第2話 根暗な私は繰り返す

前回までのあらすじ!

 根暗な友達いない私、赤瀬日和はある日、転校生・基山俊介くんに出会い、恋に落ち………………見事に黒歴史を作ってしまった。


「もおおおおおおおおおおおおおお! 何やってるの! 私いいいいい!」

 昨日のことが頭から離れない。

『俺と友達になってください』

『私と……付き合って……ください』

 うわあああああああああ! なんで私、こんな恥ずかしいこと言ったんだろう。何が付き合ってくださいよ! なんで友達からじゃないのよ! せっかくのチャンスを無駄にした自分が嫌になる。

「日和〜。朝ごはんできてるわよ〜」

 リビングからお母さんの声がした。まあ、考えても仕方がない。今は朝ごはん食べて学校行って、彼の近くにいなければいいんだ………………ん? ちょっと待てよ? そういえば私…………彼と席隣じゃん!

「どどどどどうしよ〜」

 席隣だから気まずいよぉ……しかも今日学校行ったら絶対に噂になってるよ。

『赤瀬さんって知ってる〜?』

『あー隠キャのクセに基山くんに告ったらしいじゃん?』

『ほんと何がしたいんだろ〜』

『あんな隠キャが基山くんと釣り合うわけないでしょ?』

『ほんとにそれな〜。しかもあの子、今まで友達一人もいなかったらしいじゃん?』

『そうなの? じゃあどうする? ハブちゃう?』

『それ賛成〜』

 あああああああああああ! どうしよどうしよどうしよどうしよ! このままじゃ私、クラス全員からハブられて………………そして…………。

『赤瀬さん……面白い人だと思ってたのに…………ごめん……俺もハブる……』

 ぎゃあああああああああああ! そうなったらもうおしまいだ…………。私はベットの上で頭を抱えて倒れ込んだ。

『俺と友達になってください』

 そうだ。彼は昨日、私にそんなことを言ってたっけ。根暗でコミュ力0の私と友達になってくれようとしていた。返事はしていなかったが……。でも、そんな私に話しかけてくれた彼が昨日のことを他人に広めたりしないと思う………………多分。

「それでも俊介くんが隣って……」

 すっごい気まずい………………。もうこのまま昼まで寝よ……………………。

「もう! 日和! 早く起きなさい!」

 お母さんが私の部屋にノックをせずに入ってきた。


「い、いってきます……」

 昨日のことばかり考えていたせいで朝ごはんが全く喉を通らず、結局何も食べずに家を出た。お母さんがせっかく作ってくれた朝ごはん、食べられなかったなあ…………。しかしこれからどうしよう。俊介くんと席隣だし、昨日のことがあったから余計に気まずい…………。いっそのことこのまま学校サボっちゃおうかな………………。


——————————学校のチャイムがなった。

「はい、これでホームルームは終わりな。今日は全部、移動教室だから遅れずに行けよ」

 そう言って担任の先生が教室を出て行った。もおおおおお! 学校サボるんじゃなかったの!? 結局学校来ちゃったよ! しかも俊介くんもちゃんと学校来てるし! もう本当に気まずい…………早く席替えしたい…………でも今日は先生も言ってた通り全授業移動教室だし、俊介くんと隣にならずに済む…………。


「はい、じゃあ授業始めるぞ〜。みんな、自教室と同じ席に座れ〜」

 結局隣かよおおおおおおお! なんで! 自由席でいいじゃんか! なんで先生は私にこんな酷いことをするの? 今日に限ってこんなことある? これなら自教室で授業すればいいじゃん! 先生動きたくないだけでしょ!

「じゃあ、資料集15ページ開けろ〜」

 まあ、話さなかったら大丈夫だよね………………あれ? 今日、資料集いるの?

「忘れたやつは隣のやつに見せてもらえ〜」

 私が資料集を持っていないことを知っていたかのように先生が言った。まあ怒られないよりはいいか………………待てよ?

