24話 焔嵐の剣


「それで、どっちの城から落とすの?」


馬を走らせながらアリアが聞いてくる、元々攻める予定だった城はふたつあった。


ひとつは強固な城壁と門によって守られた東谷城、もうひとつは小さな川や池が点在する山に建てられた西水城だ。


「西水城は一旦諦めて東谷城を落とす」


「……人手の問題ね」


「ああ、流石に城をふたつを維持するには手が足りない」


本来なら俺達の存在が知られる前に西水城を落としてからライゴウと共に東谷城を落として奪取する予定だったが相手に俺達が伝わった以上は軍を再編して攻める時間はないだろう。


相手が相当の間抜けでなければすぐに援軍を送るか俺達も想定に加えた本隊を寄越すだろうからだ。


だから攻める城をひとつに絞る、下手にふたつ落とすよりはその後の城の機能を活かして迎撃の準備を整えられる方が良い。


軍の再編は奪った城を再利用する為にも必要な事だったが今は向こうが動く前に目に見える戦果が必要だ。


「城はどう攻める気だ?展開を使えば被害も少なく済むだろうが向こうに偵察の使い魔があるなら手の内を明かす事になるが」


「手は考えてある、ラクルにはひと働きしてもらう必要があるがな」


ラクルの問いに口角を上げて答える、そしてその考えを口にした。


「城壁を打ち破る、展開を使わずにな」










―――――


東谷城を目視できる場所まで着くと休憩を挟んで陣形を整えながら城を観察する。


東谷城は正面の大門と左右に小門以外に出入りする所は見当たらない、城壁は防衛用の術が付与されてる様で大抵の術や並の攻城兵器では壊せそうにない。


「やはり門の周囲はかなり厳重だな」


「ああ、だけど予想よりも兵が少ないな」


「あの先遣隊の一部はこの城の兵もいたんでしょうね」


「好都合だな、行こう」


ガルマに乗って騎馬隊の前に立つ、俺へと視線を向けるゴモン兵達を見据えながら告げた。


「これより東谷城を攻め落とす!お前達は俺に続いて城にいるオヅマ軍を倒せ!可能なら捕えろ!」


刀を手に東谷城の城壁を示す、そこは正門の反対……唯一門のない方向だった。


「立ち塞がる壁は俺達が壊す!進むべき道は俺達が開く!奴等にゴモンは奪われるだけの存在ではないと示す時だ!行くぞ!」


俺がガルマを走らせるとゴモン兵達は鬨の声を上げて続く、千の騎馬が起こす地鳴りと土煙に

東谷城のオヅマ兵が気付くと城壁の上に弓兵が集まって一斉に矢を放った。


「セレナ、シュリン!」


俺の意を察した二人はすぐに動く、シュリンはエイルシードに強烈な風を起こさせて矢の勢いを殺し、セレナが広く展開した水の膜が落ちてくる矢を防ぐ。


欠ける事なく城壁へと向かいながらアリアと目を合わせ頷きながら巨大剣グレートソードを手に取る。


「ルスクディーテ、やるわよ」


渦巻く闇を纏わせて構えるとアリアが紅蓮の焔を巨大剣に放つ、焔は渦巻く闇に巻き上げられて紅蓮と漆黒が入り交じった焔の柱へとなった。


……カオスクルセイダーはその特性故か意思が揃っていれば他のレアドロップと反発を起こさない。


だから考えた、ハイエンドの力を使えるであれば他のレアドロップの力も使えるのではないかと……。


これはその考えを元に辿り着いたひとつ、俺の“黒刃嵐舞ストームブリンガー”にルスクディーテの焔を合わせた一撃。


「“焔嵐壊剣レーヴァテイン”!」


第二射が放たれる前に渦巻く黒焔の嵐を振り下ろす、城壁に衝突した嵐は施された術ごと城壁を砕き、焼き払っていった。


城壁の上にいた兵達は衝撃で吹き飛ぶか一瞬で灰になっていく。


嵐が消え去るとそこには巨人が通ったかの如く崩れた城壁があった。

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