78話 空軍
「当たらなかった」
「いや、良くやった」
シュリンからの報告にそう返しながらもドウゲンの動きに眼を細める。だが方法こそ吐き気がするがドウゲンがこの程度で逃げ出す臆病者でないと分かっただけでも収穫だ。
「……なんだ?」
オヅマ軍の中腹から魔力のざわめきを感じる。その直後に中腹の黄泉兵達が空を飛んだ。
「飛行能力だと!?」
飛び上がった黄泉兵達の背を見ると禍々しい蜻蛉のような魔物がついて巨大な羽根を羽ばたかせている。
飛空兵とでも言うべき黄泉兵達は数千はおり一斉に鳴る羽ばたき音が戦場に木霊した。
「シュリン! 後ろに来い!」
シュリンに背中を任せて七支刀を飛空兵目掛けて振るう。扇状に広がる雷は迫る飛空兵達を焼き落としていくが半数近くの飛空兵達は俺達を無視して本陣へと向かった。
更に地上でも黄泉兵達が進軍を開始する。セツラが周囲の黄泉兵を蹴散らしているが全ての黄泉兵を塞き止めるのは無茶だ。
(……使うしかないか)
「シュリン、地上の黄泉兵は俺が止める。アリア達と一緒に飛空兵の対処に当たってくれ」
「分かった」
群がる飛空兵達を焼き払った隙を突いてシュリンは本陣に戻る。それを見送りながら俺も急降下して進軍する黄泉兵の先頭に“
着地と同時に剣を地面に突き刺す。闇の中にある魂達に呼び掛けて励起させる。黄泉兵達が武器を振り上げて迫るが足元の影から飛び出した者達が黄泉兵達を斬り裂く。
「進軍しろ! クルセイダーズ!」
号令と共に広がる影から漆黒に染まった戦士達が現れる。
数は未だにオヅマ軍が圧倒的だが漆黒の壁のように立ち塞がるクルセイダーズが向かってくる黄泉兵達を蹴散らす。更に遠距離攻撃ができる幾人かは背後から飛空兵達を撃ち落としていった。
数千の飛空兵もセレナが結界で防いだりアリアとシュリンを筆頭にしてゴモン軍も弓矢等で対抗し降りてきた黄泉兵を一斉に攻撃して倒していく事で徐々に数を減らしていく。
だが飛空兵はまだ現れる。飛び立たれる前に対処しなければならないとガルマを召喚して飛空兵が現れる地点に目を凝らすと怪しく光る水晶を持った兵士を見つけた。
(あいつか!)
ガルマに命じて跳躍する。着地地点にいた黄泉兵をふき飛ばしながら漆黒の風を纏って駆け抜けて水晶を持つ兵士に一直線に向かう。
兵士はこちらに気付くと周囲の黄泉兵と飛空兵がガルマごと俺を止めようと張り付いてくるが雷を全身に纏ってふき飛ばした。
「ひいっ!?」
兵士が背中を向けて逃げ出そうとする。ガルマが地面を砕く勢いで再び跳躍すると一瞬で追いつき、振るった七支刀が兵士ごと水晶を斬り裂いた。
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