魔王引退編:魔王への信頼

3日目、マオウとエルヴィアさん、俺と早瀬さんは件の島に来ていた。

「自然豊かで非常に良いな!」

「そうですね。人や魔物の気配も感じられないため安心して過ごすことができそうです。」

早瀬さんには一度島の中を探索に行ってもらうことにした。

「でも流石に何もなさすぎな気もするな。寝泊まりはどうするつもりなんだ?」

「その辺りは何とかする手立てがある。安心しろ。」

「ただいま戻りました!」

「おつかれ早瀬さん。島の中はどんな感じだった。」

「野生動物以外の生物はいなそうです!ただ人が住んでいた痕跡がありました!」

人が住んでいた痕跡か…。

「一応確認しておこうか。場所案内よろしく。」

一度マオウたちと離れて早瀬さんと島を見て歩くこととなった。




「こちらになります!」

早瀬さんに連れられてついだ場所はかなりボロボロの小屋だった。

周辺を軽く回って見たが長らく使われた痕跡はない。

また、内部の家具食器を見るに一人暮らしだと思う。

「多分かなり昔ここに住んでいた奴がいたんだろうな。」

「もういないのでしょうか!」

「多分ね。人が住んでるにしてはあまりにも風化しているし、この島で亡くなったのか…もしくはシンプルにこの島での生活が不便で出て行った可能性もあるな。」

早瀬さん曰く他に人が住んでいたような場所はないらしい。

島の中で孤独に暮らすことに耐えられなかったのかも知れない。

「とりあえず他に気になった場所も回ってみようか。」

「了解です!」

早瀬さんに連れられて向かった場所は…。

「洞窟です!」

「そうだね、洞窟だ。」

随分と綺麗に彫られた洞窟だ。

間違いなく自然発生したものではない。

ここに住んでいた奴が掘ったのか…この規模の大きさの穴を1人で掘ったのだとしたら途方もない時間が掛かったことだろう。

それともまだ痕跡が見つかっていないだけで他にも人が居たとか?

「佐久間さん!洞窟自体も気になるんですけどそれ以上にその中が怪しいんです!」

「中?」

早瀬さんと洞窟へ向かう。

すると思ったより早く最深部まで着いた。

いや…これは。

「めちゃくちゃ深い穴?」

穴の先にはまた穴。

しかも今度は真下に掘られている。

「しかもそこが見えないほど深いんです!」

確かに全然そこが見えない。

試しに小石を落としてみる。

…………暫くしてそこに当たる音が聞こえた。

「こりゃ相当深いな。」

これが何なのかをすぐに調べるのは難しそうだ。

「この穴の存在についてはしっかりとマオウに説明しておこう。結構いろいろなところを見てきたし、一旦みんなと合流しようか。」

俺たちはこの怪しい洞窟を後にした。




…俺たちはマオウ達がいた場所に戻ってきた。

戻ってきたはず…なのだが。

「なんだこれ?」

マオウ達の元に帰ってきてみると、そこにはすでに巨大な家の骨組みが建てられていた。

そしてその骨組みの周りで働いているのは…ゴブリン?

「おう、戻ったかサクマ。」

「あぁ…これは?」

「ここのロケーションを気に入ったからここに家を建てることにした。」

「いやまぁそれはいいけど…もう骨組みまで出来てるの?」

「ゴブリンは手先が器用だからな。建築など何かを作る能力が魔物の中でも段違いに高い。」

「…コイツらはお前の言うこと聞いてくれてるのか?」

「コイツらは俺と仲の良い魔王軍幹部、ゴブリンキングの直属の部下だ。心配入らない。」

そういえば一部の仲のいい幹部を連れて行きたいとか言ってたな。

「そうだ、お前に紹介しておこう。ゴッダス、来い。」

マオウの目の前に魔法陣か作られ、そこから巨大なゴブリンが現れた。

「おう、ゴブリンキングのゴッダスだ。魔王との戦い観てたぜ!実に熱い勝負だった!」

背中をバンバンと叩いてくる。

めちゃくちゃ痛い。

「コイツは武器鍛冶としての技術も一級品でな。コイツにあの宝石とかを見てもらうのはどうかと思ってな。」

「おう、一度その鉱石を鍛冶部屋で見せてくれねぇか?魔王様…じゃなくてマオウ。もう一回転移頼む。」

「いいだろう。エルヴィア、現場の指示を引き続き頼む。」

「了解いたしました。」




マオウ達に連れられゴッダスの鍛冶部屋へ移動した。

「なるほどな、それぞれが不思議な効果を持つ鉱石。それらを使用し新たな武器を作るか…。」

今俺の手元にあるのはウルスくんの世界で手に入れた攻撃中に動きを止められる石、キアラさんの世界でサタンからドロップしたっぽい受けたダメージを爆発力に変える石、ルシルさんの世界でリッチが使っていた剣についていた衝撃波を飛ばす石、ソウドくんの世界にいた時に上から渡された悪性反応を感知する石、そしてこの世界で手に入れた力の吸収と放出が可能な石。

5種類の石や宝石が大体2つずつ、悪性反応を感知する石は小さな破片がたくさん、吸収する石は一つが真っ二つに割れている。

「良い感じに出来るか?」

「当たり前だろ。誰があのレーヴァテインを作ったと思ってんだ。」

アレ作ったのお前かよ。

その武器のせいで俺大変なことになったんだからな。

「ちなみにどんな武器が良いとか希望はあるか?」

「…希望する武器か。」

ぶっちゃけこだわりがあまりないんだよな。

「拳によるステゴロだろ。お前の戦い方は。」

マオウが口を挟んでくる。

「ん?」

「お前が1番強いのは拳での直接戦闘だ。お前と戦った俺だからこそ分かる。だから作るのはガントレットなような装備が理想じゃないか?」

「…そんなに強かった?」

「あぁ、1番恐怖を感じた。」

「確かに遠くから見ていても拳を握っていた時が1番迫力があったな!」

…まぁ剣とか銃を使用した戦闘はほぼ独学だからな。

ステゴロは武器を上から貰うまでずっとやってたしその経験値もあるのかもな。

「しかもどれも二つ以上あるから両腕分製造可能だな。」

「ちょうど良いじゃないか。もう造っちまっていいか?」

「あぁ、よろしく頼む。」




「よし!複雑な鉱石の加工も必要になるだろうから1日はかかりそうだな。」

「むしろ1日で作れるのか。」

「うちの幹部だ。それぐらいで手こずることはない。まぁもう解散したから幹部じゃないけどな。」

「魔王様….いやマオウ。たとえお前が俺らの王でなくなったとしても、お前を慕っていた幹部からしたら関係ない。ただお前についていくぜ。」

「…あぁ。ありがとう。」

一部の幹部を除きマオウへの信頼は厚いようだ。

流石数万年の間魔物の管理をしていただけのことはある。

「…さぁ!戻るぞサクマ!」

「はいはい。」

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