第21話「第一章登場人物」

 第一章で登場したキャラクターについて簡単に紹介します。


【王国関係者】


マティアス・フォン・ラウシェンバッハ(1184年3月3日生まれ)

・後に「微笑みの軍師」、「千里眼のマティアス」という二つ名を持つ。

・顔の特徴:儚げな少女と見紛う女性顔

・体の特徴:病床にあったため痩せており、身長も平均より低い

・目の色:グレー

・髪の色:濃い金色

・髪型:ストレートの長髪

・肌の色:ほとんど日に焼けていない白


概要:

 本作の主人公。

 ラウシェンバッハ子爵家の長男。

 8歳の誕生日に高熱を発し、日本で生きていた頃の記憶が蘇った。名前や家族の記憶はあやふやなものの、日本で学んだことは覚えていた。

 屋外に出ることを禁じられるほど身体が弱く、王都シュヴェーレンベルクに住んでおり、魔導師でもある治癒師から彼が尋常ではない能力の持ち主という話が大賢者マグダに伝わった。

 マグダと面会するが、その際魔導師となるために必要な魔導器が先天的にないと言われる。面会の際、老婆に化けていたマグダの正体を言い当てたため、マグダはその洞察力に驚く。塔で治療しつつ学ぶことを提案し、ヴァイスヴァッヘの塔に入った。

 治療を受けながら塔にある書物を読み漁っていったが、マグダからの問いに答えるため、ヴァイスヴァッヘに集められた情報を確認するようになる。しかし、その情報が整理されていないため、独自に情報を整理分析し始めた。それにより、“情報分析室”という部署ができ、ヴァイスヴァッヘの情報網も使えることとなった。

 その後、前世の記憶を基に科学技術と魔導を融合させた魔導工学を復活させようとした。小人族の技術者を巻き込み、一部は成功したが、マグダが魔導工学の復活を恐れ、それを禁じる。

 12歳でほぼ健康になった彼は大陸の最高学府であるシュヴェーレンベルク王立学院の初等部に入学するため、王都に戻る予定。


性格・能力:

 マティアス自身の頭脳のスペックは高く、記憶力などは前世よりよい。マグダの後ろ盾があることから周りから高く評価されるが、日本にいた頃の記憶が邪魔をし、自信なさげな感じが強い。しかし、説明を始めると、前世でのプレゼンを思い出し、自信に満ちた表情と声音となり、それがギャップを生んでいる。

 周りから過剰に評価されるため、発言する際に柔らかい表情で誤魔化すことが多い。その表情が微笑んでいるように見えるため、更に誤解を受けることになる。



リヒャルト・フォン・ラウシェンバッハ(1159年11月30日生まれ)

 ラウシェンバッハ子爵家の当主。マティアスの父親。

 性格は控えめだが、家族のことを愛しており、マティアスの治療にも力を入れる。

 ラウシェンバッハ家は多くの文官を輩出しており、彼自身も宰相メンゲヴァイン侯爵の下で財務を担当している。

 ラウシェンバッハ領の経営も手堅く行っており、優秀な官僚。

 妻ヘーデ(1162年8月22日生まれ)、長女エリザベート(1182年10月11日生まれ)、次男ヘルマン(1186年5月15日生まれ)



フォルクマーク十世(1172年8月25日生まれ)

 グライフトゥルム王国国王。1193年2月20日、先代国王の急死を受け、僅か二十歳で即位。

 若くして即位したために自分に自信がなく優柔不断。ルドルフ・フォン・マルクトホーフェン侯爵に国政を牛耳られている。



マルグリット(1172年12月5日生まれ)

概要:

 グライフトゥルム王国王妃。1191年12月に当時王太子であったフォルクマークと結婚し、王太子妃となる。フィリップ・フォン・レベンスブルク侯爵の長女。控えめで家庭的な性格でフォルクマークとの仲は良い。



アラベラ(1180年1月20日生まれ)

 グライフトゥルム王国第二王妃。ルドルフ・フォン・マルクトホーフェン侯爵の長女。派手な容姿の美女で傲慢な性格。



ルドルフ・フォン・マルクトホーフェン(1155年12月25日生まれ)

 マルクトホーフェン侯爵家当主。

 王国の野心家。娘のアラベラを王妃にねじ込む。悪い意味での政治力はあるが、国内にしか興味がない。

 1196年に四ヶ国連合軍によるゾルダート帝国攻撃に積極的に賛成。フェアラート会戦での敗北の責任を取らされて隠居。ミヒャエルに家督を譲り、蟄居を命じられるが、政治への関与をやめなかった。



テーオバルト・フォン・クラース(1142年5月17日生まれ)

 グライフトゥルム王国の宰相。クラース侯爵。白髪にモノクルで小柄。マルクトホーフェン侯爵とは同盟関係にあるが、文官の家系であり戦力は多くない。



ロタール・フォン・ワイゲルト(1134年11月23日生まれ)

