13
あなたが(私に)笑ってくれたから。
だから、……私はあの日、あなたに恋をしたんです。と彼女は僕に笑顔で言った。
あなたは今、夢を見ているんです。
……もういなくなってしまった、私の夢を。あったかもしれない、私たちの未来の夢を……。
病院
真っ白な病室。
そこは聖域のようだった。
きっと彼女だけの、神聖な場所なのだと思った。(実際に、そこは彼女の聖域だった。誰も足を踏み入れてはならない、透明な冬の風が吹く、新雪の雪の平原のような場所だった)
繭のように。
彼女は白いベットの中で丸くなって眠っていた。
四葉が詩織の眠っている真っ白なベットの横まで移動をすると、その誰かの気配に気がついたのか、うっすらと、眠っていた詩織がその目を開けた。
そして詩織は四葉を見た。
「おはよう。起こしちゃったかな?」
にっこりと笑って四葉は言った。
その場所にいるはずのない四葉の顔を見て、詩織はすごく驚いた顔をしたが、すぐにその顔をいつもの詩織の顔に戻した。
「……ばれちゃった」
少しの間、じっと見つめ合ったあとで、そう言って、いたずらっ子の顔で詩織はにっこりと笑った。
「君は嘘が下手だからね」
小さく笑って、四葉は言った。
四葉は、詩織のベットの横にある丸椅子に座った。
詩織のいる真っ白な病室の開きっぱなしになっている窓から、とても気持ちの良い風が、二人のいる病室の中に吹き込んできた。
今は、夏だ。
そんなことを、その風の中で、四葉はふと思い出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます