第8話 みゆきの助言

 凛子さんを毎日のように見舞っているみゆきだったが、最近、看護師さんと仲良くなったので、いろいろな話が訊けるようになった。凛子さんの話もその時に一緒に訊けるのだが、みゆきは看護師の仕事に興味を持っていた。

 まず、凛子さんについての質問が先だった。

「最近の凛子さんはどうですか? 落ち着いていますか?」

 と、聞いてみると、

「ええ、だいぶ落ち着いているようなんですが、どうも夜があまり眠れないようなんです。不眠症のような感じなのか、夢遊病の気でもあるのか、でも不思議なことに眠ってはいるんです。どうやら眠ってはいながら、眠れないかのような夢を見ているのではないかと思うほどなんですよ」

「じゃあ、負のスパイラルに陥っているような感じなのかな?」

 と聞くと、

「というよりも、うなされているのは間違いないようなんですね。よほど怖い夢を見ているんでしょうね」

 と言われて、

「でも、おかしいですよね。記憶がないのに、夢を見るんですか?」

 とみゆきが、至極当然のような質問をした。

「それは見ますよ。記憶喪失になるということは、忘れたい何かがあるから記憶を閉ざしてしまっているだけで、本当に忘れているわけではないと私は思っているんです。だから記憶喪失の人が夢を見てうなされているということは、思い出したくない記憶を夢の中で引っ張り出そうとしている証拠なんじゃないかって思うんですよ。だから、それはそれで当然のことのように思います」

 と、その看護師さんは言った。

「やっぱり、事故のショックなんでしょうかね?」

 と訊いてみると、

「そうとは限らないかも知れませんよ。何しろ、記憶喪失と一口にいっても、パターンも違えば、その深さも違う。パターンというのは、記憶喪失になるきっかけとでもいうんですか。事故で外部からの圧力によるもの、逆に内部で自分が整理できなくなってしまって、そこから逃れようとするギリギリの西晋状態が招く記憶喪失などもあると思っているんですよ」

 と、看護師は話してくれた。

「私も以前、、交通事故に遭ったことがあったんですが、その時の記憶はものすごく鮮明で、今でもその時のことを想い出すくらいなんですよ。それこそ、夢に見るくらいにと言ってもいいくらいですよ」

 とみゆきがいうと、

「そうなんですよ。みゆきちゃんが今言ったように、鮮明に覚えている人は夢の中でそれを見ても鮮明に覚えていると感じるだけで、あまり深くは印象に残りませんけど、記憶を失うくらいにショックなことに直面していると、思い出すことすら怖い。それでも夢に出てくるということは、忘れたくないという意識の裏返しなのではないかとも思うんです。だから、あまり深入りしてはいけないのではないかとも思うんですが、目の前で苦しんでいるのを見ると、何とかしてあげたいという意識になるのも、当然のことだと感じるんですよ」

 と看護師がいう。

「看護師さんは、今までにたくさんの記憶喪失の方を見られてきたんですか?」

 とみゆきが聞くと、

「私は外科ですので、基本的には外傷に対しての治療なので、基本的にはあまり記憶喪失に陥った人を見ることはありません。そういう意味では今回は例外的ですね。それだけ事故も大きかったんじゃないでしょうか?」

 という話を聞くと、

――凛子さんは命が助かっただけでも、よかったというべきなのかしらね――

 と思ったが、せっかく命が助かったのだから、記憶もなるべく早く取り戻せればいいと思った。

 しかし、本当に記憶を取り戻すことが凛子さんにとっていいことなのかどうか、誰が分かるというのか、そのあたりは、医者も分かっていて、決して無理をしようとはしない。無理に記憶を呼び戻そうとすればできなくもないのかも知れないが、肉体的にも精神的にも痛みを感じるようなことは、なるべくしない方がいいに決まっている。

「私は、怖い夢ほど覚えていたりするものだけど、それはきっと忘れることが怖いからなんだろうなって、いつも思っていました。だから、凛子さんが夢を見ながらうなされて居たというのは、怖い夢を見ているからだと思うんですが、その夢すら覚えていないということになると、逆にその夢が引っかかっていて、思い出せないのかも知れませんね」

