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 あなたが(私に)笑ってくれたから。

 だから、……私はあの日、あなたに恋をしたんです。と彼女は僕に笑顔で言った。


 あなたは今、夢を見ているんです。

 ……もういなくなってしまった、私の夢を。あったかもしれない、私たちの未来の夢を……。


 病院


 真っ白な病室。

 そこは聖域のようだった。

 きっと彼女だけの、神聖な場所なのだと思った。(実際に、そこは彼女の聖域だった。誰も足を踏み入れてはならない、透明な冬の風が吹く、新雪の雪の平原のような場所だった)

 繭のように。

 彼女は白いベットの中で丸くなって眠っていた。

 四葉が詩織の眠っている真っ白なベットの横まで移動をすると、その誰かの気配に気がついたのか、うっすらと、眠っていた詩織がその目を開けた。

 そして詩織は四葉を見た。

「おはよう。起こしちゃったかな?」

 にっこりと笑って四葉は言った。

 その場所にいるはずのない四葉の顔を見て、詩織はすごく驚いた顔をしたが、すぐにその顔をいつもの詩織の顔に戻した。

「……ばれちゃった」

 少しの間、じっと見つめ合ったあとで、そう言って、いたずらっ子の顔で詩織はにっこりと笑った。

「君は嘘が下手だからね」

 小さく笑って、四葉は言った。

 四葉は、詩織のベットの横にある丸椅子に座った。

 詩織のいる真っ白な病室の開きっぱなしになっている窓から、とても気持ちの良い風が、二人のいる病室の中に吹き込んできた。

 今は、夏だ。

 そんなことを、その風の中で、四葉はふと思い出した。

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