37/BLだとか抜かす奴は、脊髄ガタガタ言わせt……

「もういい……っ! アザーク、お前の好きにするがいい!」


 一連の行為を済ませ、キウイはベッドの上で全身を毛布に覆い包めて強い口調で言い放ったが、どうしても負け惜しみにしか聞こえなかった。

 流石にアザークも色んな意味で精魂尽きてしまったが、言質を取ることができて安堵の胸を撫で下ろした。


 ———いや、安堵じゃない。これで終わりではなく、これから始まるのだ。


 正直嫌だ……。

 これからのジークとの契約行為を想像しただけで全身がガタガタ震えてくる。こんな天国のような、幸せすぎるアダルトな経験の後なら尚更のことだ。


「………アザーク、お前って奴は臆病かと思えば、いきなりこんなことを」


 顔だけ出したキウイは、拗ねるように唇を尖らせて見せてきた。

 確かに自分でも不思議なくらいでこんな行動を起こすなんて信じられなかった。


「流石に俺も、際どい行為の初体験が男ってのだけは避けたかったので」


 実際どんなことをするかは分からないけど、よろしくないイメージだけが広がる。ずっと純潔を守っていた彼女を師匠に寝取られ、ファーストキスも不意打ちを食らって奪われたアザークだったので、何か一つくらいは自分の意思で行動したかった。


 それに、もしかしたら———今回のエンドール戦の結果次第では、こんなふうに触れられなくなるかもしれない。そう考えたら、いても立ってもいられなくて、気づいたらキウイを抱き締めていた。


「なんだ、私はジークよりはマシってことか?」

「別にそう言うわけじゃないけど……」


 気付けば大きくなっていたキウイの存在。だが異性として見るにはあまりにもふざけ過ぎていたし、可愛いとか守りたいって感情があるかって聞かれても———………。



 いや、嘘です。好きです。

 今だってキウイの周りがキラキラして見えるし、今回のことを経験して更に好きが募っていった。

 緩んでしまう口元を隠しながら顔を背けたけど、その様子を見て確信したキウイは背後から抱きついた。


 一糸纏わぬ彼女の肌を隠していた毛布が、ふわりと落ちる。


「———好きだ、アザーク。私はお前のことが愛しいぞ」


 ず、ズルいだろ、それは……!

 今回こそは主導権を握ったと思っていたのに、結局はキウイに奪われていた。もう負けを認めるしかない。敵う気がしない。


「………俺も好きです。そもそもあなたを守りたいから、俺は」

「ふふっ、それを先に言え。順番が違うだろう?」


 改めてキスを交わしてから、キウイも見送った。ドアの閉まる音を聞きながら、一層気持ちを引き締めた。



 アザークはジークの部屋の前に立ち、ノックをした。しばらくしてから「誰だ?」と低い声が聞こえ、ドアが開いた。


「アザークか? 何の用だ?」


 腕を組んで不機嫌な空気を纏って、明らかに歓迎されていないのが伝わってきた。

 あれだけ覚悟を決めて来たくせに、いざとなると怖気ついて情けない。そんなアザークをジークの鋭い眼光が更に責め立てる。


「用がないなら帰れ。俺も暇じゃねぇんだ」

「いや、俺は……さっきの従者契約の話を聞いて」


 ますますジークの眉間に深く皺が刻まれる。不本意とは言っていたが、あくまで提案したのは彼の方だ。そんな邪険にしないで欲しい。


「お前が俺の従者になるのか……? 本気で言ってるのか?」

「大切な人を守る為だ。その為に自分で出来ることは何でもする」


 アザークの覚悟を知ったジークは「チッ」と大きく舌打ちをして、拒絶するようにドアを閉めた。


 交渉決裂だろうか?


 だがしばらく待っていると、ジークは唯一の従者であるハルと共に外へ出てきた。


「さっき話した通りだ。決して浮気じゃない、それだけは命を賭けて誓うから」

「分かってる、大丈夫。私の為でしょう?」


 な、何の話をしてきたんだ?

 ハルの為? え、いや……話が見えない。


「………アザーク、お前の心意気を買ってやる。大事な人を守りたい気持ちは俺も一緒だ。お前を俺の従者にした上で、一から鍛え直してやる」

「ジーク……!」


 呼び捨てが気に食わなかったジークは、アザークの鼻の先を掠めるように、上段蹴りを喰らわした。


「師匠と呼べ……。喜べ、テメェの糞師匠を上書きしてやるんだ。尻尾を振って敬って讃えろ」


 こうしてアザークは、ジークの従者になる意を決した。


「そーいやお前……つかぬことを聞くが、童貞だよな?」


 清い身体でないと従者にできないって話していたことを思い出し、アザークは考えた。基準によってはアウトかもしれない。


「———一応……は?」

「一応って何だよ、このクソが‼︎」


 絶対にしてるな、コイツ! 一人で美味しい思いをしやがって! これだから野郎は嫌いなんだとジークは一人で憤っていた。

 そんなジークに対して、今度はアザークが質問を投げ掛ける。


「ところで師匠、どうやって従者になるんですか?」


 キウイの話を聞く限り絶望的な行為だったが、聞かないわけにはいかない。案の定、ジークも表情筋が固まったまま黙り込んでいた。


「女性相手なら一晩中愛を語り合うんだが、お前に語る愛はこれっぽっちもない。テメェは人形のように、いや……屍のように黙って横たわっていろ」


 ———やっぱりキウイの言う通りなのか⁉︎


 二人きりになった部屋で、何が行われたのかは、誰にも知る由はなかった……。





………★

お読み頂きありがとうございます。

次回の更新は18時を予定しております。

→すいません、6時40分に更新します💦

思ったよりも早く執筆できました💦


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