魔王引退編:洞窟に潜む魔物
早瀬さんに言われた洞窟内の穴が気になったので、マオウと共に様子を見にきた。
「こんな空間があったのか…。」
マオウは洞窟内を隅々まで見ている。
穴に近づいて耳を澄ませる。
早瀬さんは声が聞こえたとか言ってたけれど…。
「特にそれらしいたものは聞こえないな…。」
「お!それが例の穴か?」
マオウが洞窟最深部まで追いついてきた。
「あぁ、ここから声が聞こえたらしいんだが…。」
「ほうほう。」
マオウが穴を覗き込む。
しばらくすると穴から離れ俺の手を引っ張った。
「サクマ、少し距離を取れ。」
「へ?なんで?」
「間違いない、相当ヤバい魔物が住み着いている。」
…マジ?
「この距離でも分かる。尋常じゃない魔力量がこの奥底から感じる。多分魔王とかとはレベルが違う、伝説級の魔物だ。」
「……なんでそんなのがこんなところに?」
「さぁな。だが逆にこの島に魔物も人もいないのはコイツのせいって考えれば納得がいく。」
「どうするよ?ほっといてもいいもんなのか?」
「…いや、これは放置できないな。俺たちの存在に感づいて少しずつ穴から出てこようと這いずっているのが分かる。」
「…今からでも別なところにしとくか。」
「はは!それは絶対にないな!せっかくアイツらと作った城が無駄になる!」
豪快に笑うマオウ。
…随分と思い入れがある城が出来上がっているんだな。
「そうなったら…心底申し訳ないがコイツに出ていってもらう他ないな。」
不敵に笑い拳を握る。
あれ、もしかして今からなんかする感じか?
「ちょちょちょ!ちょっと待て!一旦エルヴィアさんに報告したり、早瀬さんが調べた結果とかを待つとかしようや!それに無計画にやるとそれこそ城とかゴブリンに影響があるかもだろ?」
「おっとそうだった。よく止めてくれたなサクマ。助かった。」
やっぱり中々魔王ムーブは抜けないのかな?
とりあえず戻って報告と早瀬さん待ち…ルシルさんにも来てもらうか。
「佐久間さん!一体何事ですか!?」
エルヴィアさんに頼んでルシルさんに無人島まで来てもらった。
「ちょっと変な洞窟があって…。ちょっとついてきてくれない?」
ルシルさんに例の穴を見せる。
「魔王曰く魔力を感じるらしいんだけどとまうかな?」
「そうですね…確かに感じます。というか…。」
「というか?」
「今現在もの凄いスピードで登ってきてますね。」
「はぁ!?」
くそ!早瀬さんは間に合わなかったか!
「とりあえず結界を張っておきます。」
「あぁ、ありがと…うわぁ!」
ルシルさんが結界を張った瞬間、その結界に何かがぶつかった。
その影響で洞窟が激しく揺れる。
「びっくりした!ギリギリセーフですね!」
そんなこといいつつもどこか余裕そうなルシルさん。
なんかこの人魔物関連相手にしてる時本当に心強いな。
「この結界どれぐらい持つかな?」
「んー…結界自体は余裕で持ちそうなんですけれど…。」
再び何かが結界にぶつかり、激しく揺れる。
「…この洞窟があんまり持たないと思います。よくて…1時間くらいですかね?」
…たった1時間で伝説級の魔物が解き放たれる。
「とりあえず戻ろう。エルヴィアさんに頼んで早瀬さんを一旦連れてきてもらって、少しでも情報を貰うしかない。」
マオウの城建設現場に急ぐとマオウとエルヴィアさんがゴブリンを一時退散させていた。
「サクマ!穴の中の魔物は?」
「今はルシルさんの結界にガンガンぶつかってる。あと1時間くらいで洞窟が崩れるかもしれん。」
再び大地が揺れる。
洞窟からしばらく離れたが振動はここまで届いている。
「しょうがない。サクマ!出てきたら俺たちでなんとかするぞ!」
「おいおい、なんとかできるのかよこんな化け物。」
「何を言ってる?俺は元魔王でお前は魔王を倒した男だぞ?この世界でもトップクラスの戦闘力だ。」
…確かに、俺も出るしかないか。
「それと…ほれ。」
マオウから何か渡された。
「ゴッダスからお前に渡すようにと言われた例のブツだ。」
おおおおお!そういえばもう一日経ってたわ!
