悪役令嬢編:私、死にたくないんです!
「うーん…。」
昨晩私の前に現れた異世界転生者の2人に言っていたことを思い出す。
この世界の主人公になった私の手助けをする…。
そして私がこの世界にいて助けて欲しいことといったら…。
「やっぱり学園への復帰…なのかな。」
これ以上家族に心配や迷惑をかけることが心苦しい。
だが学園ではおそらく自分の死亡フラグが乱立している。
「…私が死なない様学園で守って欲しいってのもあるけど…。」
彼らがこの世界にいるのは5日間のみ、その期間だけ守ってもらったところで対して意味はなさそうだ。
「やっぱり…改めて相談させてもらったほうがいいのかな。」
昨日の早瀬さんがいう様に手助けの内容を一緒に考えてもらうというのも手だ。
…学園で安全に暮らせる方法があればなぁ…。
俺と早瀬さんはこの世界を散策していた。
「貴族社会って感じの世界かと思ったら、この世界にも魔法とかがあるんですね!」
「まぁ割とそんな感じの作品はこっちでもよく見かけるね。多分元のゲームにも戦闘システムみたいなのがあったんじゃない?」
現在、上原さんに元となったゲームについて調べてもらっている。
「元のゲームにバグ技があった場合この世界でも使えたりするんですかね!」
「壁抜けとかしてみたいねぇ。」
…結局学園の話やこの世界の話を少し聞けたぐらいで進展は特になし。
とりあえず改めてキアラさんの元に向かっている。
「まだあのカース家のお嬢様はでてこねぇのかよ。」
「まぁ王子に振られちまってショックなのは解らなくもねぇけどよ。このままじゃカース家は衰退する一方だな。」
「でもよぉ、もしあの一族が血迷って昔みたいな大事件起こしたらどうするよ?」
「おっかねぇこと言うなよ…。そんなことになったらこの国丸ごと終わりだぜ。」
…昔みたいな事件?
あの一族には何かあるのか?
「早瀬さん、ちょっとあそこのお兄さん達と話してみるから先にキアラさんのところに行っててくれない?」
「はい!了解です!」
「失礼します!」
元気よく早瀬さんが入ってきた。
今日もメイド服を着て潜入してきたのだろう。
「大丈夫でしたか?他の従者に見つかったり…。」
「大丈夫です!こういうの慣れてるんで!」
人の家に入り込むのに慣れてるって…前職泥棒か何か?
「それで手助けの内容は決まりましたか?」
「それが全然で…一緒に考えてもらっても良いですか?」
「はい!」
私は早瀬さんに今日考えていたことを概ね話した。
「なるほど!出来るなら学園に復帰したいんですね!」
「ただどうしても不安で…。」
「もっと明るく考えてみませんか!」
「明るく?」
「例えば学園復帰は家族の為の願いです!ただキアラさん本人にとっても教養を得られることや地位の確立のために大切ですよね!」
あぁ、使命感ではなく自分への利点もあるよという話か。
「それに一年も部屋から出ていないとのことですが、ぶっちゃけ暇じゃないですか?」
それはそう。
この世界は部屋でできる娯楽は本を読むなど限られた者である。
ぶっちゃけ暇だ。
「それに…最近運動してます?」
「ぐはっ!?」
痛いところを突かれた。
確かに運動は殆どしていないし…最近ちょっとばかしお腹回りが…。
「こんなこと言っちゃうのは何ですけど太っちゃいますよ!」
「ストレートに言わないで!?」
そんなニコニコしながらデブ宣言しないでよ!?
「とりあえず学園に復帰すること自体はキアラさんにとっても恐らく良い事だと思います!勿論危険な可能性もありますが、そもそも死んでしまう可能性というのは生きている以上必ず存在するものですし!」
…一理あるのかもしれない。
何ならここに引もこもっていれば安全という確証もないのだ。
前世でだって登校中に事故に巻き込まれたり不審者に絡まれる可能性はある。
…ただ大人しく過ごしていただけなのに階段から突き落とされる事も。
「そう考えたら私が感じてる命の危機って案外普通のことなのかも…。」
するとドアからノックと音がした。
「キアラ、少し話があるのだか入って良いかい?」
父が来た!?
「早瀬さん一旦隠れ…。」
振り返るともう早瀬さんの姿が見えない。
本当に何者なんだろう。
「キアラ?」
「あ。お父様、どうぞお入りください。」
「体調が優れないのにすまないね。一つ聞きたいことがあってな。」
「はい?何についてでしょうか?」
「先日カイザ王子から婚約破棄をされたというのは本当か?」
え!?何でもうバレてるの?佐久間さんと早瀬さんにしか話してないはず…。
「どうやらメイドが廊下から会話を聞いてしまった様でな。それで、この話は本当なのか?」
「えっと…はい、その通りです。私よりも大切な人を見つけた様でして…。」
父は顔を伏せてプルプルと震えている。
私としてはあんな王子願い下げだが、家としてはやっぱり結婚させたかったのかな…国一番の権力者だし…。
「うちの可愛い娘が記憶をなくし体調を崩している中1年間放置しただけでなく婚約破棄だと…?あのガキ…。」
あ、これ違う。私のために怒ってくれているだけだ。
「お父様、私は大丈夫ですから…。」
「何をいう!お前はあのガ…カイザ王子をあんなにも慕っていたではないか。」
まぁ本来柄でもないイジメをヒロインに仕掛けるくらいだし相当惚れてたんだろうけど…。
「お父様落ち着いてください。今の私は記憶をなくしているのですから、彼に対して特別な感情は持ち合わせていません。一切合切これっぽっちも。」
「キアラ…お前は何て優しく逞しいのだ。父はお前を誇りに思うよ!」
すごい感動してる。
ただ単にあの王子が好きじゃないだけなんだけどなぁ。
「場合によってはこの国を丸ごと崩壊させてやろうかとも考えたがその必要はなさそうだな!」
「もうお父様ったら。そんな危ないこと考えてはいけませんわ。」
なんか危なっかしい話をしているがきっと比喩表現かな。
「それでは私は仕事に戻るよ。キアラも無理はしない様にな!」
父はニコニコで帰っていった。
とりあえず大事にならなくてよかったかな。
「娘さん思いの良いお父様ですね!」
うわ。急に後ろに早瀬さんが現れた。
「どこに隠れてたんですか?」
「ベッドの下です!」
「大きなベッドでしたので隠れやすかったですね。」
…あれ?人増えてる。
「初めまして。私は早瀬さんと佐久間さんの同僚の上原と申します。挨拶をしようと伺ったところ同じタイミングで貴女のお父様が来てしまいましたので…。」
2人してベッドの下に潜っていたと…。
「上原さん!佐久間さんはどうしたんですか?」
「キアラさんに伝えなければならないことがございまして、佐久間さんより私の方が説明しやすいとの判断です。」
「じゃあ佐久間さんはお留守番中ですね!」
「多分事務所で寝ているかと。」
あの人出来る限り早めに回答をって言ってたくせに職場で堂々と寝てるの!?
やることないのかもだけど腹立つな。
「それで…私に伝えなければいけないことって何ですか?」
「…あなたの死亡フラグの原因がわかったかもしれません。」
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