図書館日和

@ufofumi

図書館日和

本たちがのどを鳴らして歌う日もあるだろう 今日は図書館日和


方解石キラリ 図書館に光が落ちる 夏の濃い影もまた


蝉時雨 覆い尽くせば 図書館の繭にこもれる人の数々


図書館のメカニズムって 魂の帰り着く場所 みつけてごらん


時間列 過去未来今と 並ぶ書架 過去今未来に直して開館


図書館の地下書庫に降るマリンスノー 記憶と呼ばれて深海魚住む


祈りの場 また呪いの場 この本の 扉開いて 選ぶものあり


勝手に夢見て勝手に敗れて図書館のすみに転がるつくも神たち


いさかいに駆けつけている 図書館の返却途中『罪と罰』を手に


せせら笑うことで耐えたい夜がある 天気予報の明日は快晴


フィクションとノンフィクションとの境界に 蟻が一匹 入れるすきま


図書館の窓に 読めない地図を書く 行き先のない集中豪雨


雨粒を振り払っている この足で渡って 虹の藍のラインを


青白い星雲ひとつ手のひらに金星行きの切符売り場へ


幾百のWindow’s という楯に 囲まれ図書館が動き始める


昼下がり アレクサンドル図書館の 壁一文字になりたくている


図書館の壁に海鳴り耳当ててアンモナイトの形状記憶


休館日 セピアの空気と 本たちのまどろむ夢を 標本にして


桜満つる このはざまへの プレリュード 図書館ゆらぐ 1/f(エフぶんのいち)


図書館の 底辺にある ハ長調 譜面を のんびり紡いでいたい


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