第6話 過去と現実

 入院してから三日が経ち、ずっと付き添ってくれていた教頭だったが、さすがにきつくなったのか、四日目には、

「一度、家に帰られた方ですよ」

 という校長先生の意見もあり、

「そうですか。では一度引き揚げます」

 と言って、家に帰っていた。

 教頭としても、良かれと思って彼女を招いて、せっかくこれからだというところだっただけに、そのショックは計り知れないものがあった。

 それに教頭は彼女の教育に対しての熱心さに共感していて、

「この学校をよくしてくれるのは、彼女のような人だ」

 と思っていた。

 かなりの評価をおいていたのだが、その評価が正しいのではないかと、まわりの先生も気づき始めていた時だったので、まわりの先生も他人ごとではないと思うようになったいた。

 そんな彼女が事故に遭って、意識不明。教頭の憔悴は酷いものだった。

 入院中もずっと付き添っていて、夜中も目を覚ますのを今か今かと待ち続けていた。だが、さすがに年齢には勝てないのか、三日目の昼過ぎに、貧血を起こしてそこから点滴を受けたくらいになっていた。

 これは運命のいたずらか、誰も知らないことであったが、教頭の意識が薄れた瞬間、その瞬間がちょうど、あの飛び降り自殺があったその瞬間だったのだ。

 それはさておき、点滴を終えた教頭は、校長先生の勧めや、医者の進言によって、一旦引き上げることにしたのだが、彼女が目を覚ましたのが、その夜だったというのも、何とも皮肉なことだった。

 ただ目を覚ましただけであれば、彼女の目覚めに立ち会えなかったことを、

「残念だった」

 と言えるのだろうが、

「その場にいなくてよかった」

 とその後で言わしめたのは、彼女が目を覚ました時、記憶をほとんど失っていたからだった。

 意識が朦朧としていたわけではないが、その視線は一点を見つめて、何を考えているか分からない状態。そんな状態でも果たして、

「目が覚めてよかった」

 と言えるだろうか。

 間違いなく、手放しで喜べる状況ではない。そんなことは誰が見ても一目瞭然だった。警察の人が、

「彼女の目が覚めた」

 と言って駆けつけたが、本人は何があったのか覚えていないとしか言わない。

 だが、とにかく何かにひどく怯えているようで、警察官に対しては特に異常なほどの怯えを感じていた。

 また、そこが病院であることも彼女にさらなる怯えを感じさせた。白衣を見るだけで頭痛を感じるくらいで、彼女の事情を知らない人は、何が起こったのかとただうろたえるばかりだった。

 その時、彼女の記憶が失われていることを知った皆は余計に、

「何が彼女をそんな恐怖に見舞わせるのだろう?」

 と思った。

 しかし、彼女の過去を知っている教頭先生は、

――この恐怖は今の恐怖ではなく、前の事件を思い出したからなんだろう――

 と分かっていた。

 時に記憶を失っていると聞いた時、余計に過去の忌まわしい思い出が、必要以上に彼女を不安に陥れ、思い出さなくてもいいことだけを思い出させるという負の要素を醸し出していた。

 それはまるで、

「覚えている夢というのは、ほとんどが怖い夢だ」

 という感覚に似ているような気がした。

 覚えている夢は確かに怖い夢が多い。しかも今の彼女には何が怖いのかという感覚がマヒしていた。それは、礼の暴行事件があってからのことで、恐怖におののいた瞬間、気を失ってしまったことからも、

「逃げ出したい」

 という衝動に駆られた時、

「肝心な意識を失ってしまうという思いから、彼女は記憶を失ったのかも知れない」

 と感じたのは、教頭だったのだ。

 教頭先生は、彼女に面と向かって会ってみたが、教頭の前では落ち着いている。しかし意識が朦朧としていて、それはまさに、

「普通に記憶を失った人間そのもも」

 であったのだ。

 絶対的な信頼を寄せる教頭の前でもそうなのだから、普段のあの怯えがどれほど彼女にとってひどいものなのか、外見での判断だけでは済まないものがあるのだった。

 教頭の通報で、担当刑事がやってきた。

 K警察署から、服部刑事がやってきたのだが、服部刑事も実は教頭の教え子であった。被害者の女性から見れば数年の先輩にあたるのだが、服部刑事にはもちろん、被害女性の学生時代を知ることはなかった。

