25話 制圧
「続け!」
城門を越えて城へと入る、城壁を破壊して乗り込んでくるのは想定していなかった様で守備は薄く混乱も起きていた。
「左右に展開して城を囲め!ラクルは兵達と一緒に行って内門を開かせるな!
アリアはセレナと一緒に城を中から攻めろ!」
指示を出しながら城を見上げる、東谷城は四階建ての堅固な造りをしているが最上階は展望台としての機能の為か開け放たれていた。
「シュリン、最上階に誰かいるか?」
「……いる、他のより強いのが三人」
「よし、ならついてきてくれ」
ガルマを還して“
シュリンと二人で風に乗って城を外から駆け上がっていく、駆け上がっては鎖杭を次々と突き立てて瞬く間に四階に登って展望台の柵を掴み乗り込んだ。
「むっ!?」
最上階にいた鎧を着た一人が刀を抜いて斬りつけてくる、すぐさま刀で受けると後ろにいる術師が呪符を手にしながら術を行使しようとしていた。
だが術師の肩にシュリンが射った矢が刺さる、苦悶に顔を歪めながらも術を使おうとするが……。
「ぐっ!?があああああっ!?」
術師の射られた肩に根が張って成長していく、魔力を吸って成長した根は葉を生み花を咲かせた。
再び刀を振るってきた鎧武者の懐に潜り込みながら兜と仮面で覆われた顔を“
脳震盪を起こしてぐらついた鎧武者を身体強化で抱えて展望台の外に投げ飛ばす。柵を壊しながら落ちていく鎧武者から目線を外して奥にいる者に刀の鋒を向け、シュリンも矢を構える。
「東谷城の城主で間違いないな?」
「……如何にも、貴殿達は何者だ?ヒヅチの者ではあるまい」
「ミルドレア帝国の黒嵐騎士ベルク、故あってゴモンに助力している」
「騎士……
城主はしばし目を閉じ息を吐くと腰に差した刀を鞘ごと床に置く、そして深々と頭を下げながら宣言した。
「私では貴殿達には敵わん、趨勢は既に結している……降伏する」
「……分かった、ならついてこい」
城主を伴って展望台に立つと風に乗せて全体に聞こえる様に叫んだ。
「双方、武器を下げろ!城主は降伏した!戦いは終わりだ!これ以上の戦闘行動は許さん!」
俺の言葉が響き渡ると兵達は動きを止めてこちらを見上げる、城主も引き結んだ口を動かして叫んだ。
「武器を下ろせ、この戦いは我々の負けだ!」
城主の言葉にオヅマの兵達は膝をつく、その光景を目にしながら城主は口を開いた。
「私の首は落としても構わん、だが兵達の命だけは助けてもらえないだろうか」
「言っただろう、戦いは終わりだ……無意味に命を奪う気はない」
俺はそう言って城主を真っ直ぐ見ながら告げた。
「アンタ達は捕虜として扱わせてもらう、色々と聞きたい事や話したい事があるからな」
「……敗者の生殺与奪は勝者のものだ、好きにするが良い」
こうして俺達は東谷城を攻略した……。
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