45/絶命寸前の先にあったのは……
「———かはっ! ガハッ……、ハァっ!」
どれくらいの間、意識を失っていただろう?
目を覚ましたアザークを待ち受けていたのは、絶望的な惨劇だった。咽せる砂煙。酷い衝撃を受けてヒビ割れした石壁も、今にも崩れそうに軋みながら僅かなバランスで保たれている状態だった。
キウイとジークは……? 二人は無事なのだろうか? だが顔を動かそうにも、思うように動かない。まだキウイの支配下なのかと思ったが、そうではなかった。
激しく壁に打ち付けられたアザークの身体は瀕死の状況に陥っており、かろうじて意識だけはあるが、動けるようになるには時間がかかる状態だった。
だが自分が生きているっていうことは、主人である二人も無事という証拠だろう。そう自分に言い聞かせて、気持ちを落ち着けようと努めた。
それよりもエンドールは?
この爆撃を引き起こした張本人はどうなったのだろう?
期待を込めて遺体を探したが、視界に入ったのは裏切るような光景。あれほどの衝撃が直撃したにも関わらず、エンドールは地を這って蠢いていた。
「負けない……っ、僕は負けるわけないいかないんだ」
不死身なのか、アイツは?
目を疑いたくなる状況に、アザークも懸命に手足を動かしたが微動だにしない。ダメだ、アイツをこのままにはしておけない。
その時、エンドールの前に姿を見せた者がいた。
血の気が引いた……そこにいたのは聖教会団を深く信仰していたボウグだった。
「エンドール様……? 何故ここに?」
「君は……ホウカの弟の———? 助かった、頼む! 僕を救ってくれ! 君なら出来る!」
やめてくれ……ここでエンドールに復活されたら、もう打つ手がない。アザークは訴えるようにボウグに呼び掛けたが、思うように声が出なかった。
「僕がエンドール様を……? 分かりました」
そう言って、ボウグは辺りをキョロキョロ見渡し「あった」と屈んで手に取った。
その動作を見て、アザークは絶望に襲われ、諦めるように目を瞑った。
もうお終いだ———……。
だが次の瞬間、あたりに響いたのはエンドールの悲痛を帯びた断裂魔の声だった。
「痛い! やめろ、やめるんだ!」
何故か制止を呼び掛ける声。何が起きたんだと目を開けると、信じられない光景が飛び込んできた。
大きな石を抱えたボウグが、エンドールの頭を打ち砕いていたのだ。
「エンドール様はおっしゃいました。父と母が苦しんでいた時に早く楽にしてあげることが救いだと。だから僕も救います。エンドール様を救います」
それはエンドール自身が招いた結果だった。
こんなの救いでも何でもないと言いたかったが、過去の発言を取り消すことは不可能だった。
こうして数分の間、執拗に殴られ続けたエンドールは静かに息を引き取り、絶命した。
長く苦しかった戦いは、意外な者の手によって終わりを迎えることとなった———………。
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