49/ほら、人類って救いようのない生き物

 一通りの情事を済ませた後、ジークに契約状況を確認してもらった。


「一応、無事に解除されたみたいだな。クソ、妙に緩み切った顔が腹が立つ」


 しかし口の割には邪険にはせず、今までと変わらない態度でいてくれたのが救いだった。彼はどう思っているか分からないが、これからも師弟関係を続けてほしいと期待を抱いていたので、縁を切らずにいてほしい。


「そうだな、今後もこんな事態が起きないとも限らなし、定期的に守護者で集うのも悪くないかもしれないな。その時には鍛錬の成果を見てやるよ」

「良かったのう、アザーク! ジークに嫌われることだけが気がかりだったもんな」


 一度は屑師匠グライムとヤリマン元カノセツナのせいで人間不信に陥ったアザークだったが、今では頼りになる師匠ジークと可愛い彼女キウイに囲まれて、有終の美を飾ることができた。


「えー、アザーク。本当にキウイとヤッたの? 不潔ー……最低」

「そんなゴミを見るような目で見るなよ……。プルーだって好きな奴が出来たら、いつかヤるだろう?」

「な、なな! し、しないわよ! 私は絶対にしないんだから!」


 不老不死とも思える長寿のダークエルフ。その割には貞操に拘っていて、身持ちが堅いのが意外だった。

 逆に愛した人人間が短命だったり脆すぎる故に、恋愛が出来ないのかもしれない。女好きフェミニストであるジークですら貞操概念が強いし。


「———僕達はそこまで拘りはないんだけどね?」

「あぁ、俺達はアザークさえよければ、いつでも相手になってやるからな」


 そう両手に抱きついてきたのはフェンとリルンだった。え、いつの間にそんなことになってた? 二人の好意に全く気付いていなかった。


「キウイ様に嫌われたら、いつでも頼っていいよ? 僕達はプルー様から少しは離れられるから、いつでも会いに行けるし♡」

「ちょっと他を味見したい時でもいいぞ?」


 よくよく聞いたら元々獣人は性欲が旺盛で、よく盛っているらしい。グライムに獣と番わされたフェンだったが、幸い相手の獣が自分好みだったと教えてくれたのが救いだった。


「あの屑人間に犯されるのは死んでも嫌だったがな」


 思ったよりもトラウマにならなくて良かったです。

 ……ということは、もしかして二人の妹分である獣狼も性欲が旺盛なのだろうか? だがコイツの場合は色気よりも食気。何年経っても獣狼のままのような気がする。


「………ん、どうしたのアザーク? 呼んだ?」

「ううん、呼んでない呼んでない」


 ちなみにボウグに関しては、ジークの御用達の洋菓子店の店主に頼むことにしたらしい。少しでも早く心の傷が癒えてほしいと願いばかりだ。


「何だ、神妙な顔だな」

「いや、何かあっという間だったけど……このメンバーといられるのもあと少しなんだと思ったら、少し寂しいなと思って」


 思い返せば色んなことがあった。

 最初に自分を殺した邪竜は、今となってはアザークを生かし続ける心臓だ。

 表裏一体の事実に、翻弄されてばかりな気がする。


 人類の敵である魔王を滅ぼすことができると言われていた聖剣は、実は封じているものだから抜いてはいけないとか———……。



「ねぇ、ジーク……! 大変!」


 スライム達と一緒に洋菓子を買いに出ていたハルが、慌てた様子で戻ってきた。ポーカーフェイスの彼女が息を切らして珍しい。


「どうした、ハル。何があったんだ?」

「……実は、王都で騒ぎが起きてるみたいで……っ、この世を救う為に別世界から来た勇者が現れたとか?」


 ———は?


「そしてその勇者一行が、聖剣を集める為にダンジョン巡りを始めたとか?」


 ———え?


「魔王の手先であるダークエルフを倒す為に、絶賛修行中だって」


 ———おいおい、嘘だろう? 人類、お前らはどこまで道を間違えれば気が済むんだ?


「ジーク達って魔王の手先だったの?」

「んなわけあるか、クソ! あぁー、もう! キウイ、プルー! 作戦練るぞ!」


 一難去って、また一難。

 自分達の戦いは終わることはないようだ……。




     end………?



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