 と、みゆきが言った。

「それはあるかも知れないですね。私も夢を見てうなされた自分に気付いて目を覚ますことがあるんだけど、怖いくせに、もう一度同じ夢を見てみたいって思うんです。でも、絶対に見ることはできないんですよね」

「夢ってそういうものじゃないですか? 夢を見せるのは潜在意識だって言われているそうですけど、潜在意識というのは、意識という言葉がついているので、意識的なことなのかなって思っていたんですけど、本当は無意識ということを意味しているようなんですね」

 とみゆきがいうと、

「ええ、そうですね。だけど、潜在という言葉がついているから、普段から身についていることで、意識もせずにできていることを潜在意識というのだと思います。どこかで意識をしているんでしょうけど、意識していないように見せないのが潜在意識なのか、それとも本当に意識の外で身体が覚えていることが潜在意識なのかって思いますね」

 という看護師に対して、みゆきも負けていなかった。

「私は、そのどっちも正しいんじゃないかって思うんですよ。世の中にあるものすべてを、有無という考えで縛り付けるのは、どうも嫌いなんですよね。いくつもの考えがあっていいのではないかと思うし、そう思う方が気持ちに余裕ができるようで、楽しい気もしてくるんですよね」

 という話を聞いた看護師さんも、

「みゆきちゃんって、まだ高校生なんでしょう? それなのに、よくそんなしっかりした考えが持てるわね」

 と言われたみゆきは、

「考えることに年齢は関係ないような気がするんだけど、問題はそこに繋がる経験をどれだけしているかということなんじゃないでしょうか? きっと私は、他の人がしていないような経験をしているんでしょうね。そう思うのが一番しっくりくるんですよ」

 と言った。

「夢を見ていると、時々怖くなることがあるんです」

  と看護師が言った。

「どういうことですか?」

「夢を見ていると、夢自体が本当のことで、現実世界が実は夢なんじゃないかって思うことがあるんですよ。同じ夢を二度と見ることはできないでしょう? それは続きを見ることができないという意味でですね。つまり夢の世界には時系列があった。過去、現在、未来が存在しているんじゃないかって思うんです。そう思うと、現実との違いがどこにあるのかって考えるようになって、急に前が見えなくなる感覚に陥るんです」

 と看護師がいうと、みゆきも、

「うんうん」

 と、相槌を打つ。

「それはまるで、真っ暗闇の中で、つり橋の上にいるような感覚ですね。前に進むにも後ろに進むにも、どちらも同じくらいの距離にいて、しかも、どっちに行っても危険は同じだとすれば。あなたはどうしますか?」

 と、看護師に訊かれて、あまり考えることもなく、みゆきはすぐに答えた。

「私なら、後ろに戻ります」

 と言った。

「どうしてですか?」

 と訊かれて、

「だってそうでしょう。もし前に進んでしまうと、自分の家に戻るには、もう一度同じ場所を通らなければいけない。絶対に先に進まないといけない理由があって、しかも時間に余裕がないと分かっているのであれば別ですが、そうではないのであれば、戻る方に間違いなく考えが至ると思います。別に危険を犯してまで、行かなければならない理由も分かっていないわけでしょう? それこそ、『君子危うきに近寄らず』ですよ」

 とみゆきは答えた。

「なるほど、みゆきさんらしいですね。じゃあ、それが夢だと分かっていればどうですか? 夢なら行けそうだとは思いませんか?」

 と看護師に訊かれて、みゆきは、さらに即答した。

「それなら、なおさら、前には進みません。いや、進めないと言った方がいいかも知れない。なぜなら、夢というのは、自分が夢を見ているということを分かっている時というのは、何でもできるという感覚になるわけではないんです。できないことはできないとハッキリ認識しているんですよ。だから私は前には進めない。夢だと分かった瞬間、何かが覚める気がするんですよ。つまりは夢の中で夢が覚めてしまって、夢が覚めたというところから、次の段階の夢が始まるというわけです。ただ、それは続きではないんですよ。あくまでも違う夢。だって、夢の続きを見たいと思っても、絶対に見ることはできないでしょう? それは潜在意識がそう感じさせるのであって、その潜在意識こそが夢なんですからね。そう思うと、絶対に前には進めるはずがありません」

