　夏休み間近の土曜日、昼過ぎ。

　食品の買い出しへ行く、と言っていた両親を玄関先で見送り、私は自室で勉強机に向かっていた。

　本当はスマホゲームを楽しみたいところだけれど……。

　昨日までに返却された期末テストの答案用紙、間違えた箇所を改めて確認して、再度解く。

　単純な計算ミスや書き間違い、くらいなら分かりやすくていいのだけど。なんで間違えているのか分からない問題が一番厄介だ。

　テストが返却された授業で先生が解説していた問題も、その場では理解したつもりになっていたが、自分一人で解いてみると意外と分かっていなかったことに気がつく。

　面倒だなぁと思いながらも、一問一問、向き合っていった。

　＊＊＊

「疲れた！息抜きしよ！」

　頭痛の前兆、頭重（ずじゅう）を感じて、私は誰へともなく宣言した。学業は学生の本分とはいえ、やりすぎは良くない。

　勉強中、聴くのを我慢していたラジオを流す。今日も手が触れる前に卓上ラジオの電源が入った。

　ラジオから届く音楽に合わせるように、背を伸ばす。軽くストレッチでもしよう。

　今流れているのは、カウントダウン形式でテーマに沿った楽曲を紹介する番組だった。リスナーからの投票でランキングが決められているらしい。

　今回のテーマは【夏に歌いたいカラオケ鉄板ソング】とのことで、夏らしくノリの良い曲がラジオから流れていた。

「来年の今頃は、受験勉強漬けの日々なのかなー」

　今年の夏休みのうちに、友達誘って遊んでおこう。それこそ、カラオケとかみんなで盛り上がりたいし、思い出も作っておきたい。

　でも、高校の先生や両親からは、今のうちに大学や専門学校のオープンキャンパス、学校説明会へ行くようにと何度も言われている。

　いや、言いたいことは分かるよ？ただ、将来の夢とかやりたいこととか、特にないのに。何を基準に見学先を選べばいいの？って話。

　学校のテストとか受験の筆記試験は、模範解答があるけどさ。

　進路──今後の人生を決めるかもしれない、いくつもの選択肢には、その中に正解とかあるのかな。

　未来の私のためにも、最善の選択をしたい。けれど、今の私には解くことのできない問いが、目の前には確かにあるのだった。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい