07/キウイというダークエルフ

 異空間に閉じ込められたゾンビ、11匹。スライム達がポヨポヨ跳ねている中、アザークは邪竜と獣狼に詳細を教えてもらっていた。


「キウイ様は数百年生きているダークエルフのお一人です。私が一番長く仕えていて、早三百年が過ぎました」


 思っていた以上の長生きに「おぉ……」と相打ちしかできなかった。キウイはともかく、邪竜も結構なお年だったのか。見た目は麗しい美人なのに。


「私は16歳! ねぇ、アザークは何歳なの?」

「俺は19歳。へぇ、獣狼の方が若かったんだ」

「じゅ、19なの⁉︎ くっ、私の方が先輩だけど、アザークの方が年上……年功序列、私はどうしたらいいの⁉︎」


 少しおバカだけど上下関係に厳しい獣狼は、必死に頭を悩ませていた。そんな気にする必要ないのに、律儀な奴だ。偉いから頭をナデナデしてあげたら、獣狼は「くぅーん」とご満悦にポーズをとった。どうやら感情が昂ると、野生の部分が大きくなるらしい。


「なぁ、邪竜。俺達、人間の間ではダークエルフは罪深い種族だと伝えられてきたんだが、本当に悪い奴なのかな? いろんな話を聞くと、どうも信じられなくて」

「それはダンジョンで返り討ちにあった人間達が、僻みで広げた噂じゃないか? 少なくても私達はそんな噂を耳にしたことがない」


 そう考えると、人間がしていることって酷いことばかりじゃないか。

 魔王が復活しないように守っているというのに、勝手に悪役にして、邪魔をして。どう考えても業が深いのは人間側の方だ。


「キウイ様は少々自分中心に物事を考える節があるけど、使命に忠実な方なんだ。ゆっくりでいいから、ちゃんと理解して上げてほしい」


 邪竜……心底キウイのことを慕っているのが分かる。羨ましい関係だ。自分も少し前までは師匠のことを尊敬していたのに、呆気なく裏切られてしまった。師匠どころか、人間全般が信じられない。


「でも盗人とは縁が切れたから、良かったじゃないか。これからは私達と共にエクスカリバーを守るんだ」

「そうそう、皆で協力するでありますのだ!」


 微笑む邪竜につられて、アザークも笑ってしまった。一緒にいるのはモンスターばかりなのに癒される。和んだ空気で和気藹々わきあいあいと会話を続けていると、突如白い空間に亀裂が入った。何事かと警戒して見ていると、そこからドンと握り拳が現れた。


「コラァ———ッ! 主人である私が一人でコツコツコツコツ歩いているのに、抜け駆けしよって‼︎」


 その声はキウイ⁉︎


「私もこっちで話したい! 皆と一緒に仲良く、イチャイチャしたい! スライム達にポニョポニョする! 獣狼もモフモフする!」

「き、キウイ様! 申し訳ございません! 決してそんなイチャイチャなど———!」

「邪竜ー! 引っ張れ、私を引っ張ってくれ!」


 な、何だ、この茶番は!

 早くエクスカリバーを奪還しないといけないというのに、ワガママが過ぎるだろ!


「早く街に向かわなくてもいいのかよ、キウイさん!」

「行かないとダメだ! けど私を差し置いて楽しくしてるのもダメだ! 私も仲間に入れろ!」

「キウイ様! 落ち着いて下さい! 致しません、もう楽しそうになど致しませんのでご安心ください! もし他の者が楽しそうにした時には、私の炎で焼き尽くして差し上げます!」


 スレンダー美人だった邪竜が、メキメキと肥大し、よく知る巨大な竜の形になった。もうカオス! 何、この状況!


「キウイさん、夜になったら皆で楽しく談笑パーティーするから、今は退いてくれ! 頼む、俺はこんなところで死にたくない!」

「それなら街で『でざーとけーき・ぱふぇ』というものを食べたいぞ! アザーク、買ってくれるか?」

「買います、買います! だから邪竜さんを元に戻して下さい!」


 ゾンビになる前の記憶がどんどん甦る。あの鋭い牙でボリボリ砕かれた骨の感触、手足がなくなる絶望感……同じ空間にいるだけで頭がおかしくなりそうだ。


「邪竜、元に戻れ! 夜までにはグラム街に着かねばならない理由ができた。今日は皆、夜更かしパーティーだから、今のうちに寝とくんだぞ!」


 主人であるキウイの言葉に、皆は「はーい」と返事をして、早速寝床を用意始めた。行動、早っ!


 ———女って理解できない……っ! それとも彼女達が特別なのか?

 単純にハーレムだと思っていたが、案外苦戦するかもしれないとアザークは苦笑いしかできなかった。



———……★

なかなか次の街に着きません(笑)

皆様、たくさんの応援、フォロー、そしてレビューに★をありがとうございます!

おかげで順調なスタートを切ることができました!


まだ旅立ちの時で、物語の5%くらいしか進んでいませんが、少しでもたくさん更新できるように頑張ります。

読みやすさを重点に頑張りますので、どうぞ引き続き応援をよろしくお願いいたします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る