 と、みゆきは答えた。

 それを聞いていて、看護師は本当に感心したような顔をしていた。その表情には明らかに尊敬の念があるようで、

「みゆきちゃんは、私が考えも及ばないところに発想があるのね。本当にすごいと思うし、素晴らしいと思うわ」

 と言った。

「そんなにおだてても何も出ないわよ」

 と、まんざらでもない表情のみゆきは、やはりまだ、ただの高校生の表情を浮かべている。

 そんなみゆきを見てホッとしている看護師は、そこも、

――みゆきという少女の魅力なのかも知れない――

 と、感じた。

 この看護師は、実は姉のなつみともよく話をしていた。

――なつみちゃんも、みゆきちゃんも、お互いに私とお姉ちゃんが、あるいは妹がよく話をしているなどと思っていないんだろうな――

 と思っていた。

 姉のなつみとの話も結構楽しかった。なつみに感じた思いは、

――私と考え方が似ている――

 というところであった。

 逆に妹のみゆきに対しては、

――どうすれば、あんな発想が思い浮かぶんだろう?

 という着眼点に大いなる敬意を表していた。

 この看護師も、看護師仲間からも、医者からも一目置かれるほどのしっかり者で、逆にいえば、彼女でなければ、みゆきやなつみ姉妹の相手は務まらないとまで感じさせるくらいだった。

 なつみは、一見大人しそうに見えるが、話し始めると饒舌だった。なつみの特徴は、自分が自分が、などと前に出るよりも、誰かの影に隠れて、影で暗躍するというタイプだった。相手の長所を引き出したり、うまく相手を操縦したりするところの才能に長けていたのだ。

 看護師も、自分のことよりも、同僚を引き立てたり、部下に手柄を譲るというような謙虚なところもあり、それが彼女の闘争心というよりも、包容力を持った余裕のある気持ちが、きっとそうさせるのだろう。

 だから、なつみを見ていて、

「同じ匂い」

 を感じた。

 なつみは自分が敬する人を、相手が上司であったり、年上であったりしても、お構いなしに引き立てようとする。今では妹のみゆきがそのターゲットである。

 いつもそばにいるなつみは、相当早い段階から、みゆきのそんな才能を見抜いていて、

「私は決して、この娘から離れないようにしよう」

 と思うのであった。

 だが、なつみと話を始めると、せっかく気さくに話しかけてくれるのに、緊張して言葉が出てこないことがあった。今までにはそんなことなどなかったのに、なつみは彼女にとっての憧れなのかも知れない。

 ただの憧れとはまた少し違う。淫靡な感じを漂わせる匂いが漂っている雰囲気だった。それを彼女は。

――女性が女性を好きになってしまうなんてことがあるのかしら?

 と、恥じらいを感じている自分に戸惑っていた。

 だが、このことがこの事件においての真相解明に大きな一役を買うことになるのだが、まだそれはもう少し後のことである。

 ただ、看護師は真剣、

「私、どうしちゃったのかしら?」

 という思いを抱いてしまい、なつみの顔がまともに見れない分、みゆきとは実によく話が合うのだった。

 密かにみゆきに自分の思いのはけ口のようなものを口にしていた。

――どうせ、相手は無垢な高校生、意味は分からないわ――

 という思いもあっただろう。

 翻弄ならこんな感情を人に話すなど顔から火が出るほど恥ずかしいことだ。しかし、彼女にとってみれば、それはどうしようもない。

 実は、彼女が自分のことを、

「同性愛が強いのではないか」

 と感じたのは、今回が初めてではない。

 実際に声を掛けて、そのような関係になったことはなかったが、密かに憧れている人がいた。その人がこの間、ビルの屋上から飛び降りた川島を目撃した柊三雲だったというのはただの偶然だと言ってもいいのだろうか。