 しかし、教頭が信頼して呼び寄せた教師だということで、まだ話すらできていなかったが、話を聞いただけで、一定の敬意を表していた。そして早く目を覚ますことを彼なりに祈っていて、

「早く話が効けるようになればいいな」

 と思っていた。

 教頭から連絡を受け、取るものも取りあえずに病院に出かけてきたが、

「彼女はほとんど記憶を失っているようだ」

 と教頭から聞かされ、かなり意気消沈しているようだった。

「それは残念です」

 と、服部刑事は答えた。

 もっとも、服部刑事も彼女が意識を取り戻して、記憶があったとしても、ほとんど情報は得られないと思っていた。何しろ、咄嗟のことであり、記憶が曖昧なのは当たり前だと思ったからだ。

 そんな服部刑事は、その日、もう一人女の子を連れていたのだが、その人を見た時、彼女は何かを思い出したような目に輝きがあった。その女の子というのは、有原みゆきだったのだが、彼女はそれを分かっていたのだろうか?

 みゆきは彼女を見るなり、

「凛子さん、松枝凛子さんですよね?」

 と言った。

 服部刑事はビックリして、凛子を見た。凛子の表情にはまったく変化がなかったのを見て、みゆきが落胆しているのは分かったが、ショックを受けているという感じではなかった。すでに情報は入っていたのだろう。

「みゆきちゃんは、松枝さんと面識があったんですね?」

 と言われたみゆきは、

「ええ、私が小学生の時、近くに住んでいたんです。でも、引っ越していったんで、少し寂しかったんですが、こうやって再会できて、正直嬉しいです」

 と言った。

 みゆきは、清水刑事や辰巳刑事と仲良くなったことから、K警察署の他の刑事さんとも懇意になっていた。そんな中で服部刑事とは結構仲が良かった。服部刑事は辰巳刑事の一年先輩にあたり、辰巳刑事が清水刑事の次に仲良くしている刑事であった。

 冷静な判断力を持っていて、どちらかというと清水刑事のようなタイプの刑事だが、清水刑事よりも勧善懲悪に近く、辰巳刑事に違いところもあった。

 要するに二人は、

「お互いの足りない部分を補って余りある」

 というようなそんな関係であった。

 そんなみゆきが今日病院についてきたのは、みゆきが入院しているのを凛子だと知っていたわけではなく、みゆきの友達がちょうどあの時の事故を目撃していて、そのことで何か思い出したから、K警察署を訪れたからだった。最初その友達は、

「警察なんて、私怖いわ。行かなきゃいけない?」

 と言われて、みゆきに相談すると、

「大丈夫よ。私が一緒についていってあげる」

 と言ってくれたので、友達はその言葉に背中を押されて警察に来たのだが。まさかこんなにみゆきが警察に昵懇だったとは知らなかったので、ビックリしたようだ。

 ため口で話すみゆきに頼もしさを感じ、彼女も安心して事情聴取に応じていた。彼女の情報では、ちょうど彼女がいた場所から運転席が確認できたそうなのだが、ひき逃げしたその車に乗っていたのは、どうも一人ではなかったようで、一緒に女性が乗っていたという情報だった。

 もちろん、一瞬だったので、女性ということは分かったが、人相まではもちろん分からない。ただ髪の毛が長かったということだけだったが、警察の方でどれだけの信憑性を持ってくれるか分からなかったが、みゆきにとってみれば、友達が話をしてくれることで、彼女自身のわだかまりが消えたようで、それがよかった気がした。

