77話 救出
戻ってから丸一日経ち、軍を編成して東谷城近くの平原でオヅマ軍を待ち構える。こちらの兵力はフドウやヒルコ達が加わって九千近くとなったが平原に布陣しているのは四千ほどだった。
「見えた」
傍に控えていたシュリンが琥珀の眼を輝かせながら呟く、どうやらオヅマの軍が来たようだ。
「先頭にいるのは?」
「……黄泉兵、それが木の板に人を縛りつけて持ってる」
「……ある程度で良い、人質はどれくらいいる?」
「先頭に大体四百くらい、それから後ろにはいない」
「……なら手筈通りにいくぞ」
俺の言葉にシュリンは頷くとエイルシードを構える。俺もカオスクルセイダーを構えて二人同時に力ある言葉を口にした。
「軍装展開“
「緑装展開“
黒と緑の風が吹き荒れる。漆黒の鎧を纏うと“蝕”を発動して翼を広げると大太刀に闇を込めていく。
シュリンも弓に魔力を込めていく。淡い緑の光に包まれた弓に小さな種がパキパキと音を立てて生え増えていく。
オヅマ軍が互いに弓矢が届く範囲まで迫る、俺とシュリンは同時に飛翔して構えた。
シュリンの構えた矢が放たれた瞬間、数百の種が風と共に通常よりも更に力を込めた“
「“
数百の種がひとつずつ人質を抱えた黄泉兵に撃ち込まれる。すると黄泉兵の力を吸収して花が急速に成長して黄泉兵は崩れ落ちていく。
その後ろにいる黄泉兵達の足元に種が落ちる。それは急速に成長して黄泉兵達の背を優に超える樹木となって並び一時的に分断した。
「やるぞ、八雷神」
「カカカカ、心得た!」
背負っていた七支刀を手にする。樹木の壁を壊そうとしたり迂回して進んでくる黄泉兵達に狙いを定めた。
七支刀から八の雷が放たれる、地上に落ちた雷は地を抉り進もうとしていた黄泉兵をふき飛ばしていった。
続け様に放たれる雷の雨が侵攻を防ぐ。すると平原の左右の森に隠れていたイルマとヒルコがが数百の兵と共に現れて木の板に縛りつけられていた人質を抱えてこちらに戻る。
「あはははははははははは!」
人質を助けるイルマ達に同行していたセツラが錆不離で黄泉兵を蹴散らす。弓矢が放たれるが殿についたセレナが結界で守る事で無事に本陣に戻っていけそうだ。
「後は叩き潰すだけだ」
「カカカカ、一足先に黄泉に還してやろうではないか!」
七支刀に雷を宿して振るう。八の雷が巨大な鉤爪の如く黄泉兵達を抉り取った。
―――――
(ドウゲンside)
「へえ、あれならもう少し肉盾を取っとけば良かったな」
前線で起きている事を遠眼鏡で見ながら呟く。ベルクの手際の良さと今まさに黄泉兵を蹂躙している力に思わず口笛を吹きそうだった。
「あの雷は報告にはなかったな……おまけに本当に鬼を従えてたとはな……っと」
すぐ傍にいた部下の首を掴んで前に出す。すると遠くから飛来した矢が部下に刺さると苦悶の声と同時に矢が根を張って成長し始めた。
「苦しいか? 楽にしてやるよ」
盾にした部下の首を刎ねる。噴き出した血が掛かるが気にする事もなく前線を見据えた。
「さて、第二幕と行くか」
屍骨喰を肩に置きながら黄泉兵達に指示を出した。
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