貞操観念逆転編:しつこいナンパに絡まれる
貞操観念逆転の世界で襲われて大体1時間後。
兵団に街まで送ってもらい、とりあえずぶらぶらと歩き回ってみることにした。
団長と呼ばれていた人に『もう遅い時間なのであまり1人で出歩くのは好ましくない。』とは言われたものの、じっとしてるのは性に合わないしな。
後…最近俺は情報収集をまともにできてないんだよな。
そろそろ上から減給とかされそうで少し怖い。
さて、聞き込みをしたいんだが…。
「周りからの視線が痛い。」
なんか凄い見られてる。
確かにすっかり夜になり、外にいるのは飲みに行ってる奴らばかり。
本来飲みの場は情報収集にもってこいだが今の俺の立ち位置だと少し怖い。
なんたってか弱い男だからな。
「ねぇねぇそこのお兄さん。暇だったりしない?一緒に飲もうよ。」
うわ来た。
急に酒臭い女性に肩を組まれる。
「ねぇねぇどうよ?あたしが奢るからさ?」
さて、どうしようか。
案外こんな感じのチャラついた奴は常日頃から飲み歩いてて様々な話を聞けたりもするんだよな。
ただ今回の場合俺はナンパをされているわけで、ただただ口説き落とされるだけで有益な情報は得られないかも?
「ねぇねぇ無視しないでよ。」
組まれた肩を強く抱き寄せてくる。
普通に痛いしなんか怖い。
駄目だなコレは。
俺の身の安全の保証が無さすぎる。
「すみません、このあと用事あるんで。」
「こんな時間にある用事って何さ?そう言って離れようとしてるだけじゃない?」
それがわかるならさっさと諦めてくれ。
「人を待たせてるんで…。」
「そいつと居るより楽しくさせるからさぁ。」
そう言う問題じゃない。
俺らの世界のナンパ男に絡まれる女性たちの気持ちがよくわかるな。
こんなにしつこい奴は本当に鬱陶しい。
「君、彼から離れてくれないか?」
後ろから声がする。
この声は…さっき俺を助けてくれた団長さんだ。
「あぁ?って兵団の団長さんか。なんだよ、俺とコイツが話ししてるとこに割り込んでくんなよ。」
「どうやらまともに会話もできていないようだったが?」
「あぁ?なんだテメェ!」
おいおいどんどんことが大きくなっている。
辞めて!俺のために争わないで!
周りからめっちゃ見られてる。
普通に恥ずかしいから辞めてくれよ…。
「テメェら兵団がアイツを守りきれなかったからこんなことになってんだろうが!」
「貴様ァ!」
あ、殴り合い始めた。
…今のうちに逃げるか?
でも一応俺が原因だしなぁ。
それに…少し気になる事を言っているな。『アイツを守りきれなかった』とはいったいなんのことなのだろう。
とりあえず喧嘩が終わるのを待つか。
「佐久間さん、いったいどこへ行ったんですか…。」
事務所周辺を探してみたが姿は無い。
すでに人と接触しているかもしれない。
「佐久間さんなら人と接触した時点でこの世界の違和感に気付いてくれているとは思うのですが…。」
「上原さん!」
「早瀬さん!佐久間さんはいましたか?」
「まだ見つかってません!でも有益な条件が!」
早瀬さん曰く、この辺りで野盗に襲われた男性がいたらしい。
「さっき兵団が介入して男性は無事。今は街の方へ送られたとのことです!」
「それが佐久間さんと言うことですか?」
「はい!服装が特殊とのことでした!」
確かに私たちの世界以外でスーツ姿はだいぶ特殊だ。
「それではとりあえず街へ向かいましょう。」
「はい!」
早速野盗に襲われているとは…。
「佐久間さんは相変わらずトラブルメーカーですね…。」
「今回の佐久間さんは完璧に被害者ですけどね!」
兵団の団長VS酔っ払いは…まぁそりゃ団長が勝ちましたよ。
そこまでは予想通りだったけど…。
「それではあの店に入りましょうか。あの店なら治安の悪い輩はいないはずです。」
何故か団長さんと酒を飲むことになっていました。
なんか話の流れでこんなことになってしまった。
(まぁ丁度いいか。酔っ払いよりは話ができそうだし、気になる話もある。)
2人で他愛もない話をしながら酒を飲む。
いい具合に仲が良くなってから例の話を聞いてみた。
「そういえば…さっきの酔っ払いが言ってた『アイツ』ってなんなんだ?」
団長の顔が曇る。
あーこれは地雷だったか?
