11/宴の後

 皆で楽しく飲み食いしたキウイ達は、散乱尽くした部屋で無防備に雑魚寝をしていた。


 あまりの雑さに、儚く尊く遠い存在だと思っていたオッパイもおっ広げで、アザークは虚しさを覚えていた。


「………ふっ、姉妹のいる男って、こんな気分かな?」


 案外、憧れていたものも、現実をしれば大したことないんだな。俺達男は、夢見すぎていたのだと思い知った。


「アザーク、眠れないのか?」


 獣狼の服を直そうと手を伸ばした矢先だった。一見不審とも取れるポーズに、全身の血の気が引いた。———オワタ。


「全く、獣狼の寝相の悪さよ……。今度注意せんといかんな。はぁー……ところで、さっきは軽く流しておったが、大丈夫だったか?」


 声をかけてきたのはキウイだった。彼女は大きく背伸びをすると、勢いよくベッドに座り込んだ。彼女も彼女で薄着なので、目のやり場には困るのだが……。


「そうだ、アザーク。お前には昼間も行動して欲しいから、これを装備して欲しいんだが、良いか?」


 そう渡されたのは、全身を覆う鎖帷子くさりかたびらのような鎧。思ったよりも軽量だが……密着している分、熱そうだ。


「多少は許してくれ。だが、これで日中歩けるように呪符を混ぜているから安心だぞ?」

「呪符? おい、また呪いか?」

「既に呪われているのに、何を恐れる。なぁに、ちょっと体が重く感じるくらいだ。大したことはない。せっかく私が作ってやったんだから、有り難く使うがいい」


 コイツ、他人事だと思って軽口叩きやがって……。


「これ、上半身だけだが、顔のところは大丈夫なのか?」

「それを纏えば全身に防御層シールドが張られるようになっている。多少の異常ステータスや攻撃も弾くぞ?」


 そんな大層なものを作ってしまうなんて、実はスゴい奴なのでは?

 本音を言えば、キウイ一人に負担を掛けて申し訳なかったので、共に行動してサポートできることが嬉しかった。


「調べてみたらサンドルーム山脈には強いモンスターが出現するそうだから、私とアザーク、そして獣狼で臨むことにしよう」

「え、獣狼? アイツ、大丈夫なのか?」

「無論じゃ。あぁ見えてレーヴァテイン守護のフェンとリルンの妹分だ。血筋は保証する」


 ———血筋は、な。そもそもレーヴァテインって何だっけ……。ただ引き合いに出すってことは、それなりに有名な実力者なのだろう。


「実質、私の従者は邪竜くらいしか使い物にならん。獣狼も才能はあるんだが、如何いかんせん経験が不足しておる。アザークの実力も見てみたいし、二人まとめて見てやるぞ?」


 最悪、二人とも使い物にならなくても、キウイ己自身がいれば問題ないってことか……! 悪いがその心配は裏切らせて貰おう。


「とりあえず、明日に備えて眠るとしよう。アザーク、あまり女の裸ばかり見るでないぞ?」

「な、はァ……⁉︎」


「どうしても気になるというなら、私のを見せてやっても良いんだぞ? ほらほら」

「くっ、別に胸なんか興味ねぇし!」


 嘘である、本当は興味津々だ。

 だが、この挑発に乗るのは嫌だ。


「そうか? それなら仕方ない。アザークも早く寝て明日に備えるんだぞ」


 ニヤニヤと笑いながらベッドに潜り込んだキウイに、言い訳できないまま眠られてしまった。


 くそっ、あれは不可抗力! 目の前にオッパイがあったら見てしまうだろ、普通! キウイが絡むと、いつも調子を崩されてしまう。いつか自分が主導権を握って、ギャフンと言わせてやる!


「まずは明日、使えるところを見せてやらねぇとな」


 部屋の隅で毛布を被り、アザークも眠りについた。






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