――せっかく目撃したのに――

 という思いをずっと引きずっていくことになると、警察に対しての確執のようなものが生まれてきて、彼女にとっていいことではないことは分かっていたからだった。

 だが、この証言は、実は重要であった。この時には分からなかったが、いずれ重要になってくるが、まだここでは、

「そういう目撃報告があった」

 というだけのことに言及しておく。

 ここで重要なことは、被害者の松枝凛子とみゆきが以前から知り合いだったということで、みゆきがこの事件に入ってくるきっかけを掴んだということであろう。

 もちろん、みゆきの存在が今後どのようにこの事件に関わってくるのか分からなかったが、服部刑事はみゆきの発想や着目点のよさに敬意を表していただけに、みゆきの友達が目撃者だったというのを聞いて、百人の味方を得たかのように感じたのだった。

「凛子さん、大丈夫なんですか?」

 と服部刑事に訊いてみたが、

「うん、詳しいことは訊いていないんだけど、どうやら、記憶をほとんど失っているらしいんだ。もちろん、命に別状はないんだけど、でも、三日間意識不明だったこともあったので、今のところ、病院に治療を任せるしかないということでしかないとは聞いているんだ」

 という話だった。

「ああ、記憶を失っているなですね。だからさっきはあんなボッとしたような表情をしていたんだ」

 と、みゆきは言った。

「そうだね、せっかく再会できたのに、こんな形でというのは、僕も気の毒に思うよ。でも、記憶が消えたわけではないから、きっと思い出せると思うんだ。特に彼女の過去を知っているみゆきちゃんがそばにいれば、みゆきちゃんとの思い出から記憶がよみがえってくるかも知れないよね」

 と服部刑事は言ってくれた。

――やっぱり服部さんは優しいな――

 とみゆきは感じた。

 K署の刑事課の人は結構知っているけど、概ねよく話す人として、門倉刑事は貫禄があって、いかにも課長タイプで、清水刑事は、辰巳刑事の扱い方が非常にうまく、冷静さでは刑事課一番であろう。服部刑事は、清水刑事に勝るとも劣らないほどの冷静さを持っていて、それでいて優しさでは、きっと刑事課一番だろう。そして辰巳刑事は猪突猛進的なところがあり、飛び出していくと、危なかしくって仕方のないが、彼の持っている勧善懲悪の正義感は、まさに辰巳刑事を象徴している。いろいろな刑事がいるが、みゆきは辰巳刑事が一番好きだった。自分と似たところがあると思っているからで、清水刑事の言うことはどんなことでも聞くという充実さは、自分が姉のなつみに感じているのと同じものを感じた。

