40/各々の決意
エンドールとの戦いに備え、本格的に特訓を始めたジークとアザーク。そして戦力として期待されているフェン、リルン、獣狼も実戦を想定した戦略を練っていた。
「髑髏とスライム達はハルとプルーと共に待機。私は状況を見て援護といったところかのう」
聖教会団の戦力の規模が不明なので実際どうなるかは想像できないが、大まかな作戦をキウイは想定した。本来ならば邪竜のような大規模な戦力が欲しかったが、今回は致し方なかった。今後もこのような事態が起きないとも限らないので、備えておく必要があると悔やんでいた。
「もう、キウイまで私のことを蔑ろにして! 私だって戦えるのに!」
「そうか? なら私と一緒に行くか?」
スライム達と戯れながら頬を膨らませるプルーだったが、実際に戦場に赴くのは遠慮願いたいと考えてる口だけは一人前の我儘っ子だった。
「だがなプルー。何気にお前は大事な役目を任されているんだぞ? あのジークの最愛の想い人、ハルの護衛だからのう。もしハルに何かあったらタダでは済まないだろう」
「———え?」
「きっとギッタンギッタンのグッチャングッチャンだろう!」
「そ、それは嫌だ! どうしようキウイ! 私はまだ死にたくない!」
「アハハ、大丈夫だろう。私が死なない限りは異空間は破られまい。それにお前の結界があれば問題ないだろう」
プルー達を待機させるのは聖剣バルムンクが保管されている城内最下層だ。キウイはその扉の前で最後の
『こんな手に汗を握るハメになるとはな、分からんもんだ』
人間っていうのは中々愚かな生き物だ。己の欲の為に世界を滅ぼそうとするのだから救われないのう……と、キウイは皮肉を込めて嘲笑を浮かべた。そして城内から外で鍛錬に励むアザーク達の様子を眺めていた。
まぁ、それでも悪いことばかりではなかったか。
アザークと出会って、キウイの人生観は大きく変わった。今まで生きてきた悠久ともいえる時間が無意味だったのではと思わされるほど、この数日の経験は濃厚で貴重なものばかりだった。
ここまできたなら、どんな結果になろうと受け止めるしかない。
「………邪竜。私はまだ、この世界に未練を残しても良いか?」
彼女のいない日常は、キウイにとって物足りない、半身をもがれた様な痛みを伴う苦しい日々だった。
唯一残った心臓だけが救いに思えて、必要以上にアザークに依存する様になった。
「当たり前だった邪竜の肯定が懐かしいんだ。けどその言葉を聞くのは……もう少しだけ先の楽しみにするかのう」
そんな各々の決意が固められる日々が過ぎていた中、突然戦いの火蓋が切られた。
いつものように就寝していた時、城に向かって投石と火矢が放たれた。石造だった為、急速に炎は燃え広がらなかったもの、投石の衝撃が常時続くことで平常心を奪われ焦りが生じていた。
「クソっ、アイツら……! ハル、お前はキウイ達と合流しろ! 俺はアザーク達のところへ行く!」
「ジーク……っ、待って!」
剣を手に取り走り出すジークを掴み、強引にキスを交わした。押し当てるように痛みを伴う行為だったが、十分だった。
「———ずっと待ってる。あなたのことだけを」
「……ハル、俺はお前の幸せさえ守れれば、それで十分だ」
絡み合う指をジークの方から解き、踵を返した。溢れる涙を拭うことなく、ハルは消えるジークの背中をずっと見つめていた。
そしてアザーク、獣狼、フェン、リルンも戦闘態勢に入っていた。眼下には確認できるだけでも1万、下手したらその倍の戦力が見てとれた。
「アイツら、
武者震いか、さっきから震えるアザークの背中を叩いて肩を組んだ。この数日間、死に物狂いでよくやった。師匠として喜ばしい結果を手にしてくれたと褒め称えたいほどだ。
「———最後に笑うのは俺達だ……派手に散らしてやろうぜ?」
・・・・・・・・★
お読み頂き、ありがとうございます。
最初は10万文字を目指して頑張ろうと思いましたが、微妙ですね。これから一気に完結まで走り切ります。
また、最終執筆に向けてテンションがおかしくなると思うので、まとめて公開する様にします。ぶっちゃけ今の状態で、すでにヤバい……ちょっと泣きそうになりました。下手したら邪竜の時以上の鬱展開になるかもしれない……。
あー、もっと一人一人のエピソードを丁寧に描けばよかったかなと後悔したり……。この作品は必ず推敲して、一から矛盾なくして書き直したいと思います。その時に10万突破するかな?
それと運命の恋をジークとハルの話で執筆もしたいので……、最終決戦前に書かないとモチベが保てない話なので、少しの間更新をお休み致します。
皆様、お待ち頂けると幸いです。よろしくお願い致します。
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