06.シロヒ、やられちゃう
「……よし」
キョロキョロと周囲を見渡し、問題がないことが確認したシロヒは一息つく。
シロヒは帰り道を順調に進んでいた。
来るときにゴブリンを仕留めていたこともあり、そこを戻るだけの道のりであったためかゴブリンもあまり出てこなかった。
"なんだー、つまんないなー"
"シロヒ襲われないかなー"
"撮れ高足りてますかー?"
「あんた達、何、物騒なこと言ってんのよ!」
"ぐふふ、さーせん"
"ごめん、シロヒ。君が襲われるところなんて観たくない。でもなぜかはわからないが、俺は今、全裸で配信を観ている"
「はぁっ!?」
"そうそう。なんでかはわからないんだけど、俺も全裸なんだよな"
"うん、何を期待してるってわけでもないんだけど"
"全裸ニキ増殖中で草。俺も一応、脱いでおくか"
「っ……」
普段、
基本的にえぐいことをさらっと言ってくる。
「でも、今日はマジであんた達の期待してる撮れ高なんてもんは一切、取り入れないから。ゴブリンだけはマジで洒落にならな……」
ぽちっ
「…………」
"あ"
"あ"
"あ"
"やったか?"
「っ……」
シロヒの足首に輪っかのようなものが巻き付いている。
そして……
「いや゛あぁああ゛ああああ゛!」
輪っかが上方に引っ張られ、シロヒは頭を下にして吊るされてしまう。
「いやっ!」
シロヒは咄嗟にスカートが重力で垂れ下がるのを防ごうとしている。
しかし、それどころではない。
"ちょいちょいちょい、ガチでやべえんじゃないか!?"
「っ!?」
シロヒが下を見ると、ニヤニヤしたゴブリン達がわらわらと集まってきていた。
「っ……」
シロヒは血の気の引くような引きつった表情となる。
「いや! い゛やぁ!」
シロヒは懸命にわらわらと集まってくるゴブリン達に剣を振る。
しかし、刃は宙を切るばかりで、ゴブリン達はその様子をせせら笑う。
そして……
「あ……」
ゴブリンが放った矢がシロヒの剣に命中し、シロヒは唯一の対抗手段である剣を手から落としてしまう。
「あぁ……! 私の剣……!」
『ひぃいひっひ』
ゴブリンはシロヒが落とした剣を持って行ってしまう。
シロヒが武器を失ったことを確認したゴブリンはゆっくりとシロヒを下ろしていく。
"うわぁああああ、やべえよ、シロヒがぁああ"
"誰か、通報を"
"もうしたけども"
善良なるリスナー達は本気でシロヒを心配している。
しかし、通報したとして助けが来るまでには相応の時間が掛かる。
そうこうしているうちにシロヒは地上付近まで下ろされている。
「この……! ゴブリン共、殺すからな! あとで絶対、殺すからな!」
『ぐぇっへっへ』
「っ……」
ゴブリン達は一斉にシロヒの衣装を
「いやぁああ゛ああ゛ああ」
シロヒは必死に抵抗するが、あっという間に肌色の占める割合が増えていく。
更には抵抗するシロヒを大人しくするためかゴブリン達はシロヒを定期的に殴打する。
「あ゛ぅ……ぁ゛ぅ……」
最初は激しくもがいていたシロヒも次第に動きが鈍くなっていく。
「や……めて……そこは……」
"やべえよやべえよシロヒぃいいい"
"シロヒ、冗談いってごめん、俺はこんなの望んでねえよ"
"せめて配信とめてあげたい"
"そっちも申請しておく"
シロヒを心配する声ももちろんある。しかし……
"罰が当たったな"
"シロヒ、ごめん……でもなぜか俺の手が止まらないんだ"
"モザイク邪魔だな"
"ふぅ……"
「っっ……」
シロヒに追い打ちをかけるコメントもある。
なんで私がこんな目に……
絶望の中、シロヒは思う。
あのおっさんがゴブリン狩りを断らなかったから……
おっさんのせい、おっさんのせい、おっさんのせい、おっさんのせい……?
いや、違う…………
そしてついに……
「っっっ……」
『ぐぃっひっひ』
ゴブリンがシロヒの間に割り込んでくる。
「い……や……」
シロヒの目尻からポロリと涙が一粒落ちる。
ゴ……
「え……?」
シロヒの間に入ろうとしていたゴブリンがいなくなっていた。
「……」
ゴシャ……
「っ!?」
シロヒが反射的に音のする方を見ると、ゴブリンが壁に打ち付けられて失神している。
「…………トウラ……さん?」
そこには金属バットを振りぬいたおっさんの背中があった。
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