勇者パーティー追放編:手を貸してください

サクマさんはすぐにゴーレムの元に駆け出していく。

(まずは彼女を…。)

すぐに彼女に回復魔法と防御の強化魔法を付与。それと転移魔法で彼女の元にすぐさま移動する。

「喰らえ!」

ゴーレムの顔面に攻撃魔法をぶち当てる。流石に序盤のボスを怯ませるぐらいは…。

「…頑丈かよ。」

若干のけぞらせることは出来たが…流石はゴーレムさん、カチカチである。

「オラ!」

でも一瞬でものけぞらしたことでサクマさんが間に合ったようだ。

物凄い勢いのサクマさんがゴーレムにタックルをかまし、ゴーレムが壁までぶっ飛んだ。

「ウルス君ナイスアシスト!」

「サクマさんこそありがとうございます。」

…俺の魔法じゃのけぞらせる程度だったのにタックルで壁まで…。

本当にどうなってるんだこの人は。

「で、獣人の娘は大丈夫そうかい。」

「はい、気絶しているみたいですがとりあえず回復魔法と防御強化をかけました。」

「手際いいねぇ!流石勇者パーティーだ!とりあえずその娘は任せる。ゴーレムはこっちの方でなんとかしとくよ。」

「お願いします。」




「…ん?」

「あ!気がつきましたか!」

獣人の娘がゆっくりと目を開ける。

「ひぇっ!人間!?」

…すぐに距離を取られてしまった。めちゃくちゃ警戒されているようだ。

「…警戒するのはしょうがないけれどもう少しこっちきた方がいいと思うよ。下手したら巻き込まれる。」

「巻き込まれる?…え!?何あれ!?」

まぁ驚くよな。ゴーレムにやられたと思ったら目の前に人間が2人。そのうちの1人はゴーレムが起き上がる度にタックルをかまして壁まで突き飛ばすのを延々と繰り返している。何度も突き飛ばされているゴーレムはもうボロボロだ。

「…あの、なんですかあれは?」

獣人の娘は顔を引き攣らせている。

「…なんなんだろうね。」

俺は苦笑いで返すしかなかった。




「いやーいい運動になった。」

「お疲れ様です。」

「ウルス君もお疲れ様。獣人の娘も怪我はない?」

「は、はい。ありがとうございます…。」

サクマさん、めちゃくちゃ警戒されてます。というか引かれてます。

「そりゃよかった。で、君は何でこんなとこにいたのかね?」

「あ、それなんですが…。」

サクマさんがあまりに余裕そうだったので先に彼女と話をさせてもらった。

「彼女の名前はオアシスっていうみたいで、奴隷として誘拐されそうになったためにダンジョンに逃げ込んだそうです。」

「…成る程ね。」

サクマさんの顔が一瞬曇る。

「ダンジョンで人間を撒こうとした結果ボスの所まで来てしまったとのことでした。」

「とりあえずダンジョンから出よう。村の近くまで彼女を送ろうか。」




獣人の娘を村の周辺まで送る。

お礼をしたいと言われたが、やはり獣人たちの村に入るのは周りの目が怖いため遠慮した。

「なんか久しぶりに感謝をされた気がします。」

「え?最近感謝されてなかったの?」

「勇者パーティーにいた頃は期待や憧れを向けられることはあったんですけど、街の人たちから感謝の言葉は貰ったことなかったですね。パーティーメンバーは…お話しした通りですし。」

最初の頃はアリスと互いにコミュニケーションを取りながら進んでいたが最近は最低限の会話はしないかんじだったしなぁ。

他2人はそもそも俺に礼など言ったこともないし…。

「じゃあせっかくだし思いっきり誇っておいたらいいさ。今君は1人の人生を明確に救ったんだ。」

「…なんだか俺、少しくらい主人公っぽくなれましたかね?」

「あぁ、間違いなく昨日より一段と主人公顔してるよ。」

「…どんな顔ですか。」

「んー、爽やかイケメン顔かな。」

2人で笑い合いながらダンジョンに戻った。




「さてさてダンジョンに戻ってきたわけだが…。」

目の前には何体かのゴーレムがいる。

「ダンジョンのモンスターって無限に湧くの?」

「はい、どこからどの様に現れているのかは未だ解明されていません。」

「はえー不思議だねぇ。そうなるとこの中に拠点を作るには何とかモンスターが湧かない様に、そして侵入されない様にしなきゃだよな。」

「一応湧かない様にする方法はあるんですが…。」

「ほう?」

「聖水をダンジョン内に撒くと1週間ぐらいは湧かなくなります。教会に行けば貰えるものですし、農家とかは自分の農場にモンスターが迷い込まない様もらいに行くことが多々ありますね。」

「…ただ今のウルス君は教会に通うわけにはいかないよな。」

「ですね…。」

「なんとか聖水を得る方法が必要だな…。それと二つ聞きたいことあるんだけど。」

「何でしょうか?」

「一つ目は探知魔法について。アレされるとダンジョン内に謎の人物がいるのバレちゃうよね。対抗手段とかある?」

「基本的にはないですが…ボス部屋周辺はモンスターがどれぐらいいるか確認できなかったりします。ボス部屋内部にどれほど敵がいるのか分からない様にされているのかも。」

「そうなると拠点はボス部屋の周辺てことになるか…。それじゃあ二つ目の質問、転移魔法って複数回使用するの大変だったりする?」

「距離が遠いと厳しいですね。短い距離ならそこまで苦じゃないです。」

「そっか…。なら何とかなるかもな。」

「何か方法を思いついたんですか!?」

「一応ね、ただやっぱり聖水の安定供給は必要そうだなぁ。」

「場合によっては変装とかして教会に取りに行く必要ありそうですかね。」

「…もしかしたらね。」

…補助魔法で顔変えれたりしないかな…。

「とりあえず一旦戻ろうか。そろそろ早瀬さんも戻ってきてるかもしれないしね。」

「はい。」




「ただいま~。」

「ただいま戻りました。」

「お疲れ様です。ダンジョン内はどうでしたか?」

「悪くないね。他にも必要なものがあることもよくわかったし。」

サクマさんと俺が戻るとウエハラさんが玄関から俺たちを迎えてくれた。

「早瀬さんは戻ってる?」

「はい、先程戻られました。」

「よし、じゃあ情報共有といこうか。」

家に入りハヤセさんの元へ向かう。

「お疲れ様早瀬さん。街の方はどうだった?」

「お疲れ様です!街の方は色々と大変なことになってますね!」

「まだ俺が見つかっていないからですかね。」

「それもあるんですけれど、街の人の何人かはウルスさんが魔王軍の手先であることに納得していないみたいです。」

「えっ。」

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