 マルクトホーフェン侯爵派の貴族。

 1196年、王国軍の総大将としてフェアラート会戦に参加。王国軍では最も知名度がある将で、エッケヴァルト防衛戦で活躍したとされていた。若い頃はともかく、ここ二十年ほどは功績を水増ししているため、能力的にはそれほど高くない。

 頑固さを持ち、ケンプフェルトらの意見に耳を貸さず、渡河とフェアラート攻撃を強行。会戦においてゴットフリート皇子の突撃を受け戦死した。



カスパル・フォン・ノルトハウゼン(1157年9月7日生まれ)

 ノルトハウゼン伯爵家当主。日によく焼けた鍛え上げられた身体で鋭い目つき、頬に傷がある。

 ノルトハウゼン伯爵家は代々武人を輩出する名家であり、カスパル自身も王国軍屈指の将軍。マルクトホーフェン侯爵とは対立していないものの、一線を画している。

 能力的にも高く、兵士たちのことを考えることから人気は高い。また、大賢者マグダも高く評価している。

 フェアラート会戦ではワイゲルト伯を諫めるが、聞き入れられなかった。危機的な状況で王国軍を指揮し、無事に半数を帰還させる。



ヒンツ・フォン・トゥムラー(1177年8月17日生まれ)

 マルクトホーフェン侯爵派の男爵。フェアラート会戦では五百の兵を指揮していたが、ワイゲルトの本陣を守る命令を無視して逃走。大敗北のきっかけを作った。ルドルフの愛人(ザビーネ・フォン・ヴァルネッケ子爵令嬢)の弟であり、彼自身も少年時代にはルドルフの寵童であった。



ミヒャエル・フォン・マルクトホーフェン(1181年10月15日生まれ)

 マルクトホーフェン侯爵家の嫡男。

 父ルドルフがフェアラート会戦の敗戦の責任を取って隠居したため、十六歳で家督を継ぐ。



叡智の守護者ヴァイスヴァッヘ関係者】


マグダ(2000歳くらい)

・身長:160cm

・顔の特徴:目鼻立ちがはっきりとしたオリエンタル系の美女(老婆時は鷲鼻が特徴的)

・体の特徴:肉感的(老婆時は背筋は伸びているものの、やせぎす)

・目の色:黒色(老婆時は灰色)

・髪の色:黒色(老婆時は白髪)

・髪型:腰まであるロング(老婆時はバサバサに乱れている)

・肌の色:白人系

・服:ゆったりとした黒いローブ。


概要:

 神である管理者ヘルシャーを補佐する助言者ベラーター。2千年以上生きているが、エルフではない。見た目は人間の30歳くらいの美女。但し、人前に出る時は、老婆の姿を採ることが多い。しゃべり方は時代がかっている。

 管理者ヘルシャー候補を育てることを使命とし、叡智の守護者ヴァイスヴァッヘを設立。

 高位の魔導師であり、叡智の守護者の実質的なトップだが、他の魔導師の塔にも影響力を持つ。

 各国を歴訪し、助言を与えることから、「大賢者」と呼ばれることが多い。この助言は行きすぎた行為を諌めるもので、従わない場合、災厄が訪れると言われている。実際には代行者プロコンスルと呼ばれる四聖獣が行き過ぎた行為を正すため、粛清を行っているが、それを行わせないための彼女なりの考えによる。

 第十階位の魔導まで使える世界最強の魔導師だが、影響力が大きすぎることと、助言者は管理者の命令により力の行使を制限されていることから、直接的な力だけでなく、人心の操作などの間接的なことにも力を使うことはほとんどない。

 マティアスと出会い、その考え方を知ってから目を掛けるようになる。管理者候補の側近として育てるため、ヴァイスヴァッヘに引き取った。

 マティアスの能力を高く評価し、十代の少年に対しては異常なほどの権限を与えている。特にヴァイスヴァッヘの支援を受けられること、シャッテンヴァッヘへの指揮権などはこれまでの管理者候補にすら与えなかったもの。

 なお、マグダはマティアスが転生者とは気づいておらず、異能者だと思い込んでいる。



マルティン・ネッツァー(1135年5月12日生まれ)

 ヴァイスヴァッヘの上級魔導師。普人族メンシュであるが、60歳を超えても魔導による加齢抑制によって40歳くらいにしか見えず、話し方も若い。

 王都シュヴェーレンブルクのヴァイスヴァッヘの責任者として活動。治癒師としてだけでなく、情報収集にも当たる。マグダの代理人としてシュヴェーレンブルクのヴァイスヴァッヘやシャッテンヴァッヘの指揮を執ることもある。ヴァイスヴァッヘの窓口として、王国政府に対しても影響力を持つ。

 マティアスの治療を依頼された際、彼の言動に知性を感じ、マグダに報告した。

 温厚な性格だが、魔導師らしく知的探求心が旺盛。



カルラ・シュヴァルツ(700歳くらい)

