72話 雷の試練
「カカカカ!」
八雷神の四本腕から雷が放たれる。右の籠手から鎖を出して雷の射線上に勢い良く振り抜いた。
唸りを上げて振るわれた鎖の先端は音速を超えて一瞬だけ真空を生み出す。雷が真空に流されて逸れた瞬間に踏み込んで互いに拳が届く距離に迫った。
引き絞る様に腰を回して右腕を勢い良く打ち出す。八雷神が打ち出された拳を受け止めると乾いた音が雷に匹敵する大きさで響き渡った。
「カカカ、見事見事、だがこれはどうかのう?」
八雷神は受け止めた拳を強く掴むと同時に左腕を掴む。そして俺の頭上が一際激しく輝くと俺を包み込むほどの雷の柱が降り注いだ。
「っ! がっ……」
「カカカカ! さあ、お主は我等が雷に耐えれるかのう!?」
あからさまとも言える雷の起こりはこの為かと気付くも全身に爆ぜるような衝撃が襲い掛かる。骨の髄まで荒れ狂う雷に動きが止まるがなんとか身体強化を発動しながら歯を喰い縛って耐える。
「……っ!?」
雷を浴びている中で心臓が激しく高鳴る。雷を通じてバラバラになりそうな衝撃に襲われていた身体が繋がるような感覚が一瞬だけ過った。
(そうか!)
思い出すのは焔雷を纏って戦った男だ、内に焔雷を宿す事で凄まじい力を振るってみせた一人の武人との戦いが打開策を閃かせる。
(一瞬で良い! 奴より出力を……上回る!)
体内で身体強化に回していた魔力を全て
……一説によると生物が身体を動かす時は頭から微弱な電気が走るそうだ。それが信号となって身体を動かしているという。
だからこそより強い電気を浴びると動けなくなってしまう。だが言い換えればより強い電気信号を送る事が出来れば動かせるという事だ。
「うおおおおおおおおっ!!」
「ぬう!」
思い切り踏み込んで雷の柱を抜け出す。虚を突かれた八雷神が勢いのまま押されて踵を踏んだ瞬間に手を振りほどいて跳躍すると八雷神の角を掴んで上半身に飛び乗った。
「辿り着いたぞ……この野郎」
角を掴んだまま身体ごと勢い良く背を仰け反らせる。限界まで仰け反った瞬間に勢い良く跳ね返る様にして頭を叩きつけた。
「ぐぬおおおおっ!?」
大鐘を突いた様な轟音が木霊する。頭突くと同時に手を放して着地すると同時に八雷神の巨体が音を立てて倒れる。
周囲に漂っていた雷が霧散していく。それに呼応する様に八雷神の巨体もほどけていくと再び八つの頭蓋となって宙を漂った。
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