 もちろん三雲も彼女からそんな目で見られていたなどということは知らない。ただ、三雲が病院を辞めた理由の一つに、彼女の存在があったのも事実だった。

「可愛さ余って憎さ百倍」

 と言われるが、自分の気持ちに一向に気付こうとしない彼女に業を煮やしたのだ。

 普通なら、誰がそんな関係など想像できるだろうということを分かると思うだろう。しかし、彼女は三雲に対して、嫌がらせのようなものを行っていた。バレるのが怖くて、秘密裏にしていたことなので、却って、三雲にとって、何が起こったのかと思えてくるだろう。

 実は柊三雲には、憧れている人がいた。告白などという大それたことができないのも分かっていたので、自分のことだけで精一杯の三雲に対して、気付けという方が難しいのだった。

 その相手というのが、他ならぬ辰巳刑事だったのだが。もちろん、辰巳刑事も鈍感であり、しかも刑事という立場、恋愛感情など抱くはずもないと思っている辰巳には、まったく気づかれていない。そんな辰巳を好きな三雲に、三雲を好きな彼女、おかじな構図になっていた。

 みゆきはそんな彼女からいろいろ相談されていたが、いくらみゆきでも最初は姉に対しての同性愛など、想像にも及ばなかった。

 だが、みゆきの想像力はハンパなものではない。しかも、いくら高校生とはいえ、多感な時期であり、まだまだ思春期と言ってもいい時期、やはり他の世代の女の子よりも数段性に対しての感覚は鋭くなっているのだった。

 それでも、最初気付いた時は、

「まさか、そんな」

 と思ったものだ。

 しかし、彼女の真剣な目つきを見ていると、一方的な否定は失礼な気がした。

「同性愛者というのがいるのは知っているし、今の小説の中には、官能小説とは違ったところで、BL、GLというのが存在するのも分かっている。実際には読んだことはないけど、読みたいとも思わないけど、避けて通れないこともあるのかも知れないわ」

 と感じた。

「私って、おかしいのかしら?」

 と独り言ちていた彼女を見かけたみゆきは、

「そんなことはないわ。お姉さんが悩んでいるところを見ていると、私は何とかしてあげたくなる」

 とみゆきが言った。

「みゆきちゃんは、知っていたの? 私の感情を?」

「ええ、その感情の先は、なつみ姐さんなんでしょう?」

 とみゆきが聞くと、少し躊躇いがちに上目遣いで、

「ええ、そうなの」

 と、答えた。

「どうして、お姉さんに告白しないの?」

「だって、そんなこと死んでもできない。だから苦しいの。みゆきちゃんには悪いと思ったけど、それとなく自分の気持ちを話すことで、ストレス解消していたの。みゆきちゃんならまだ分からないだろうと思っていたけど、とんだ見当違いだったわね」

 と彼女は言った。

「そうね。でも、お姉さんも自分の高校時代を思い出してごらんなさいよ。多感で何にでも興味を持っていて、それよりも何よりも、まわりから知りたくもない話を聞かされたりしたことはなかった? まるで耳年魔になってしまうくらいに感じるのよ」

 とみゆきはいう。

「確かにそうだわ。私はその時の自分を思い出すということができなかった。みゆきちゃんをちゃんと見ているようで見えていなかったのね」

 というと、

「そうなのよ。そこなのよ。お姉さんも、今なつみ姐さんのことが気になって仕方がないんでしょうけど、ちゃんとなつみ姐さんのことを正面から見えていますか? お姉さんのことだから、目を背けていませんか? そこが一番の問題だと思うんです。相手に話ができないと思っているのは、そのあたりのわだかまりを感じているからなんじゃないかって私は感じています」

