救世主だぞ。僕の。やはり、元凶はれいだ。れいがいなければ、先生と楽しく過ごしていたではないか。最低だ。あいつは最低だよ。僕は、先生に救われていた。孤独な僕に光をくれた。世界が広がった。喜びに触れたのだ。そうだ。そうだよ。全部れいのせいだったんだ。ええい、消えてしまえ。ああ、わかってる。本当は悪くない。君は悪くない。だけど、君を正当化すると僕は消滅するだろう。生存本能だよ。だから、さ、お願い、れい。君は僕のために悪者であってね。君のこと悪者と決めつけても許してくれるよね。だって、君は善い人間なんだから。ね。じゃあさ、僕を保つために、利用されてくれよ。



 僕は、ノートを取り出して今後のプランを書き連ねた。その晩、僕は目が異常に冴えてしまい、寝ることが出来なかった。

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