「嫌なら言わなくても…。」
「いや…いいだろう。話してやる。」
団長はグラスに入った酒を飲み干し、話を始めた。
(なるほどなぁ…。)
大体わかった。
この世界の主人公について。
そして多分。
(俺の予想が正しければ主人公本人が事務所に出向くことはなさそうだな。)
そうなると俺らが向かう必要がある。
そのためにもさっさと事務所に戻って準備をしたいのだが…。
「どこにいくんだ…お前も私を置いてどこかへ行くのか…。」
この酔っ払い団長をどうするべきか。
「すみませんね。俺そろそろ店出ないと…。」
「嫌だぁ…置いていかないでぇ…。」
こらこら引っ付くんじゃありません。
縋り付く力が強すぎて普通に腕が痛い。
「サクマ…今夜は私と一緒に居よう?優しくするから…。」
「いやーちょっと困りますねー。」
どうしようかしらこの状況。
逃げようにも腕をがっしりとホールドされて動けないし、というかズルズルと宿舎まで引きずられてるからこのままだと本当に一夜を共にすることとなる。
(どうするべきか…。)
「佐久間さん!」
こ、この元気さが溢れ出る、常に!マークがついている声は!?
振り返ると早瀬さんと、少し後ろから上原さんが走ってきた。
「2人とも!やっと来てくれた!」
「佐久間さんこそ何で女の人といい感じになってるんですか!?」
いやいやよくみてくれ。
酔っ払いに引っ付かれてるだけでいい感じにはなってない。
「とりあえず帰りましょう!話はそれからです!」
「……なんだ…お前らも私から…奪うのか。」
団長がフラフラとしながらも俺を抱き寄せてくる。
「やっぱりいい感じになってるじゃないですか!?」
いやなってないよ?
「駄目だ…彼だけは絶対に渡さない…これ以上盗られてなるものか!」
おいおい、ついに剣を抜いたよ。
流石にそれはまずいだろ。
「佐久間さん!どうしますか!」
「…穏便に済ませてくれ。」
「了解です!」
早瀬さんが突っ込んでくる。
団長が俺を離して交戦、しようとした瞬間。
早瀬さんが地面に何かを投げつける。
瞬間、溢れ出る煙幕、いわゆる煙玉という奴だ。
「流石早瀬さん、これだから忍者は侮れない。」
「お褒めに預かり光栄です!」
「うお!」
後ろからひょっこり早瀬さんがでてくる。
「上原さんも逃亡済みですので、このまま佐久間さんも持っていっちゃいますね!」
「おう、頼んだわ。」
早瀬さんはそのまま俺を抱き抱える。
「早瀬さん?お姫様抱っこは流石に恥ずかしいかもしれない。」
「我儘言わないでください!行きますよ!」
…なんというか、今日一日で男の尊厳的なもの全部無くした気がするな。
「佐久間さん!おかえりなさい!」
事務所に戻るとルシルさんが泣きながら抱きついてきた。
「ただいま。いやー危なかった危なかった。」
「本当ですよ!もう大変なことになってるんじゃないかって心配で心配で!」
今回は俺が無茶したわけではないから怒っていないようだ。
前回はね….勝手に魔王戦始めたからね。
「野盗に遅晴れたと聞いた時は心臓が止まるかと思いました。」
あ、そこまで知ってるんだ。
「流石にこの世界で大人数の野盗から逃げるのは無理だったわ。」
「無事でよかったです!」
「とはいえ佐久間さんはこの世界でもう表に出ることはできなそうですね。主人公は見つかっていないのに….どうしましょうか。」
「あ、それなんだけどさ。多分主人公の所在は分かったよ。さっきの団長さんから話を聞き出せた。」
「一体どこの誰なのですか?」
「どこかはわからなかったけど状況だけ…恐らく主人公は誰かに誘拐されたらしい。」
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