 と、みゆきは言った。

「そうね。その通り、あなたのお姉さんに憧れるばかりで、相手のことをしっかりと見ていなかったから、こんなことになったのよね。そういえば、私女性を好きになったのは、なつみさんが最初じゃなかったのよ。以前この病院にいた看護師の子だったんだけど、その子を好きになったことで、私は自分が女の子を好きになるタイプなんだということを思い知らされたの。これって、恥ずかしいことだと思うし、最初は直視できなかった。認めたくなかったというのが本音だったわ。でも、いろいろ文献を見たりしていると、私はやっぱり同性愛者なのかなって思う。だけど、男性が嫌だというわけではないのよ。男性への嫌悪から女性に走る人も結構いるみたいなんだけど、私の場合は違う。男性も女性もどっちも好きなの」

 と言っていた。

「私はお姉さんがちゃんと自覚をしているので、心配はしていないわ。後は、まず相手のことを考えること。それには自分だったらどうなのかということであったり、自分の経験から感じてみたりするというのも、結構いいことなのかも知れないわね。それが私は基本なんじゃないかって思うの。最初はまずそこからですね

 とみゆきはアドバイスした。

 年上の女性にアドバイスしても、そこに違和感はない。人によっては。

「なんで、こんな小娘に言われなきゃならないんだ?」

 と感じる人もいるだろう。

 かつて、みゆきが過去の事件解決へ、大いなる助言をした時でも、中には彼女を小娘呼ばわりして彼女を受け入れる気にならなかった刑事も少なくはない。

 今でこそ、そんな人は一人もいないが、あの管轄や縦社会に厳しい警察連中を信用させるのだから、みゆきとなつみの姉妹は、本当に素晴らしい姉妹なのであろう。

 そこには、

「自分の発した言葉に責任を持つ」

 という信念が二人に感じられたのが、一番強いのかも知れない。

「若干、未成年の彼女たちの、どこにそんな信念があるというのだろう?」

 というのが、皆の意見であり、信憑性も限りなく高く、二人は警察官皆に、受け入れられていた。

 そんなみゆきの助言は、彼女には十分すぎるくらいのものであった。

 ただ、彼女がその後なつみに告白できるかどうかというのは、この事件の物語からは、若干主旨が離れていることもあって、無理に言及することはやめておこう。読者諸君の想像に任せることになるのだが、決して悲惨な結末になることだけはなかった。

 何しろ相手は、あのなつみなのである。最初はビックリするだろうが、自分でしっかり彼女の気持ちを租借して自分の気持ちに照らし合わせ、相手の身になって答える。奇しくもみゆきが彼女に教えたやり方そのままを、なつみが示してくれた。

――やはり、二人は姉妹なんだ――

 と感じていた。

 みゆきが、今回、凛子さんを見舞いながら、看護師のお姉さんの相談にも乗っていたこのこと。これがみゆきに今回の事件の真相に近づくための、ワープゾーンであるかのように感じることになるのは、それからすぐ後のことだった。

 一見何ら関係のないことであっても、偶然なのかも知れないが、その偶然が、内容が奇抜であればあるほど、偶然が重なることもあるのかも知れない。アブノーマルな発想を誰も口にはしたくない。バカにされると分かっているからだ。口ではバカにしていないと言いながら、口にする相手ほど信用ができない相手なのかも知れない。

 彼女はそのことをよく知っていた。知っているからこそ、口にできない。彼女は自分の思いをため込んでおくということが苦手なので、その分、耐えられなくなることが多かった。

「どうすればいいんだろう?」

 と感じた時のために、今までも今回も、相談相手がいつも彼女のまわりにいたというのは、偶然というよりも、たくさんの知り合いの中で、どの人がそういう相手になりうるかということを即座に感じることができるという意味で、それが長所なのかも知れない。

 しかし、

「長所と短所は紙一重」

 と言われるではないか。

「長所と短所は背中合わせ」

 とも言われるが、その言葉はおおむね同じ意味に感じられる。

 つまり、長所のすぐそばに短所があり、一歩間違えれば、もろ刃の剣になってしまうという意味であった。

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