7月7日(金) 『酒涙雨(さいるいう)』
「今夜は一人で打ち上げだ〜!」
夕食を終えた後、お風呂も早めにも済ませて自室で過ごす。
教科書やノートは通学カバンに入れたまま。勉強机には卓上ラジオと、ジュースとスナック菓子を用意して、夜七時を待つ。
時報が流れて、そして、
『七月七日金曜日、時刻は午後七時になりました。こんばんは、声優の瀬戸川セツナです。七月限定の番組、タソガレドキにはアイスティーを、略して、タソアイ。月曜日から金曜日の夜七時から七時三十分まで、黄昏時の三十分間、どうぞよろしくお願いします。今週ラストの放送です。今夜も飲み物片手に、気軽に、気楽に、聴いてくださいね』
セツナさんの楽しそうな、それでいて落ち着きも感じる声で、タソアイが始まった。
私はペットボトルからマグカップにジュースを移しつつ、テスト勉強から解放された余韻に浸る。
テストの返却は来週だけど、ひとまず……。よく頑張ったね、あいら!お疲れ!
『今日は七夕ですが、七夕に降る雨は
「へぇ。さいるいう、なんて言葉があるんだ。ラジオって色々教えてくれるんだなぁ」
ここ数日、ラジオをちゃんと聴いてみて分かった。知らない曲、知らない単語、見ず知らずのリスナーさんの日常や思い出、そして、会ったこともないのに気の合いそうなパーソナリティ。
今までラジオといえば、父の運転する車の中でカーラジオを流し聴きしていたくらいだったけれど。
改めて、聴く耳を持って聴いてみると、おもしろいな。
「あれ、ちょっと待って。明日はタソアイの放送ないじゃん……!」
ふと気がついて、自分でも驚くくらいにがっかりする。この一週間で、私はすっかりラジオっ子になっていたのだった。
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