65話 浄化
襲ってくる魔物達の大半がアンデッドや毒を持つ魔物だった。魔物達は進む毎に様々な種が現れては牙を剥いてくる。
常人の倍近くはある巨大蠍に向けて“
巨大蠍は奇怪な鳴き声を上げながら暴れ回る。長大な尾の針が背に乗った俺に向けて迫るが手斧で下から打ち上げて逸らすと剣を引き抜いて尾の節を斬り裂いた。
宙を舞う尾の針を掴む、黒く染まった針を巨大蠍の頭に勢い良く振り下ろして根元まで突き刺した。
再び“風跳”で宙を蹴ってセレナ達のところに戻る。その直後に痙攣した巨大蠍は力を失って崩れていった。
「そっちも終わったか」
「ああ」
ラクルが騎士剣を収めながら声を掛けてくる。それに頷きながら全員の状態に異常がないかを確認してから先に進んだ。
「あれは……」
視界にあるものが入ってくる。少し先に倒壊したような朽ちた木材等があり近くに行くと同じものが幾つかあった。
「此処が……」
「ヒジマの里、なんだろうな」
里に入ると中央に岩のドームのようなものがあった。セレナに浄化の準備をしてもらおうとしたところで迫る気配に気付く。
「全員下がれ!」
俺の声に一斉に下がった直後に地面から勢い良く何かが飛び出す。それは蛇の魔物を咥えながら俺達を見下ろした。
「アシッドピーコックか」
下手に戦えば周囲に与える影響の大きさから倒すなら迅速に戦う必要があった。
「セレナ、合わせてくれ」
俺はそう言うと剣を掲げる。アシッドピーコックが羽ばたいて毒の羽根を放ってくると同時に跳躍して力ある言葉を口にする。
「軍装展開“
渦巻く黒い嵐が放たれて毒の羽根を吹き飛ばす。吹き荒れる嵐の中から鎧を纏って飛び出した俺はすれ違い様にアシッドピーコックの片翼を斬り裂いた。
「―――――ッ!!?」
翼を斬り裂かれて体勢を崩したアシッドピーコックの頭上で剣を上段に構えて“
「“
聖水を纏った剣をアシッドピーコックに振り下ろす。刃が胴体を両断し、聖水は毒を浄化していく。
アシッドピーコックの断末魔も地面に俺が着地すると同時に肉体ごと消え去った。
―――――
アシッドピーコックを倒し、周囲に魔物の気配がなくなった事で俺達は浄化の準備に取り掛かった。
里の中央でカムツヒの光を浴びながらセレナがトゥルーティアーを構えて聖句を唱える。その姿は同性のアメリすら見入ってしまうほど美しかった。
「涙装展開“
天使が顕現したかと見紛う姿となったセレナが杖で地面を突く。甲高い音を立てて水色の波紋が周囲に伝わっていくと淀んだ大気と黒く染まった地面が浄化され戻っていく。
しばらくして里を中心に山から毒は完全に消え去った……。
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