85話 騎士の剣
(ベルクside)
「ラクルさんをアメリの護衛に?」
「ああ、アメリは不安定なところがあったからラクルに監視と護衛を気付かれない様に頼んでおいた」
ガルマが引く戦車を手繰りながらアメリに事の次第を話す。アリア達にもソウガの引く戦車に乗ってついてきてもらっていた。
「で、でも大丈夫なんですか? ドウゲンの強さは闘将シオンと並び称されるほどです。ラクルさん一人で戦うのは……」
「心配はない」
ヒノワの一抹の不安を取り払うように告げる。そして断言できる理由を語った。
「確かに個の強さや相手を倒す戦いなら俺は負けるつもりはない……だが
―――――
(ドウゲンside)
(こいつ……)
数合ほど打ち合って額から冷や汗を垂らす。真横から迫る斬馬刀を受け止めると手に痺れが走った。
左手の籠手に仕込んだ刃を出して突き出す。毒が塗られた刃は手首を掴まれて止められると右手の屍骨喰で腹を狙って薙ぎ払った。
ラクルはまるで重さを感じさせないように後ろに跳んで避けると同時に斬馬刀を振るう。振るわれた鋒は仕込み刃を砕いた。
「チッ!」
屍骨喰を連続で振るう。速さに重きを置いた手数の連撃が風を鳴らしながらラクルに迫るが一撃一撃を的確に捌いていく。
最後の一撃で鍔迫り合いとなった瞬間に口に仕込んでいた含み針を吹く。ラクルが顔を逸らして避けた事で一瞬だけ力が弛んだ瞬間に押し切って体勢を崩させようと踏み込むが……。
「あ?」
まるで岩を押してるような重さに勢いが止められる。その直後に押し返されて体勢を崩された。
唸りを上げて振るわれる斬馬刀を受け止める。その重さと衝撃が全身にのし掛かるがそれが休む間もなく縦横無尽に襲い掛かってくる。
(威力と速さが釣り合ってねえだろ!?)
威力は分かる。だが切り返しや次に繋がる動きが身の丈を超える斬馬刀からはありえない速さで振るわれて内心で毒を吐かざるを得ない。
舌打ちと共に足下を屍骨喰で斬りつける。地面に線が走ると巨大な裂け目となって二人を隔てた。
互いに動きを止めて睨み合う。だがラクルは斬馬刀を地面に向けて振るうと地面が抉れて礫が飛んできた。
礫を横に跳んで避けるとラクルが距離を詰めてくる。自ら踏み込んで鍔迫り合いにすると足の甲が踏みつけられた。
「がっ!?」
踏みつけられた痛みに気を取られた瞬間に手で身体に触れられる。すると突然身体が重くなって動きが僅かに鈍った。
(やべえ!?)
そう思った瞬間、斬馬刀が逆袈裟に振るわれ鋒が赤く染まった。
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