64話 毒に侵された地


 山に入り中腹まで登ったところで要石によって貼られた結界を発見する。要石を境にして草木が生い茂っているこちら側に対して結界の向こう側は草木が枯れ地面が黒くなり泥のようになっていた。


「これは……」


近くにあった木の枝を折って投げ込むと地面に落ちた木の枝は徐々に枯れていく。周囲の状況からしても結界の向こうは地面だけではなく気化した毒も蔓延しているのは明らかだった。


「相当に強い毒だな……ここから浄化は出来ないか?」


「これほど広範囲となると流石に……浄化するには毒の中心点に行く必要があります」


「無理矢理行くにはリスクが高過ぎるな、戦車チャリオットもこの地面じゃ進めないだろう……セレナ、一部分だけ浄化してくれないか?」


 セレナは頷くとトゥルーティアーを掲げる。杖の先から水球が生まれて地面に向けて撃ち出されると水球が落ちた箇所が元の土に戻るが周囲の毒によって徐々に黒くなっていった。


「少し時間は掛かるが元に戻ってしまうな……どうする?」


「これを」


 ラクルの問いに俺はバックから取り出した魔石を全員に手渡していく。魔石には簡易の“風の加護フォローウィンド”の術式を刻んである。


「まずセレナに道を浄化してもらいながら進む、気化した毒は魔石の“風の加護”で防ぐ、道中で魔物が出た場合は俺、ラクル、アメリで対応する。ヒノワはセレナに増幅を掛けて消耗を少しでも減らしてくれ」


「……本当になんでもありだな」


「必要最低限だ」


 全員が“風の加護”を纏ったのを確認するとセレナに合図して促す。セレナはトゥルーティアーを翳して毒の地面を割っていくかの如く進んだ。


「良し、効果が切れる前に進むぞ」


 全員が結界の中へと入る、毒気によって淀んだ空気とボロボロになって僅かに原形を残す森を歩いていると近づく気配を感じて剣を抜く。


 地面から飛び掛かってきたスカルサーペントを頭から叩き斬る。他にも気配を感じ取ると幾つかの魔物が近づいていた。


「歓迎されてるみたいだな」


「ああ、やはり生物はいなくても適応した魔物はいるようだ」


 クロスボウを手にして飛び掛かるスカルサーペントを撃ち抜く。ラクルもザンマではなく騎士剣で斬り払い、アメリも抜刀術で圏内に入ったのから斬り捨てる。


「このままセレナとヒノワを守りながらヒジマの里まで突っ切るぞ、いざとなったら展開をして一気に進む」


 俺の言葉に全員が頷く、これほどの状況だと里に手がかりが残っている可能性は絶望的だがやれる事だけでもやっておくべきだと思い直して進んでいった。

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