第5話 彼氏と写真
「あーだめだ、本当に可愛すぎる、完璧にメイクが完成したおまえの顔、もはや狂気だぞこれは」
「可愛くもあり、それでいて綺麗で可憐で……。このまま美術の石膏像みたいに首から上だけ切り落として家に飾ってやろうかな……」
//SE 手でを切り落とすジェスチャーをする音
「流石に冗談だよ。でもさ、おまえのこの完璧なメイク姿を後世まで残しておきたいって思いは本当で……」
//SE ポケットからスマホを取り出す音
「これから毎日おまえのメイクした顔を見て元気出したいなと思って、写真だけ撮ってもいいか?」
「……」
//不安
「えっ、それはすんなりおっけーしてくれるのか」
「え? 写真くらい良いに決まってる?」
「いや、だってさっきまでは何お願いしても嫌がられてたから……」
「まあでもよく考えたらそりゃそうか。メイクさせてくれとか髪切らせてくれとか、そんなとんでもないお願いに比べたら写真撮らせてくれなんて朝飯前だよな」
「よし、それなら早速写真撮るからこっちに目線向けてくれ」
「え? 2人で撮るんじゃないのかって?」
「それは考えてなかったな……。いやでもそれ最高じゃねぇか。メイクしたおまえはもう女の子にしか見えねぇし、恋人の俺たちが2人で写真撮ればそれはもう百合だもんな」
「自分が男っぽいせいか百合展開はかなり好物なんだよな」
「で、でもとりあえずピンで撮らせてくれ。おまえの顔を見て元気出したい時に自分の顔が写ってたら逆に元気なくなっちまいそうだからさ」
「え? 僕は俺の顔を見た方が元気出る?」
「ま、まぁ確かに……お前からしたらそうなるのか」
「と、とりあえず撮るぞ! 設定はおまえが目立つようにポートレートにしてっと……」
「ちゃんとおまえだけが際立つように取らないともったいねぇだろ」
「よし、じゃあ撮るぞ」
「はい、にっこり笑って〜」
「おい、笑顔がぎこちねぇぞ。もっと笑って!」
「お、そうそうそんな感じ」
「うーん……。まだちょっと眉間にシワが寄ってんな……」
「おっ、それそれぇ! その感じ! 最高の笑顔だなそれ!」
「そのままだぞ! はい、チーズっ」
「……うん、完璧だ。こーゆーのは何枚も撮るより1枚だけ最高の写真を残しておくのがいいんだよな」
「え? どこの変態カメラマンだよって?」
「俺は変態なんかじゃ……いや、でも側から見たら変態だよな」
「お、俺が変態かどうかなんて置いといて、早く2人で撮ろうぜ!」
「……」
//自撮り方向にカメラ向ける
「え、ちょっと待ってくれ。これ本格的におまえの方が顔小さくないか⁉︎」
「いや、そりゃなんとなく察してはいたけど、流石に女の俺が男のおまえに顔の大きさで負けるとなるとショックが大きいというか……」
「と、とにかく恥ずかしいからちょっとだけおまえの方が前に出てくれ」
「おまえが前に出れば遠近法で俺の顔が小さくなるだろ」
//SE 背中を押される音
「え、嘘だろ。おまえの方が前に出てるのに俺とそんなに顔の大きさ変わんねぇんだが⁉︎」
「ショックを隠しきれねぇけど、おまえが本当に完璧な顔をしてるんだなって再認識できたって前向きに考えることにするよ……」
「それじゃあ撮るぞー。はい、チーズ」
//SE シャッター音
「あー、だめだ。私ちょっと半目になってる」
「もう1回撮り直しな」
「それじゃあいくよっ。はい、チーズ--」
//SE 聞き手の頬にキスする音
//SE シャッター音
「へっへへへーっ。びっくりした?」
「女の子が女の子のほっぺにチューしてる写真なんて中々とれねぇだろ? せっかくだからそんな写真も撮りてぇなーって」
「ど、どうしたんだよ固まっちゃって。そんなにびっくりされたら恥ずかしくなってくるだろ」
「あ、あのさ……。おまえさえ良ければ、その、このままキスしてくれねぇか?」
「わ、分かってるぞ⁉︎ 付き合ってからまだキスなんて1回もしたことなくて、初めてのキスがおまえがメイクした状態でのキスになるなんて変だってことくらい」
「で、でもだって、メイクをとればもうメイクした状態でのキスなんてこの先何年撮れるか分かんねぇだろ……?」
「だから頼む! お願いばっかになってるけど、どうしてもお前がメイクした状態で写真が撮りてぇんだ!」
//SE 手を合わせる音
「え、いいのか……?」
「ははっ。お願いしといてこんなこと言うのもどうかと思うけど本当にお人好しだな君は」
「それじゃあ、あ、お願いしますっ」
「……」
//SE キスする音
「……」
//長時間のキス
「ぷはぁっ! ご、ごめん、俺、付き合うの自体もおまえが初めてで、ま、ましてやキスなんてしたことねぇから……。離れるタイミング見失って……」
「う、上手く撮れてるかな……」
「……」
//写真を確認
「な、なんかキスしてるところの自撮りって恥ずかしいな……」
「でももうこれで満足だ。ここまでやらせてくれたらもうお願いすることはねぇよ」
「ん? 何か物足りないって……?」
「メイクはもういじりようがないくらい完璧だったと思うんだけど……」
「物足りねぇって言うならもうちょっとメイクするか?」
「え? 化粧は完璧? じゃあ何が物足りねぇんだよ」
「え、物足りないのは俺の方?」
「……」
//不思議そうに
「--は? 男装⁉︎」
「ちょっ、ちょっと待て! なんで俺が男装なんかしないといけないんだよ⁉︎」
「な、なんでもいうこと聞くって言ったよなって言われても……確かに言ったけどよ……」
「俺が男装なんかしたって誰も得しねぇぞ⁉︎」
「僕が得するって……ちょっと待て! だ、男装だなんて恥ずかしくて……」
「どの口が言ってるって言われれても……。はい、その通りです」
「え? じゃあ早速俺の家にっておまえそのメイクのまま外に出るのか⁉︎ あんなに外に出るの嫌がってたのに⁉︎」
「え、なんか可愛すぎて自信持ててきた?」
「ってそれ自分で言うな〜〜! めっちゃ可愛いけどぉ〜!」
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