124話 黄泉送り
手にした
「死の穢れを祓う剣か!? そのようなものを隠し持っていたとは!」
黄泉が叫びながらも龍達に熱線を放たせる。布津之御霊で熱線を受けて弾きながら黄泉へと向かった。
飛空兵の群れを光を宿した尾の一振りで薙ぎ払う。顎を開いて迫る龍の頭を闇の嵐と剣で斬り刻む。
黄泉が手にした剣と鍔迫り合う。雷光と冷気が周囲に拡散して互いの刃がぶつかり合う度に大気が裂けては凍てついていく。
黄泉の左腕に骸が集まって巨大な骨の腕を形成する。翼から
剣を持つ腕を蹴り上げる。腕が上がった黄泉の頬に雷光を纏った拳を叩きつけると兜が砕けてふき飛んだ。
「っ!? 体が……」
黄泉が動揺した隙に布津之御霊が生み出す雷を放出せず剣身に集束させる。集束した雷を鞘の様に掴んで剣身から抜き取ると雷は槍の形状になって手に収まった。
「ぬ、おぉ……」
黄泉が再び魔物達をけしかけようとした瞬間に雷槍を投擲する。間に入った魔物達を木端微塵にしながら空を貫く雷槍は黄泉を貫くと黄泉の門へと磔にした。
「言った筈だ。その刃であろうと死を殺せは……っ!?」
黄泉を貫く雷槍から雷が網の様に拡がっていく。雷は黄泉だけでなく門にまで瞬く間に拡がっていき動きを縛った。
「……お前を殺す必要はない」
再び布津之御霊を構える。剣身に手を沿えるとカオスクルセイダーの闇とハイエンドの光を剣身に注ぎ込んでいく。
漆黒の闇と白亜の光が混ざり合う。相容れぬふたつの力が反発と増幅を繰り返し、生み出された力が渦を巻いてひとつとなった瞬間に振り上げる。
「黄泉へと……帰れ!」
布津之御霊を振り下ろす。渦巻いた力の奔流が黄泉を突き落としながら門の奥に流れ込んでいき破壊の光が解き放たれる。
門の奥で生まれた虚空にあらゆるものが引き寄せられていく。黄泉の魔物達や骸だけでなく黄泉の門に生み出された龍達も呑み込まれていった。
「……そうか」
雷に縛られた黄泉が遠ざかる門を見ながら何かに気付いた様子で呟いた。
「負けるとは、こういう事か」
右手の拘束を外しながら呟く。もはやこの状況から巻き返す術はない筈だが黄泉は笑みを浮かべていた。
「面白い」
黄泉の右手が動き印を描く。淡い光で描かれた印は黄泉が指で突くと門の外へと向かうが黄泉以外それに気付く事はなかった。
「ベルク、貴様がこちらへ来る日を楽しみにしているぞ……我に敗北を教えた、ただ一人の男よ」
それが黄泉の最後に残した言葉だった。
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