 今日は、服部刑事と一緒だが、いつもは辰巳刑事や清水刑事と一緒の時が多い。たまには服部刑事もいいものだ。

 服部刑事には、父親のような感じも受けていた。清水圭や門倉敬意にも頼りがいを感じているが、父親とは少し違う。

 やはり二人は刑事なのだ。一緒にいて世間話をしている時でも、刑事を感じさせられる。きっとそれだけオーラが強いからではあるまいか。

 服部刑事にも十分に刑事としての意識があるのだが、父親を感じてしまうと、刑事であることを忘れがちになってしまう自分を感じていた。服部刑事は独身なので、

「お父さんのようだ」

 とはさすがに言えなかった。

 でも、明らかに他の二人の刑事を見る目とは違っている。

――もっと服部刑事と一緒にいたいな――

 という感情が強い時は、えてして、自分がまるで服部刑事を好きではないかとまわりに見られるのではないかとみゆきは考えていた。

 だが、清水刑事と服部刑事は冷静にみゆきを見ていたので、それが父親を見る目だと分かっていたが、辰巳刑事だけはそうではなかった、

 やはり猪突猛進な雰囲気からも読み取れるように、やはり、

「恋人を見ているような憧れの目だ」

 と感じていたようだ。

 辰巳刑事は嫉妬していた。

 自分がみゆきのことを妹のように思っているとそれまでは感じていたのに、服部刑事を見ている目を感じることで、自分が嫉妬していることに気付いた。

――何をしているんだ。これじゃあ、俺がまるでみゆきちゃんのことを好きみたいじゃないか――

 と自分に問うてみたが、結果はやはりそうだった。

――それならそれで受け入れるしかないか――

 と、小娘だと思っている相手に自分が惹かれていることを否定する気にはならなかった。

 むしと、みゆきのように自分にはない思い付きは発想を兼ね備えた女の子に惹かれるというのも、自分が男であることの証拠だと思い、他の誰に惹かれるよりも、よかったのではないかと思うようになり、それが嬉しかった。

 くちでは、いつも、

「この小娘が」

 であったり、

「小娘のくせに」

 という言葉を使っているが、決して毛嫌いしているわけではない。

 確かに出会った最初はそんなところがあったが、すぐに打ち解けることができた。それは自分の裁量からではなく、みゆきの裁量によるものだと分かったからだろう。

 とにかく、彼女に対しては一目置く辰巳刑事だったが、、それがいつしか惹かれていく自分がいとおしく思えるほどだった。

――警察官のくせに――

 とは思うが、

――俺だって一人の人間なんだ――

 と感じるようになったのは、明らかにみゆきと知り合ってからだったことに間違いはない。

 服部刑事がいうように、みゆきの顔を見た凛子は、少し何かを思い出しているようだった。凛子の記憶喪失は、近い過去を思い出すよりも遠い過去、つまり子供の頃の過去を思い出す方が思い出しやすかったということなのか、それとも大人になってからの忖度や駆け引きなどの複雑化記憶よりも、子供の頃の素直で単純な記憶を思い出す方が楽だったということなのか、よく分かっていなかった。

 だが、凛子の記憶が戻りつつあるということは誰も知る由もない、明らかに凛子氏か分からないことだった。

 そんな凛子のことを真剣に心配し、

「少しでも役に立ちたい」

 という素直な気持ちを、みゆきが持っていたことは当然のことであろう。

 この日、みゆきは家に帰ってから、なつみに凛子と久しぶりに出会ったことを話した。凛子の存在を姉のなつみも忘れるわけもなく、懐いていたのはみゆきの方であったが、

「可愛い妹がお世話になっている」

 という意味で、なつみは凛子に対して一目置いていた。

「そうなんだ。凛子さんは記憶喪失か……」

 と、凛子は頭に記憶の中の凛子を思い浮かべた。

 そして同時に、今こうやって昔の凛子を想像している自分にできることが、今の凛子にできないことを悲しく思った。この感覚はみゆきが最初に凛子を見て、その後、彼女に記憶がないことを聞かされた時に、同じことを感じた。

 みゆきは凛子を生では見ているが、そこにいたのは、自分おことを分からない。みゆきの知っている凛子のことを思えば、まるで抜け殻になってしまったかのように見えて、みゆきも悲しかった。

 以心伝心というべきか、みゆきもなつみも相手が考えていることが分かる時がある。この時はそうだったのだ。

 お互いに何を考えているのかが分かる時というのは、えてして、二人の間に第三者が介在していることが多い。第三者というのは、自分たち二人を除いたすべての人のことをいい、肉親や親しい人であっても、まったく関係のない、文字通りの第三者の場合もあるのである。

 もちろん、凛子の場合はいくらしばらく会っていなかったからといって、親しい人であることは間違いない。ただ今の凛子にはその感覚がなく、あくまでも、まだまだ記憶の奥に封印されているだけの状況でしかないのだろう。

