悪役令嬢編:貴方達誰なんですか!
新しい異世界に入ってもう1日が経過しようとしている。
主人公は未だ現れず、特にすることもないので俺と上原さんは雑談、早瀬さんには外に出て情報収集に励んでもらっていた。
「この前3人で行った居酒屋あるじゃん?」
「割と最近行った焼き鳥が美味しかったお店でしょうか?」
「そうそれ、俺あそこの鶏皮餃子に感銘を受けてさ?ちょいと自分でも作ってみたくなって。鶏皮を買ってみたのよ。」
「鶏皮って美味しいですよね。脂の量が凄くて食べすぎてはいけないイメージありますけれど。」
「だよねー。それでいざ調理しようと思ったんだけど、鶏皮って何というか…結構見た目がキツいなって気付いてさ。」
「…確かに表面にブツブツとした所謂鳥肌が立っている見た目ですし、苦手な人は苦手でしょうね。」
「しかもよく見ると短い毛とかちょっと残ってるんだよねアレ。何かこう…生命だったものだと強く解らされた感がある。」
「成る程、因みに調理自体は出来たのですか?」
「…出来た。めっちゃ美味かった。やっぱ脂って上手いんだなぁって。」
「だからといって食べ過ぎには気をつけてくださいね。」
「善処する。」
「ただ今戻りました!」
「おかえりなさい早瀬さん。」
「おかえり、どうだったこの世界は。」
「凄いですよ!キラキラしてます!」
早瀬さんに聞いたところ、この世界は貴族がいる様な世界観。
貴族達は学園に通い貴族に相応しいマナーや教養を学ぶらしい。
「ところで主人公さんは来ましたか?」
「それが…人が来る気配が全くと言っていいほどないんです。」
「そうなんですね!そんな事もあろうかとこの付近で影響力がありそうな人も調べてきました!」
「流石早瀬さん!」
「なんでも去年その学園に特待生として入学した娘がいたそうです!元々小さな村にいる農民の娘だったそうなのですが!その娘が最近この国の王子であるカイザ王子といい感じらしいんです!」
「それはなんとも主人公らしいですね。」
「…いやその娘は違うんじゃない?学園とかに通っている娘ならもう既にここに引き寄せられてるでしょ。」
「あ…確かにその通りですね。」
「あ!そういえばその王子と本来婚約していた娘が長らく表に出ておらず、噂では婚約破棄を受けたのではと言われてますね!」
「婚約破棄!定番ですね!」
「だねぇ…いつまで経っても主人公が来る気配がないし、その引きこもりちゃんが当たりかな。」
「どうしましょう…向こうから来ていただけないとなると…。」
「まぁ…俺らから話をしに行くしかないな。」
「はぁ…。」
私がキアラの身体に入ってから一年ほど経った。
未だに何かと理由をつけて学園を休んでいる。
…最近カイザ王子が見舞いに来た。
一年経って初めてである。
まぁ話した内容は見舞いとは思えない様なものだったが。
『散々偉そうにしていたくせに体調悪いだけでいつまでも学園を休むな』とか、『お前なんかよりも心優しく可憐な娘がいる』など好き勝手言って最終的に婚約破棄を叩きつけられた。
…いや婚約破棄は寧ろ喜ばしいまであるんだけど…普通に頭に来るなあの野郎。
というかこの国もう終わってない?
1年間婚約者放置して別の女に惚れ込み、やっと来たと思ったら婚約破棄て。
家族みんなでこの国から出たほうがいい気がしてきた。
「あー気分悪。もう寝よ。」
長らく外出てないな。
…なんか今日妙に外に出たくなる。
明日は久々に散歩とかしてみようかな。
あくまで体調不良ってことで学園休んでるし、誰かに見つかると面倒臭そうなんだよなぁ。
「あー、ルームランナーとかないかなー。」
「ルームランナー!今ルームランナーって言いました!?」
「えぇ!」
びっくりした、急に入ってきて何事!?
ん?こんな顔のメイドや執事ってうちの屋敷にいたっけ?
「この世界にルームランナーってありませんよね!つまり私たちと同じですよね!」
同じって何?どうしようとりあえず変な人たちだし大声を上げて助けを…。
「早瀬さんちょっと落ち着いて。ごめんね急に押しかけて。俺たち怪しい者では…いや怪しいか。」
「うん、めちゃくちゃ怪しい。」
あれ、でもさっきあのメイドのこと早瀬って。
「もしかして、お二人もこのゲームの世界に転生してきた人ですか!?」
「「ゲーム?」」
あれ?違った?
「つまりお二人は異世界における主人公、今回の場合は私の手助けをするために様々な異世界を渡っているってことですね。」
「そうそう、やっぱ元の世界が同じ人には説明が楽で助かるよ。」
中々にぶっ飛んだ内容ではあるが、私自身訳もわからず転生しているぶっ飛んだ人間だしね…。
「それにしてもこの世界は恋愛ゲームの世界だったんですね!」
「で、君はそんな世界の悪役令嬢に転生してしまったと。」
「はい。そしてゲームの内容に思いっきり背こうとしたら今日婚約破棄されました。」
「君中々度胸あるね。」
「だってあの王子、ゲームやってた頃から嫌いなんですもん。」
「いやまぁその母性に溺れた王子様はどうでもいいとして、いつまでも引きこもっているわけにも行かないだろ。」
「それは…そうですけど。」
この世界の貴族は学園を卒業できていないだけで扱いが最悪になる。
家の名前に泥を塗る行為だ。
私だってこの世界の家族には…そんな迷惑をかけたくない。
でも…私は死にたくない。
「…主人公や攻略対象と関わると…私死んじゃうかもだし…。」
多少の苦しい事や悲しい事は耐えられる。
でも、でも死ぬ事だけは未だに怖い。
「…また今度来てもらっても良いですか?そしたら…私が手助けして欲しい事をしっかりと決めますから。」
「…わかった。俺らがこの世界にいられる期間は今日を含めて5日間のみだからできる限り早めに決めて欲しい。」
佐久間と名乗る男性は去っていった。
「キアラさん!悩んで答えが出ない時は『一緒に考えて欲しい』ていうのもアリですからね!」
早瀬という女性も彼についていった。
そうだ。もう一年も経ってしまったんだ。
いつまでもこのままではいけない。
そう気付かされた。
「キアラさん大丈夫ですかね?」
「手助けの内容に関しては自分で決めてもらわないとだしなぁ。とりあえず俺らは明日の朝から学園周りについて調べて、また夜ごろに話を聞きにいってみようか。」
「はい!了解です!」
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