悪役令嬢編:理由を教えてください!
「死亡フラグの原因!?」
「はい。少々机を貸していただいてもよろしいですか?」
上原さんに机を貸す。
すると机の上の空間に穴の様なものが開く。
「え!?何これ!?」
「上原さんはこの穴を自在に開けてこちらの世界の物を持ってくることができるんです!」
「"コレ"を使うには私が穴を開けたままにしなければいけないんですよね。」
「コレ?」
上原さんが穴に手を突っ込むと穴の中ならノートPCがでてきた。
「私は先程までこの世界の元となったゲームについて調べておりました。ちなみにキアラさんはプレイ済みとのことでましたがこのゲームについて詳しいのですか?」
「いや、友達と話を合わせるためだけにやったから…一応全ルートクリアはしたけど。」
「実はこのゲームのシナリオライターさんが過去にファンからの質問に答えておりまして。」
ファンからの質問?
「質問内容は『何で私の推しのキアラ様は全ルートで死んでしまうのですか』と言ったものです。」
作者に対する圧倒的怒りを感じる…まぁオタクからしたら推しがどう頑張っても死ぬってのは嫌だよね。
「この質問に対しシナリオライターさんは『ブログには記載してたんですけれどカース家って呪いを扱う一族で過去に大事件を起こしているんです。』」
「はぁ!?何それ!?」
「原作では一才触れられなかった話、所謂裏設定というやつですね。『その過去に起こした事件、というかもはや災害のせいで彼女たち一族は超不幸体質になってるんです。』」
超不幸体質?何それ?
「先程の話にあったブログはこちらになります。」
ブログにはカース家が過去に起こした事件とその顛末が書かれていた。
カース家は昔、呪いを研究し続けた魔女の一族であった。
本来は敵国との戦争の際にそれらの呪いを使って戦況を有利に進めると言ったものだった。
時には敵国に止まない大雨を降らせ、さらには敵兵を呪うことで病気にさせる。
畑は枯れ果て家畜も弱る。
この呪いはあまりにも強力だった。
事件の発端は国の裏切りである。
国は戦争にて大きな力を発揮したカース家を恐れたため国外へ追放しようとしたのだ。
戦争に大いに貢献したにもかかわらず、報酬を得るどころかその様な仕打ちを受けたカース家はこの国を呪う事にした。
カース家は国を地獄のどん底に陥れるためには現在の呪いだけでは足りないと考えた。
カース家は更なる力を得るために悪魔との契約をした。
その力により国は地獄を見る羽目となった。
あらゆる災害が国を襲い、疫病により国民の多くが死滅。
国から逃げ出す国民が大半となった。
結果国がカース家に勝ち目がないことを認め、貴族として優遇することも誓う事で何とか矛を収めさせた。
カース家は満足のいく結果を残せたため良かったと思っていたのも束の間、悪魔の契約により生涯一族は幸運を吸われることとなった。
この日以来、カース家には不幸なことが起こりがちである。
「…とのことです。」
「いや…何でそんなおっかない一族を国から追放しようと思うの…そんなことしたら仕返しされるに決まってるじゃん。馬鹿なの?」
「それに関しては多くの方に指摘されてますね。『国が馬鹿過ぎて草』『自ら敵にするの訳分からん』などなど言われております。」
「…とりあえず私の死亡フラグは全部過去に一族がブチ切れて復讐した反動ってことなんだ…。」
確かに引きこもっている間もよくついてないなと思うことがあった。
タンスの角に小指をぶつけたり、トイレットペーパーが空だったり。
…いやコレは関係ないのかな。
…というか悪魔との契約が原因なのは分かったけど、分かったところでコレってどうしようもないのでは?
何なら学園に行かなくても私は結局不幸なままってことが分かっちゃったし…。
「大丈夫ですキアラさん。こちらの質問をご覧ください。」
上原さんが再び画面を見せてくる。
「質問内容は『キアラの不幸はどうにまできないものなのですか。』というもの。それへの回答は『今作のゲーム内では不可能ですね。ただ世界観的には可能です。ストーリー内で悪魔に利用されて目を覚さなくなった少年のために悪魔と戦う場面があるのですがそれと同じことを出来れば可能ですね。』とのことです。」
「…それかなり終盤の話だった気がする。」
共通ストーリーの終盤にて悪魔と契約をしてしまった少年を助けるためにヒロインと攻略対象が悪魔の元に向かうんだよね。
確かその悪魔を倒すために…。
「なんか…聖剣みたいなのが必要なんですよね。」
「そんな凄そうなのがあるんですね!」
「いや、性能はそこまで強くなかったですよ。」
確か悪魔にだけ強い剣でそれ以外の価値はない。
しかも必要だった理由は"悪魔にトドメをさせるのが聖剣のみ"だから。
あまり強くない装備をトドメのためだけにつけなきゃいけないのが面倒だったのは覚えている。
「つまり、カース家が過去に契約した悪魔を聖剣で倒すことで死亡フラグがなくなる可能性が大きいです。」
「キアラさん!やるべきことが決まりましたね!」
確かにこれなら死亡フラグから解放されるかもしれない。
それに…今後家族に対して過度に不幸なことが起こることがなくなるなら。
「はい。悪魔の討伐、手伝って欲しいです。」
「聖剣と悪魔の居場所は分かるんですか?」
「聖剣はストーリー上では国が保管しております。ただカース家が契約した悪魔に関しては情報がないですね。」
「私の両親が知っていると思います。もしくは書斎の文献とかにあるかも。」
「それではキアラさん。お手数ですが悪魔の居場所について調べておいてもらってもよろしいでしょうか。」
「はい。ただ聖剣の場所は分かっても国が管理してるんじゃ…。」
「それはお任せください!私が盗ってきます!」
え?盗ってこれるの?やっぱり泥棒なの?
「早瀬さん。できる限り穏便に済ませるためにレプリカを作成します。それと交換してもらってよろしいですか。」
「なるほど!了解です!」
「あの!それができても悪魔に勝てなくないですか?」
ストーリーで戦った悪魔も終盤の強キャラだった。
とても今の戦力じゃ…。
「恐らく問題ないですね。」
上原さんがキッパリと答える。
「はい!私たちそういうの慣れてるので!」
早瀬さんはニコニコしながら答える。
…マジで何者なんだろうこの人たち。
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