14~食堂リオマ~

「じゃあ、メニューを見て好きなの選んで」


 真織の言葉に頷き、近くに置いてあるメニューを手に取る。


 カツカレー、蕎麦、和風定食、生姜焼き定食……。美味しそうなメニューがたくさんあり、どれも捨てがたい。


「じゃあ、和風定食、お願いします」


 私は和食が好き。なんだか安心する味だから。


「わかった。飲み物はどうする?」


 真織が首を傾げる。


「水でいいよ」


「わかった」


 私はカウンター席から、料理をしている真織をぼーっと眺める。


「真織って、料理できるんだね」


 ぽつりと呟く。


「うん。楽しいから」


「へえ……」


 私は頷いたあと、なんとなく辺りを見回した。

 ここには、スーツを着た男性、家族、おばあさんなどがいる。ゆったりとした空気が流れていた。

 そしてまた真織に視線を戻す。


「……私も料理、してみたいな」


 また小さな声で呟いた。

 真織には聞こえなかったと思っていたのに、真織は嬉しそうな顔をして振り向いた。


「じゃあ、またこの店に来てよ」


 私はえ、と目を丸くする。


「料理、教えてあげる」


 真織が優しく笑った。

 私もつられて笑い、うん、と頷いた。


「えーっと、明日はちょっと用事があって無理だから……、来週でいいかな?」


 来週――六月二十四日だ。


「いいよ。ありがとう」


 楽しみに待っててね、と真織が笑い、また料理を始めた。




「お待たせしました。和風定食です」


 真織がお盆を持ち、微笑みながら定食を持ってきてくれる。

 ありがとうございます、とお礼を言い、私はスマホを取り出す。

 そして、パシャリと写真を一枚撮った。撮らずにはいられなかった。


 スマホをしまい、お箸を持ち「いただきます」と手を合わせてまずはお味噌汁に口を付けた。


 瞬間、口に柔らかいお味噌汁の味が広がり、そして暖かいものが胸に広がる。


「美味しい……」


 ほっと息を吐く。


「よかった」


 真織がにっこりと笑った。


 ご飯もおかずも食べたが、家で食べるものよりも美味しさを感じた。




 食べ終わり、ごちそうさま、と言うと、お客様の注文を終えた真織がにっこりと笑ってこちらに歩み寄る。


「ありがとう。お口に合ったかな?」


 お盆を持ちながら彼が首を傾げた。


「うん。とっても美味しかった」


「よかった」


 真織が今日一番の笑顔で笑ったので、私もつられて笑顔になった。

 私はカウンター席を立ち、「そろそろ帰るね」とお盆を片付けにいった真織に声をかける。


「そっか。今日はありがとう」


「それはこっちが言いたいよ。ありがとう。今日は楽しかった」


「じゃあ、また月曜日」


「うん。また」


 彼に手を振り、リオマを出た。


 ご馳走してもらったので、今度絶対にお礼をしよう、と思いながら。

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