「やった!新武器だ!」
見た目は手甲のようで五つの石が埋め込まれている。
手を通すとサイズはピッタリ、重すぎず軽すぎない見事な出来だ。
「流石!いい出来だね!」
「感謝はこらが終わった後にゴッダス本人にいってやってくれ。」
「はは!そりゃそうだな!」
テンション上がってきた!どんなバケモンでもかかってこいや!
大体30分ほど経ったかな。
現在マオウの城からできる限り離れようと反対方向へ移動し、様子を見ているのだが…。
さっきから大地がずっと揺れている。
「サクマ…くるぞ。」
「え?」
その瞬間今まででトップクラスの衝撃が大地を揺るがす。
「うお!」
まともに立っていられない。
「上を見ろ!あれが洞窟の主だ!」
マオウが洞窟があった場所から遥か空まで飛び上がった魔物を指差す。
「あれは…。」
厳つい身体に太陽の光を反射する鱗、鋭く長い爪と牙。
なるほど…伝説級とまで言われるわけだ。
「…ドラゴンか。」
よく創作物で見るようなドラゴンが天から俺らを見下ろしていた。
「なるほど、アイツだったか。」
「お?知ってるの?」
「あぁ、何千年前かは覚えていないがいつだかに俺の城に襲撃をかけてきたマヌケだ。名前は確か…ファフニールだったか。」
あーなんか聞き覚えがある名前。
「俺にボコボコにされた後行方をくらませていたが…まさかこんなところにいたとはな。」
『久しいな魔王よ』
うお!なんか急に声が!
「伝説級だからな。テレパシーぐらいできるだろ。」
そんな当たり前だろって感じで言われても。
「久しぶりだなファフニール。俺から逃げてここで隠居生活でもしてたのか?」
『俺は負けていない!ここで力を蓄えていたのだ!復讐を果たすこの時のためにな!』
「復讐するってことは普通に負けてるのでは?」
「流石サクマ!ドラゴンにも堂々としてるな!」
ヤッベ!口に出てた!
『貴様ァ!人間風情が我に意見するな!』
ひぇー激おこだ!
『貴様はそもそもお呼びでないわ!喰らえ人間風情が!』
ファフニールの口から紫色の炎が吐き出された。
「毒の炎だ。喰らったらやけどでは済まないぞ。それに避けたところで地面に残った炎から発せられるガスが有毒だ。どうする?」
「は!?どうするって…。」
こんな時は…これか?
ファフニールの炎を手で受け止める。
そして…レーヴァテインの宝石の力で吸収する!
「…これなら毒ガスも発生しないよな?」
「フッ…流石だな。」
フッ…じゃねえよ。
見てないで助けてくれよ。
『貴様…人間の分際で!!』
「あまり人間を甘く見ないことだな。少なくともコイツは俺を負かした男だぞ。」
『何!?』
うわ!めっちゃこっちのこと見てる!
マオウ変なこと言うなよ…興味持たれちゃったじゃん…。
『面白い…なら貴様ら2人とも我が喰らい尽くして我こそが最強と証明して見せよう!』
「上等だ!かかってこいファフニール!貴様程度我ら2人の手にかかれば楽勝だ!」
(楽勝…なのか?)
まぁマオウが一回倒してる相手だし…なんとかなるな!
『フフフ!ちなみに俺はこの島の魔物や人間全てを喰らい付くした。あの時とは最早比べ物にならない力を手に入れたんだ!あの時とは全然違うからな!』
マジかよ。
「はっ!関係ないな!俺たち2人の前ではどんな力も無力だ!」
そんなことはない。
頼むから俺を巻き込んだ挑発をしないでくれ…。
「さぁ行くぞサクマ!あのトカゲを地面に叩き落としてやろう。」
「…ちなみに俺空とか飛べないけどどうする?」
「何?飛べないのか?」
そりゃただの人間なので。
「よし分かった。俺が地面に叩きつけるからそのタイミングで襲い掛かれ!」
そう言い残しマオウは空高く飛び上がった。
結果的に空中戦はタイマンになったわけだがマオウは大丈夫だろうか…。
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