04/そういや邪竜はどこへ?

 勝手に生き返させられたり、知らなかったネトラレを見せられたり、色々と言いたいことはあったが———そう言えば、邪竜はどこへ行った?


 あまりの衝撃の連続に忘れていたが、ここはS級ダンジョンの最下層。キウイは一人でここに来たのだろうか? 


 他に仲間はいないのか見渡してみたが、どこにも見当たらなかった。


「どうした? そういえばお前の名前を聞いてなかったけど、名前は何て言うんだ?」

「俺はアザーク。アザーク・コーラン。肩書きジョブは戦士」

「アザークか、いい名前だな」


 無邪気に歯を見せて笑う仕草は、やっぱり可愛い。一見上品な高飛車のような容姿をしているのに、随分と砕けた性格なのがギャップというか、勿体無いと言うか……。黙っていればモテそうなのに、残念な印象しか残っていないのも、ある意味すごい。


 彼女……いや、元彼女のセツナは正反対だったな。

 見た目は大人しい清楚系箱入り娘だったのに、蓋を開けてみればエッチ大好き淫乱娘だった。

 見た目で判断するのは良くないという教訓か?


「そういえば聞きたいことがあるんだけど?」

「何だ? 今後の予定か? まずはこのフザけた二人を成敗に行こうか?」


 それも大事だけど、もっと優先的なことがある。


「このエリアにいた邪竜は、どうなったか知ってるか?」

「邪竜? あぁ、此奴か? それは私の下僕の一つだが?」


 下僕……? しかも一つってことは、他にもあんなのを従えているのか⁉︎


「私は魂の定着を成功させたゾンビなら、いつでも召喚することが出来るぞ?」


 キウイは宙に向かって魔法陣を描き始めた。ロッドの先から蛍光の文字が浮かび上がり、異空間へとゲートを繋げた。


「ほら、邪竜。新しい下僕だ! 仲良くするんだぞ!」


 巨大な身体におびただしい魔力とオーラに当てられ、アザークは吐き気を覚えた。あの時の恐怖が鮮明に蘇る。肌に食い込むキバの感触、そして千切られた手足に、潰れた内臓———!


「いい、いい! 召喚しなくてもいいから、さっさと消してくれ!」

「そうか? 邪竜、申し訳ないが戻ってくれ」


 身体半分がゲートから出た状態でカムバックを命じられ、どうすればいいのか立ち往生していた。戻れるのか? その巨体でターンできるのか?


「む、無理なら一旦出してくれてもいいんだけど……」

「そうか? まぁ、何とかなるだろう? な、邪竜!」


 ブンブン首を横に振っているが、キウイは全く気付ずにスルーした。あまりにも可哀想な状況に、カタキだったはずの邪竜に同情しそうになった。こんな無茶振りを振ってくる奴がご主人だと、邪竜も苦労するだろうな……。


『———って、俺もこれからキウイがご主人様になるのか⁉︎』


 恐ろしい現実に、汗が滝のように溢れて流れた。邪竜に同情している場合じゃない! 明日は我が身か!


「邪竜を含め、今は十体のゾンビを備えている。だが人間を黄泉がえりさせたのは初めてだ。うまくいって良かったよ」

「……そうなんだ。ちなみに失敗していたらどうなってた?」


 あまり聞きたくなかったが、念の為に———……。


「憑依に失敗した魂は、そのまま消滅してしまうと聞いたぞ? まぁ、元々死んでるんだから、その先がどうなろうと関係ないだろうけどな!」


 やっぱコイツ、クソエルフだな!

 それに邪竜を従えているってことは、キウイに殺されたってことじゃねーか! 憎むは邪竜ではなく、コイツだ!


「違う! 悪いのは勝手に入ってきたお前らだ! 私が何年も守ってきたエクスカリバーを奪おうと、のうのうと土足で入りよって……!」

「仕方ないだろう? それが俺達の仕事なんだから! くそォ、もう何が何だか意味がわからねぇ!」


 結局、俺は命を奪った奴に助けられ、離れてしまったら滅びてしまう契約を結ばれ……一方では師匠を慕っていた人に恋人を寝取られた———いや、ずっと前から寝取られていたのだ。


 やはり、何も知らないまま死んでしまいたかった……。


「いや、それは許さないぞ? アザークには私の手伝いをしてもらわないといけないからな」

「手伝い?」


 そういえば復讐しようとか、色々ほざいていたが、キウイには何のメリットがあるんだ? まさか本当に俺の為とか言わないよな?


「お前の師匠だったかな? アイツ、私が守っていたエクスカリバーを盗んでいったんだ。抜かりない奴だな……まったく、人の風上にも置いておけない」

「え、グライム師匠、ちゃんとミッションクリアしてたのか?」

「そうだ。アザークが邪竜と戯れあっている最中に、ちゃっかりとな。流石人の女を颯爽と寝取る強者だ。抜かりがないったら、ありゃしない」


 嘘だろ、アイツ……! 人のことを囮にしておきながら、いいとこ取りにも程がある!


 許せねェ! この世のあらゆる拷問をして、生きていることが嫌だと言わせるくらい痛めつけてやりたい!


「私はエクスカリバーを取り戻したい。アザークは復讐したい。これで目的は一致しただろう? よし、これから奴らを殴りに行こう!」


 すっかり興奮状態に陥ったアザークは、軽口を叩くキウイに乗せられて意気投合したが、まさかこんな事態になるとは———この時のアザークは予想すらしていなかった。



 ———……★

 そして旅立ちへ……!

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