「はい、赤瀬さん。資料集忘れちゃった?」

 もおおおおおお! なんでこうなるの? 本当に神様は私の味方をしてくれない。

「ア…………ソ……ソウデス…………」

 き……気まずいいいいいいいい! 始まったばかりだけど授業早く終わって〜。

 周りを見てみると資料集を忘れていたのは私だけだった。これまた最悪だああああ! 私みたいな根暗隠キャが忘れ物なんてしていたら…………。

『え〜。あの子が忘れ物〜? まじウケるんですけど〜』

『それなあああああ。忘れ物しなさそうな隠キャなのに〜』

『どうする? ハブっちゃう?』

『それ賛成〜』

 あああああああああ! そんなこと言われてる気がするうううううう! でも待てよ? ハブる以前に私、友達いないから大丈夫か…………って大丈夫じゃない! これから友達作らないといけないのに、これじゃ一人もできないまま高校生活が終わっちゃう…………。

「赤瀬さん」

 一人項垂れている私に隣の彼が名前を呼んだ。

「ハ…………ハイ……?」

 隣の彼に名前を呼ばれ、彼の方を向くと彼もまた私の方を向いていた。

 ちょ…………ちょっと……何? なんでこっち向いてるの? 私何かおかしなこと言ったかな?

「今日の放課後…………教室残っててくれる?」

「え…………」

 え…………。何を言ってるの? 今日…………放課後…………教室…………残ってて…………これってまさか………………告白!?

「じゃあよろしく」

 彼は笑顔でそう言って先生の方を向いた。いや……よろしくって…………気持ちの整理がまだなんですけどおおおおおおおお!


「はあ〜。疲れた…………」

 午前の授業が終わり、昼休み。私は一人、昼食を取ろうと屋上に来ていた。今朝から何も食べていないせいで授業に集中できなかった…………嘘、それもあるが、それだけのせいではない。結局、一時間目から全ての移動教室で彼と隣の席になったせいでもある。…………一体、神様は私に何をさせたいのだろう…………。

「それよりも、放課後どうしよ…………」

『今日の放課後…………教室残っててくれる?』

一時間目の彼の言葉が頭から離れなかった。まさか私、告白される? でも昨日、私が言ったら「付き合うって…………早くない?」って言ってたのに告白してくるかな? あ、それか…………。

『告白は男からすべきだろうよ! だからここは俺から言わせてくれ!(男らしく)』

 なんて思ってたりするのかな…………。

「もう…………本当にどうしよう……」

 そう思いながらも私は弁当を食べる。今日はより一層お母さんの弁当が美味しく感じる。いつもありがとう…………お母さん…………ってそんなこと今はどうでもいい! それよりも今は放課後のことを考えないと!

「あ、俊介くん」

 放課後のことで悩んでいた私はふと屋上からグラウンドの方を眺めていると、数名の男子生徒と遊んでいる彼を見つけた。私は結局、こうして遠くで眺めることしかできないのかな…………。あれ? 今、目が合ったような気が…………。そう思っていると、彼は私を見かけたからなのか、笑顔でこちらを見た。絶対にこっち見たよね? それになんで笑顔? これって、本当に告白する気なのかな…………。そう思った私は、スマホを取り出し、関連用語で検索する。

「『放課後』……『教室』……『男女』……」

 三つの単語の関連用語を検索するとしっかりと引っかかった………………。

「『告白』…………」

 え、この状況…………本当に告白されるのかな…………。なんかもう疲れちゃった。放課後のことは放課後の私に任せよう…………今は午後の授業に集中しよう………………。


——————————チャイムが鳴り、教室内は帰る雰囲気になっていた。

ああああああああ! とうとう放課後になっちゃったよおおおお。結局、午後も彼のことばかり考えてしまい、授業に集中できなかった。もう本当に私、何してるんだろう…………。

「俊介〜帰ろうぜ!」

 一人の男子生徒が彼の名を呼んだ。

「あ〜ごめん! 今日はちょっと用事があるんだよね」

 彼は男子生徒の誘いをやんわりと断り、私の隣で帰る準備をしていた。断られた男子生徒は「おっけー」と軽い返事で教室を後にした。

…………放課後の教室に私と彼の二人だけ…………。この状況…………絶対告白じゃん! 友達の誘いを断ってまでここに残るってことは、告白以外考えられない!(個人の意見です)

「赤瀬さん…………」

 彼が優しく、私の名を呼んだ。

「ナ……ナンデ…………スカ……」

 相変わらず私は上手く喋れない。緊張する…………。告白するなら早くしてよ………………。すぐOKするから! 彼が喋ったらすぐに「はいっ!」って言うから!

