8.熱
「……あれ、どうして君が私の家に?」
「あ、そのままでいいから。ちゃんと説明するので……」
ベッドから起き上がろうとする赤井さんを再び横たわらせ、僕は話を始めた。
「今日、午前中授業だったでしょ。赤井さんは二時間目と三時間目の間に倒れて、保健室に行ったんだよ。それで、放課後様子を見に行ったら、親御さんが遅い、家が近い、職員会議がある、とかで、付き添って帰ってくれないか、って保健室の先生から言われて。後は承って、荷物まとめて、生徒手帳見ながら住所探して看病して、って感じ」
「あー……ちょっと風邪気味だったからなー。ごめんね。移っちゃうかもしれない」
「別に気にしてない。よかった。早いうちに目が覚めて」
「一つお願い言っていい?」
「いいよ」
「体拭きたいから、洗面所まで連れてってくれないかな」
「分かった。あ、着替えある?」
「着替えは出せるけど、ちょっと体貸してほしいな……」
「もちろん」
「よいしょ……」
「え、うわぁ!」
手を差し出したつもりだったが、彼女の体は僕の肩に乗っかってきた。
「あー、ごめん」
「べ、別に大丈夫だから」
彼女と僕は部屋の床に座った状態でぴったり体をくっつけ合っている。そのまま彼女は背の低いタンスの中身を探る。
「えーと、ここに確かあったはず……」
肩に掛けられた体重と、彼女から発せられる汗のにおいに思わずドキドキしてしまう。
「あった。どうしたの?」
「ううん! なんでもない。案内してくれる?」
「うん……」
彼女に肩を貸す形で立ち上がり、階段をゆっくり降りる。
「ありがとう。もう帰ってもらって大丈夫だから」
「とてもそんな状況には見えないけど」
「帰ってよ?」
「……分かった」
彼女はふらふらしながら洗面所に入り、服を脱ごうとした。
「ちょっ、扉!」
僕は急いで洗面所の扉を閉める。
「あっ、ごめん……」
「はぁ……」
このまま二階の部屋に一人で戻れるとはとても思えない。
*****
「……あれ、まだいたの?」
結局シャワーを浴びたようで、パジャマに着替えた彼女の髪は濡れていた。
「そりゃ、あんなフラフラな状態で任せられるわけないし、それに鍵も閉めて出られないから」
「それもそっか。ごめんね。ちょっとマシになったかも」
「体冷えるから、早く上がろう」
「……うん」
再び彼女に肩を貸し、手渡されたドライヤーを空いている手に持ち、階段に足をかけた。
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