123話 血が繋ぐもの
「なるほど、我を器ごと黄泉路に送り返そうという訳か」
蹴りの勢いが止められる。鎧の至るところから飛び出した骨が黄泉の門に突き刺さって動きを止めていた。
再び蹴り飛ばそうとした瞬間に龍の頭が横から俺に噛みつく。俺を咥えたまま遠ざかると黄泉は別の龍に自身に熱線を吐かせると別の位置で復元した。
「確かにそれならば門を封印すれば我も干渉出来ん。だが……」
双剣で龍を斬り裂いた瞬間、黄泉が更に生み出した龍の頭が四肢に噛みつく。牙越しに黄泉の冷気が流し込まれてきた。
「随分と出力が落ちてきたな……どうやら限界の様だな」
「くっ……」
「だが、貴様は油断ならん」
黄泉の門の龍は八の頭を形成すると龍達は雷や熱線を俺に容赦なく浴びせていく。四肢を抑える龍から骸達が纏わりついて俺を更に戒めた。
「このまま貴様が力尽きるまで、戒め続けるとしよう」
「がぁ……ぐあああああ!?」
鎧を通して体を痛みと衝撃が襲う。頭の中に焼きゴテを押し付けられているかの様な痛みに意識が消え掛かる。
(ま……だ……)
四肢の感覚が消えていく。冷気が身体中に伝わっていき末端から熱が失せていくと同時に意識も朧気になっていく。
(……)
全身の感覚が失くなっていく。音も、暑さも、何も見えなくなり何かに触れているかも立っているかも分からなくなっていく。
(……?)
全てが消失したかと思った瞬間、胸に僅かな痺れを感じる。それは光となって暗闇の中に灯った。
(これは……)
光に手を延ばす。消えていた筈の感覚が少しずつ血が巡り熱が戻ったかの如く戻っていく。
光を手にするとそれは一振の短刀になって納まった。失せていた感覚が雷が走る感覚と共に戻った瞬間に目の前に見覚えがない筈なのにどこか懐かしさを感じる人達の姿があった。
「貴様等、まさか……」
黄泉が呟くと龍をけしかける。光で構成された一人が手を翳すと光の障壁が現れて龍を押し止めた。
一人が進み出て兜越しに俺の頬に触れる。どこか優しい笑みを浮かべたか様に見えたその人達の姿が崩れて手にしていた短刀に宿っていった。
「う……おおおおおおおおお!!」
手にした短刀に八雷神の雷を集める。巨大な雷の刃と化して龍の頭を砕くと四肢に噛みついた龍を斬り裂いて拘束をほどいた。
「馬鹿な……貴様は既に限界を迎えてた筈」
「そうだな……だが人にはそれでもやらなきゃならない時があるんだよ! 八雷神!」
雷が短刀に集約し、雷というエネルギー体から実体と化していくそれは一振の剣へと姿を変えた。
それはカミシロの祖が手にした剣、世界が乱れ、魑魅魍魎が跋扈した地上を平定する為に天の神が遣わしたもの。
黄泉の雷たる八雷神を天の雷へと昇華させ、あらゆる穢れを焼き払うカミシロが伝え受け継いできた刃。
「神威復元“
神の雷が黄泉の門を照らした。
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