「赤瀬さん……これ……」

「はい! 喜んで!」

 やった! ちゃんと返事できた! これで私は彼の彼女だあああああああぁぁぁぁぁぁ……………………あれ? 今………………なんて…………?

「え?」

 私の突然の返事に彼は首を傾げて反応した。

「エ?」

「え?」

「エ?」

「え?」

 何…………この状況…………。私…………何かおかしなこと言った? 彼が告白してくれたのをすぐにOKしたんだけど………………。

「あ……赤瀬さん? 急にどうしたの?」

「ナ……ナンデモ……ナイ……デス……」

「そ、そう?」

 彼が少し戸惑いながらも優しく話しかけてきた。

「そういえば、赤瀬さん。これ…………」

 私を心配していた彼は私の目の前に二冊の本を差し出してきた。

『お笑い芸人になるには』…………『誰でもできる 化粧の秘訣』…………。これって………………。

「昨日、これ……忘れてたから」

 そうだったああああああああ! 完全に忘れてた…………。告白の衝撃がデカすぎて本の存在忘れてた…………。でも……なんで今渡してきたんだろう…………。

「ア……アリガ……トウ……ゴザイ……マス……」

「本当は休み時間とかに渡したかったんだけどさ」

「イ……イエ…………」

「みんながいる前で返して変な噂されると赤瀬さん、嫌だと思って」

 そんなことないよ! なんて言えればよかったが、彼の優しさを汲み取った。しかし彼は本当に優しいな……本が傷つかないようご丁寧に紙袋に入れてくれて…………ん? ちょっと待って?

「ア……アノ……」

「ん? どうしたの?」

 私はふと気になったことがあった。

「マサカ……コレダケ…………?」

「え、他になんだと思ってたの?」

 え、なんですかこの雰囲気。私、おかしなこと言ったかな? 放課後残っててって言ってたから、何か重大なことでもするのかと思ってた。告白とか告白とか告白とか告白とかさ。

「エ……? ア……コ……コク……ハク……トカ?」

「え? 告白?」

 え、ちょっと! 私何言ってんの? なんでそんなこと言い出してんの?

「ぷッ! ハハハハハッ!」

 私の突然の言葉に彼は笑いを堪えていたが耐えきれなかったのかその場で笑い出した。

「本当に赤瀬さん、おもしろいね」

「————————ッ!」

 彼の前でまた私はやらかしてしまったのだと、気づいてしまった。

「ゴ……ゴ…………ゴメンナサアアアアアアアアアイッ!」

 再び黒歴史を作った私は彼から渡された紙袋と自分の鞄を持って、彼を残して教室を後にした。

「あ……ちょっと……また?」


「もう! またああああああ!」

 なんでまた同じ過ちを犯してしまったのだろうか。本当に自分が嫌になる。

「このままじゃ一生友達できないじゃんかああああああ!」

 私は放課後の学校の廊下を走った。そして通りがかった先生に怒られた。



「もう! なんで私がこれ運ばなきゃいけないのよ!」

 私・佐山由紀は先生に頼まれていたプリントを持って廊下を歩いていた。

「あれ? まだ誰か教室に残ってるのかな?」

 誰もいないはずの自教室から声が聞こえてきた。

「そういえば、赤瀬さん。これ…………」

 あ、あの人……転校してきた基山俊介くんじゃない? それともう一人は………………誰だっけ?

「ア……アリガ……トウ……ゴザイ……マス……」

 もう一人の女子生徒が彼に御礼を言っていた。…………あ、思い出した。あの子って確か、俊介くんの隣の席の子よね! いつも静かで誰とも喋らないからわからなかった。

 私は二人の会話を廊下の外でこっそりと聞いていた。

「本当に赤瀬さん、おもしろいね」

 突然、彼が女子生徒にそう言った。

「————————ッ!」

 彼の言葉に戸惑った女子生徒は顔を真っ赤にしてこちらに向かって走ってきた。

「ゴ……ゴ…………ゴメンナサアアアアアアアアアイッ!」

 女子生徒はそのまま私の前を通って教室を後にした。

「?? 何があったの?」

 二人の会話が全て聞こえたわけではなかったが、二人の雰囲気でなんとなくわかった。

“この二人、両思いだ!”

 そう思った私はあることを思いついた。

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