98話 死の軍勢


 三日掛けてオズマの城が見える場所まで行軍は滞りなく進んだ。だがそこから先に進む事は出来なかった。


「あちらも備えていたか……まぁ、当然だな」


 遠目から見ても分かるほどに城下には黄泉の軍勢が並んでいた。通常の黄泉兵だけでなく5mは優に超える体格の黄泉兵や黄泉の獣と種類も様々なのがいた。


「数だけじゃないな。それにあの真ん中にいるのは他のと格が違うみたいだ」


 ラクルが遠眼鏡で見ながら言ったのは10mはあろうかという巨大な魔物だった。黄泉の獣が人型になった様な禍々しい姿の身の丈を超える槍を手にして佇んでいる。


「……あれくらいの巨人系となると久しぶりだな。ダイボラスくらいか?」


「ええ、あの時はセレナのお陰ですぐに倒せたけど……」


「今回の戦いは連合軍を主体としているからな。潰しておいた方が良いかもな」


 アリアとそんな事を話しながら将達を集める様に命じる。事前に話していた作戦の前に一仕事増やさなければならない様だ。






―――――


 連合軍がジリジリと距離を詰めると黄泉の軍勢が一斉に向かってくる。地鳴りと土煙を上げながら迫る軍勢を前にして俺は前に出た。


「竜装展開“生命の到達点ハイエンド”」


 白亜の鎧を纏って右腕を前に出す。生物の肉体や組成を操り再生する力を持つハイエンドに自らのイメージを伝えていった。


 イメージするのはかつて戦ったジャガーノート等が使っていた銃、あれを竜のブレスを吐く器官として流用できないかと辿り着いたイメージをハイエンドは形にして右腕に生成していく。


 右腕の肘から先が竜の頭を模した長大な銃を形成する。もはや大砲と言っても過言ではない大きさのそれを巨人の黄泉兵に向けた。


 竜の顎に白亜の輝きが宿る。事前に打ち合わせていた通り周囲と背後には誰も来ない様に言っておいたお陰で周囲を気にする必要はない。


「“冥府の喰竜ニーズヘッグ”」


 竜の顎から白亜のブレスが放たれると同時に翼からも白亜の光が放たれて反動を押さえる。放たれた光は向かってきていた黄泉兵達を喰らう様に消し去りながら巨人に迫り、巨人は槍で受けようとした瞬間に削り取られる様に光に呑まれた。


 続け様に巨大な炎の斬撃と樹矢の雨が他の巨兵と獣に降り注いで動きを止める。巨人の黄泉兵を倒した直後に合図が上がった。


「敵の前線は崩れた! 総員突撃!!」


 合図と共に連合軍が鬨の声を上げながら突撃する。俺はアリア達と合流する為に一旦下がる。


 黄泉の軍勢との最後の戦いはこうして始まった……。

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