 闇森人ドゥンケルエルフェシャッテン。本来の姿は二十代前半で褐色の肌に切れ長の濃いグレーの瞳。普段はマティアス付きのメイドとして普人族メンシュの女性に化けて護衛を務める。魔導師でもあるが、身体能力の強化に使うことが多い。



シドニウス・フェルケ(1200歳くらい)

 ヴァイスヴァッヘの大導師。マグダより塔の管理を任されている森人エルフェの賢者。第七階位の魔導を使え、マグダを除けば最強の魔導師。

 普段は普人の老人に偽装しているが、本来は森人の若者の姿。



ヘルガ・エヴァルト(1142年10月30日生まれ)

 ヴァイスヴァッヘの上級魔導師。森人(エルフェ)の若手魔導師。情報分析室の発足当時からのメンバーで主任分析員。

 マティアスの情報分析に興味を持ち、直接指導を受ける。ヴァイスヴァッヘで一番の情報分析能力を持ち、マグダから絶大な信頼を受けている。



ヨルク(1133年4月14日生まれ)

 小人族(ツヴェルク)の魔導具職人。魔導具工房の親方であり、金属加工と魔法陣の作成を得意としている。小人族の工房主としてはまだ若いが、マグダが才能を評価し、ヴァイスヴァッヘ直属の工房を任せた。

 マティアスが考案した魔導式スターリングエンジンを製造したが、マグダにより廃棄を命じられた。



ゾフィア・ゲール(902年6月2日生まれ)

 ヴァイスヴァッヘの導師。森人エルフェの女性魔導師。情報分析室の室長。

 導師の中の序列は比較的低いが、若手であり新しい知識を吸収しやすいことを理由に情報分析室を任される。



エルゼ・クロイツァー(700歳くらい)

 闇の監視者シャッテンヴァッヘ八の組アハトの組頭。1194年3月の情報分析室発足から情報収集を担当。その後、ゾルダート帝国やレヒト法国への謀略も担当するようになる。



【商人組合関係】


ライナルト・モーリス(1172年12月12日生まれ)

 ヴィントムントの大商人。背は低く、行商人のような屈託のない笑顔と人当たりの良さがにじみ出る。

 ネッツァーがマティアスと引き合わせたことから大儲けし、マティアスとヴァイスヴァッヘに協力する。



【グランツフート共和国関係者】


ゲルハルト・ケンプフェルト(1154年4月20日生まれ)

 グランツフート共和国軍の将軍。東方系武術である四元流の達人。

 1196年のフェアラート会戦では三万の軍を率い、連合軍の撤退を成功させる。豪放磊落でありながらも沈着冷静で指揮能力が高く、兵士たちからの信頼も篤い。



【ゾルダート帝国関係者】


コルネリウス二世(1157年2月3日生まれ)

 ゾルダート帝国第十一代皇帝。1192年に若干35歳で即位。リヒトロット皇国との戦いで功績を上げた軍事の天才。豪放磊落な性格だが、狡猾さも持つ。軍の支持を得ており、ここ数十年では最高の名君と言われている。

 即位後、四ヶ国連合による反攻作戦を各個撃破で粉砕したが、マティアスの仕掛けた謀略によって停滞を余儀なくされる。



ローデリヒ・マウラー(1143年3月10日生まれ)

 ゾルダート帝国軍の将。1196年のフェアラート会戦では軍団長(元帥)。

 1196年のフェアラート会戦では第三軍団を率いてグライフトゥルム・グランツフート連合軍に大打撃を与える。

 沈着冷静な性格と高い作戦指揮能力により、皇帝コルネリウス二世の信頼が篤い名将。



ゴットフリート・クルーガー(1175年7月23日生まれ)

 ゾルダート帝国の第一皇子。第三軍団の上級騎士(大隊長)。

 妾腹の生まれであったため、皇位継承権は弟のマクシミリアン皇子に劣るが、勇猛果敢な性格で軍に支持者を持つ。

 1194年12月にヴォルフガング士官学校卒業後、第三軍団に配属され、マウラー元帥の下で1196年9月のフェアラート会戦に参加し武勲を挙げた。

 指揮能力、戦術能力ともに高く、個人的な戦闘力もある。また、気取らいない性格であるため兵士に人気がある。



マクシミリアン・クルーガー(1180年8月3日生まれ)

 コルネリウス二世の次男。皇妃の長男であり皇位継承権は第一位。14歳でヴォルフガング士官学校を首席で入学した秀才。



ザムエル・テーリヒェン(1153年5月30日生まれ)

 ゾルダート帝国軍の将。

 リヒトロット皇国との戦いではコルネリウス二世の下、多くの戦果を挙げる。1196年のフェアラート会戦では将軍(師団長)として参戦。グライフトゥルム王国軍とグランツフート共和国軍に大打撃を与える。

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