27/私は———……
「邪竜、私はお前のことを一番に信用しておる。人間なんかに理解してもらえなくとも、お前さえいればそれでいい」
これが、私が知る中で一番古い記憶だった。
幾度となく裏切られ続けたキウイ様は、その度に抱き付いて、声を殺して泣いていた。
何故、自分達はこんなにも頑張っているのに、分かってもらえないのだと。
「大丈夫です。キウイ様には私達がいます。聖剣を狙う人間なんて、滅ぼしましょう」
それから最下層に来た人間を倒し、滅ぼし、撃退し、仲間を増やして楽しく過ごしていた。
それから聖剣を奪われるという失態を犯してしまい、アザークが仲間となり、普遍的な日常が変わっていったのだ。
私は、キウイ様の笑う顔が好きだった。泣いて頼られるのも嫌いじゃなかった、むしろ嬉しかった。
彼女にとっての一番は私だったのに、気付けば新参者に奪われて……だが、私も嫌いではなかった。
アザーク、私はお前が来てからの日々が好きだった。好きだ———……あれ、おかしい。アザ……キウイ様、じゅうろぅ………あれ、あれれれれれれれれれれっれれれれれれれれ———………
———りゅうッ! アザーク! 邪竜! しっかりしろ! 死ぬなっ、絶対に許さんぞ‼︎」
泣き喚くキウイの姿を見て、邪竜はホッとした。視界の半分が黒くぼやけているけれど、問題ないだろう。
あれ、あいつは……? あの金髪はどこにいった? あぁ、良かった。寸前に吐いた火炎で吹き飛ばせたんだ。あはは、私もでも役に立てたんだ。ねぇ、キウイ様、私……本当はずっと獣狼のように褒められたかったんですよ? 知ってました? 頭を撫で回して、よくやったって———………あれ、なんか頭がおかしい気がする。それにうまく声がだせない…………。
「プルー、お前も手伝え! アザークを止血しろ!」
「無理だよ、キウイ……! 心臓が、胸が全部抉られてる! 契が消えてるから、すぐに滅びちゃうよ‼︎」
「諦めるな! ダメだ、ダメだ! 邪竜も、アザークも……絶対に死なせてはならぬ!」
あぁ、そうか………キウイさまの命があぶないと、とっさに前にでて……かわりにこうげきをうけたんだ。
なんで忘れていたんだろう———……
残った眼球で、もう一人の貢献者を見た。
アザークの胸元に大きな穴が空いている。
このままでは死んでしまうなと、邪竜は悟った。
契が残っている私は死なない。だが、頭をやられた私は、また別な生き物として生き返るのだろう。直感で、それは嫌だと思った。キウイ様と他の者達と過ごした日々は、私だけのものだ。
たとえ私であろうとも、渡したくはない。
それに、アザークは………私の大切な人、キウイ様の想い人だ。きっと彼が死んだら、キウイ様は悲しむだろう。
私はキウイ様の笑った顔が好きだ。
ずっとずっと笑って欲しい。
「………ウイさま」
「邪竜———っ! 気付いたか⁉︎ 待ってろ、今すぐ取り繕ってやるからな!」
頭にかざされた褐色の手を取り、顔を横に振った。実際は伝わっているか、分からないくらいの微動だな動きだったが、キウイ様は悟ってくれた。
わたしの心臓を———アザークに……
胸を強く叩き、指を開いて捧げた。
私は、私じゃなくなってまで生きたくない。そこまでして生きるくらいなら、アザークの心臓となって生きたい。
「邪竜……お前……っ!」
ふしぎだ、これから死ぬのに、えみがこぼれる。あぁ、もうつかれた、ねむたいな………キウイさま、もうわたしがいなくても、ひとりでなかずにすみますよね………
閉じた瞼。こうして何百年と生きてきた命が、終焉を迎えた。
そして、そんな彼女によって救われた男、アザークは、一日遅れで目を覚ました。
生きてる………?
確か俺は、殺されそうになったキウイ様を庇うように飛び出たのに。
確かにあった胸元の喪失感。だが、今の自分には力強く鼓動を打つ心臓がある。
「目を覚ましたか、アザーク」
「———キウイさん、良かった。無事だったんだ」
あれから何があったのか、全く分からないんだ。色々と教えてもらいたいんだ———……そう尋ねようとしたけれど、アザークよりも先に彼女の方が行動してきた。
胸元に縋るように抱き付いて、心臓の辺りに耳を押し当てた。ちゃんと脈打っている。しっかりと生きている。
「……キウイさん?」
「———アザーク。少しの間でいい……泣いてもいいか?」
邪竜に縋って泣いた時みたいにはいかないが、安心しろ。私はちゃんと泣けるぞ……?
声を押し殺して泣く彼女を慰めるように、後頭部を撫でながら、二人して涙を流していた。
********
邪竜、遺去……
やっと書けた内容、とてもじゃないけど一気に書き上げないとズルズル書き伸ばしそうだったので、5話一気執筆を致しました。
誤字脱字、おかしな文法もあると思いますが、後日訂正いたいますのでご了承下さい……。
新たな敵、エンドールと聖教会団が立ち塞がる中、彼らの旅は続きます。引き続きよろしくお願い致します。
また、★やレビューを頂けると執筆の糧になりますので、どうぞよろしくお願い致します。
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