26話 問うのは
反抗されると思っていたがオヅマ軍はあっさりと降伏に従った、逃げ出す兵もいたが千近い兵達は大人しく武装解除している。
城主……イルマには手枷を着けて城の中で話す事になった、手枷は逃走防止の為でなく自決を防ぐ為のものだ。
アリア達も同席しているが基本的に話すのは俺でアリア達はイルマに何かあった時の為にいてもらっている。
「……ひとまずそちらから聞きたい事はあるか?」
「……兵と民達はどうなる?」
「今は武装解除して兵達に監視させている、俺達に反抗した場合はやむを得ず処断するがそれ以外の手出し……捕虜や民に対する略奪や凌辱の類も一切禁止させている」
「……何故ゴモンに味方する?帝国とゴモンにそれほどの関わりはなかった筈だ」
「それに答えるには答えて欲しい事が幾つかある、黄泉兵に関してはどこまで知っている?」
イルマはしばし沈黙するが息を吐くと観念した様に答えた。
「聞いた話でしかないがオヅマの筆頭術師であるムドウが考案した術によって呼び出したものだと……既存の式神とは比べ物にならないほど早く多く呼び出せる黄泉兵の力でオヅマは版図拡大を成し遂げた」
「黄泉兵はどうやって操っている?」
「ムドウか奴が作った呪符を持つ者が命令できる、私は持っていないがな」
……嘘は言っていないだろう、ヒノワ達に城の中を調べさせているが黄泉呪法に関わる類のものは見つかっていない上にこの城では一体も黄泉兵を確認できなかった。
「……黄泉呪法の代償に関してアンタはどこまで知っている?」
「……代償だと?」
イルマはそう言って考え込むがやがて首を横に振る、アリア達に目線をやると俺と同じく演技ではないと思ったようだ。
「黄泉呪法は使う度に黄泉の門を活性化させる、それによって世界中の魔物達が強くなっていってる。
そして門が開けば黄泉の魔物達がこの世界に雪崩れ込んでくる事になる」
「……それを信じろと?事実ならば比喩ではなくヒヅチが滅びかねない事を大殿が良しとする筈があるまい。
貴殿達が私を欺く為の欺言と考えた方がまだ納得が行く」
「アンタも本当は気付いてるんじゃないのか?」
俺の言葉にイルマの眉がぴくりと動くのを見ながら語り掛けた。
「強力な兵を呼び出し大軍で操る、それだけ強力な術を発動するだけじゃなく維持するのに何の代償もないだなんて……ありえないと分かってるんじゃないのか?」
イルマは代償の事を聞いた時に心当たりがある様な顔をしていた。薄々気付いてはいたが考えない様にしていたのだろう。
「……ありえん、大殿がそのような事を許す筈が」
イルマは顔を伏せながら呟く、そこで俺はこの男に会ってから考えていた事を話す。
「ひとつ提案があるんだが……俺達と手を組まないか?」
俺の言葉にイルマは再び顔を上げた……。
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