「みゆきは、これからもちょくちょく凛子さんを見舞うつもりなの?」

 となつみが聞くと、

「ええ、そのつもりなの。ダメかしら?」

 と心配そうにみゆきは訊いたが、もちろん姉が反対するなど、これっぽっちも思っていない。

「ダメなわけないじゃん。今こそあの時の感謝を返す時だわね。みゆきを見て思い出してくれるのであれば、おねえちゃんも嬉しい」

 と言ってくれた。

「お姉ちゃんも一緒にお見舞いに行かない?」

 と言われて、

「いいのかしら? 私も久しぶりに凛子さんにお目にかかってみたいわ」

 とむつみがいう。

「もちろんよ。私明日も行ってみるつもりなんだけど、お姉ちゃん、どうする?」

「明日は、午後の講義もないので、行けるわよ。じゃあ、明日あなたの学校が終わってどこかで待ち合わせましょう」

 と言って、みゆきの学校の近くの喫茶店で待ち合わせをすることになった。

 凛子が入院しているF大学附属病院までは、バスで二十分ほどのところにあった。二人は日が暮れる少し前に病院に到着し、西日の当たる病室で、一人表を見ながらベッドの中で身体を起こしている凛子を見かけた。

 相変わらず頭には包帯が巻かれていて痛々しさが見ているだけで胸を刺したが、なるべく二人はそんな気持ちをお首に出すこともなく、

「こんにちは、凛子さん。今日は姉を連れてきたんですが、覚えてらっしゃいますか?」

 と訊いてみた。

 記憶喪失の人間に、

「覚えていますか?」

 と聞くのはおかしな話でもあったが、これはわざとそう言ったのであって、どのような反応を示すのかを確かめたかった。

 きょとんとしている様子だったので、やはり、覚えている様子ではなかった。

 みゆきは、アイコンタクトで姉に対し、

「やっぱり、覚えていないでしょう?」

 という意味で一度頷いてみたが、姉の方も、

「ええ、そうね。この様子は典型的な記憶喪失のようだわ」

 と、姉も同じように妹を見て頷いていた。

 二人の間ではこのような仕草は今までにも何度も見られた。だからと言って、普段からこのような特殊能力が発揮できるわけではなく、気が付けばできるようになっていた。

「時々、私、凛子さんとお会いしたいので、入院中でもちょくちょく寄らせていただきたいわ。それで凛子さんの過去が戻ってくれれば嬉しいし、今の現状を私ができるだけ凛子さんにお伝えすることができればって思います」

 というと、凛子さんは、

「過去と、現状ということですね? 私には今はどちらも備わっていないような気がします。それはきっと現状というのは、過去からの現実の積み重ねが今の現状となるわけでしょうから、過去が欠けているのだから、当然のことですよね」

 と言った。

 凛子はさすがに教師をできるだけのことはあって、理屈的なことには、冴えている人だった。記憶がないだけで、過去が戻ってくれば、きっと素晴らしい人間が形成されることであろうと、みゆきもなつみも感じていた。

「私も凛子さんの過去が一日も早く戻ってこられるように応援します。妹が来れない時など、私が来れる時は来たいと思っていますよ」

 となつみも言った。

「ありがとうございます。私はとにかく過去が分からないことが不安なんです。ただ、取り戻した過去に何があるのか、自分でも分からないだけに、非常に怖いんです。普通なら過去の自分を思い出せる何かを、私の知り合いや友達が持ってきてくれて、見せてくれるものではないかと思うのですが、私のところに来てくれる人はほとんどおらず、みゆきさんとなつみさん以外では、警察の方くらいなんです。本当に私の過去は存在しているのかっていう不安もかなりあるんですよ」

 と言った。

 それを聞いて、なつみもみゆきも驚いた。

「凛子さんのような面倒見がよくて素敵な方に、お友達は同僚、先輩のような方が寄り添っていないのかというのが私も不思議でした、でも、少なくとも私たちがいます。どんなことがあっても、凛子さんを守ります」

 とみゆきは、自分の覚悟を表明した。

 もちろん、なつみも同じ考えである。

 そんな二人は、凛子の、

「過去と現実」

 と取り戻すべく頑張っていこうと考えていたのだった。

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