100話 白亜の翼


「今の所はなんとかなりそうね」


「あぁ、だが敵も待ってはくれないだろうな」


 戦況を見渡しながらアリア達と合流する。天堂城に向かう全員が揃った所で意識をハイエンドに集中させた。


「ハイエンド、お前の姿を借りるぞ」


 全身から白亜の光を放ちながら叫ぶ。光が強まると共に手足が伸びて大きくなり、背の翼が広がって姿が人から人ならざるものへと変貌していく。


「“竜と化せし貪欲ファブニール”!」


 叫びが咆哮となって響き渡る。今の俺の完全なる竜の姿にアリア達以外は少し茫然としていた。


「段々なんでもありになってきてるわね……」


「ずっととはいかないがな。さぁ、乗れ」


 ハイエンドの姿へと変わる“竜と化せし貪欲ファブニール”はハイエンドの力を限界まで引き出せるが消耗は“軍勢”に匹敵する。更に五分以上発動し続けると衝動の様なものが沸き上がって制御が困難になっていく。


 ロウドがこれを使わなかったのも頷ける。大軍や巨大な魔物ならまだしもただ一人にこれを使っても過剰な力のせいで隙が生じてしまう。


 だが今はこの力の使い時だった。アリア達を両腕と背中に乗せると翼を輝かせて飛翔し、セレナとアマネ、ヒノワが結界を貼ると天堂城に向けて一直線に飛んだ。


 背中に乗ったアリアが剣から炎を噴出して更に加速する。大気の壁を貫いて生じる衝撃波を結界が悲鳴を上げながらも防ぐ事でアリア達に被害はなかった。


 天堂城に貼られた巨大な結界と衝突する。端から見れば血の色に輝く壁に白亜の流星が突き立てられた様な光景は極大の削り合う音を響かせるも結界が罅割れていき、完全に拮抗が崩れて白亜の流星は天堂城へと落ちる。


 両足の爪で地面を削りながら着陸する。幾つかの城壁を破りながらも翼を盾にしながらようやく止まった。


「……乗り心地はあまり良くないな」


「うぷ……」


背から降りたラクルがザンマを抜きながらぼやく。シュリンが息を整えて降りる頃には全員降りており俺も徐々に戻っていた。


 鎧を解除するとハイエンドは剣の姿に戻る。少しの間だけハイエンドの展開は出来ないが城への侵入は成功した。


「後は……出来るだけ早くムドウを倒して黄泉の門を封じるだけだ」


 俺の言葉に全員が頷くと天守閣に向かう。敵の侵入を防ぐ為の曲がりくねった道には様々な魔物が待ち構えていたが俺が先頭に立って蹴散らしながら進んでいく。


 一際大きな城門をアリア達と力を合わせて破壊する。門を抜けるとそこは天守閣が建つ広場だった。


「来たか……」


 その中央に黒い法衣を纏う男が立っていた。

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