第4話 彼氏の尿意
「ふぅ。これであらかた髪も切り終わったな」
//SE 額を拭う音
「おおおおおおーーーーーーっ! やっぱ髪整えたら可愛くなった! 俺なんかより全然可愛いな!」
「え、それはない? 俺の方が可愛い?」
「あ、そ、その……。あ、ありがと」
「いや、でも本当に可愛すぎるぞこれは。誰がどうみたってもう女の子の顔だ」
「ん? それは褒め言葉なのかって?」
「褒め言葉に決まってるだろ! 可愛いって褒め言葉は女の子が1番喜ぶんだからな!」
「え、おまえ男だったのか!?」
「ははっ。冗談だって。いつもはかっこいいなって思ってるから許してくれよ」
「はぁ……。俺もおまえみたいに綺麗でメイクのしやすい顔に生まれたかったなぁ」
「ん、どうした? なんかモゾモゾしてないか? 褒められて恥ずかしくなったのか?」
「--え、おしっこ⁉︎」
「そういうのはもっと早く言えよな⁉︎ そしたら対処のしようもあるってのに……」
「え、やばい? ちょっと待て! こんなところで漏らしたらシャレになんねぇぞ⁉︎」」
「とは言ってもこんな髪の毛まるけの状態で今すぐここを離れてトイレに向かってもらうわけにはいかないし……」
//悩んで辺りを見渡す
「そ、その、恥ずかしくなかったら、そこのペットボトルの中にするか?」
//SE 空になったペットボトルを持つ音
「す、するわけない? なんでだよ⁉︎ 今なら丁度ヘアーエプロンしてるんだし私からは見えないぞ⁉︎ ほら、昔使ってたプールの時に使うバスタオルみたいな!」
「え? そういう問題じゃない?」
「いや、確かにそういう問題じゃねぇのかもしんねぇけど、間に合わなかったら元も子もないだろ⁉︎」
「お、俺は全然構わないぞ?」
「な、なんなら私がペットボトル待っといてやるから……」
「……ごめん。焦っておかしくなってた。そりゃ気になるしこんなところでペットボトルの中におしっこなんてしたくねぇよな」
「ちょっとだけ待っててくれ! 急いで掃除機持ってくるから! それまで持ち堪えてくれよ!」
//SE 扉を開け急いで階段を降りていく音
◇◆
「間に合ったか⁉︎」
//勢いよく部屋の扉を開ける音
「なんとか間に合ったか! ……って顔が真っ青じゃねぇか⁉︎ おしっこ我慢しすぎると人って顔が青くなんのか!」
「ってそんなこと言ってる場合じゃねぇよな! 急いで髪の毛吸ってくからあと少しだけ我慢してくれ!」
//掃除機で髪の毛を吸引する音
「最悪多少吸い残しがあってもいいからできるだけ早く……」
「こんな状況なのに、おまえにイタズラしたくなるのはなんでだろうな……」
「俺って意外とSなのかも?」
「ご、ごめん! 今は髪の毛を吸うことだけに集中するな!」
「--っ⁉︎」
//SE 掃除機がヘアーエプロンを吸い込みそうになる音
「ごめん⁉︎ 今こんな衝撃与えたらまずかったよな⁉︎ 大丈夫か⁉︎」
「よ、よかった……。とにかく早く吸わねぇと……」
「よしっ、吸い終わった!」
//SE 掃除機の音が止まる
「もう行ってもらって構わねぇから、急いでトイレに向かってくれ!」
「大丈夫か? 1人で行けるか? よかったら一緒についていってやってもいいんだぞ?」
//耳元で囁くように
「はははっ。急いでるのにごめんな! 漏らさないように頑張ってトイレまで我慢するんだぞぉ!」
◇◆
「どうだ? 間に合ったか?」
「ちぇっ。間に合ったのか。間に合ってなかったら俺が一緒に掃除してやろうと思ったのに」
「はははははっ。冗談だよ。そうだな。大人にもなっておしっこなんて漏らすわけないよな」
「ってか大人なら恥ずかしがらずにもっと早くおしっこ行きたいって言ってくれよ。本当に焦ったんだからな?」
「お、俺は漏らさないのかって⁉︎ も、もちろんもう大人なんだから、漏らさないに……決まってるだろ⁉︎」
「……」
//聞き手が何かを察し、微妙な間ができる。
「ほ、ほら、色々とハプニングは続いてるけどもうほとんどメイクは終わってるし、最後にちょっとだけやりたいことがあるから座ってくれ」
「それじゃあ最後に、俺にメイクをされて同じ体勢でずっと座らされていたおまえのために、頭皮マッサージと、肩揉みをサービスしてさしあげます」
「凝ってねぇと思ってる人程凝ってたりするもんなんだぞ」
「君に仕事の疲れを癒してもらおうと思って、YouTude見て勉強したから大丈夫なはず!」
「だからほら、大船に乗ったつもりで」
//SE 聞き手の肩をぽんっと叩く音
「頭だいぶ硬くなってるな〜。肩だけじゃなくて頭皮も凝るって知ってたか? 頭皮が凝ってるってことは血流の流れが悪いってことだから、将来髪の毛がなくなっちゃう可能性もあるんだぞ」
//SE 頭をマッサージする音
「お、おまえにはできれば悲しい頭になってほしくねぇし……」
「も、もちろん悲しい頭になったとしても嫌いになったりはしねぇけどな⁉︎」
「お風呂とかで自分で毎日マッサージするのも効果的らしいぞ」
「まあでも、毎日は面倒臭いしたまにでいいと思うけどな」
「な、なんなら私が毎日お風呂でしてあげても--」
「な、なんでもない‼︎ 気にしないでくれ」
「どうだ? 気持ちいいだろ? 頭皮マッサージ」
「気持ちよくて言葉も出ないのか? そんなに気持ちいいならこれから毎日やってやるぞ」
「いいって。遠慮するなよ。流石に毎日は無理だけど、俺がおまえに会う時は毎回絶対してやるから」
「よしっ、次は肩揉んでやるから」
「よっ、ほっ……」
//SE 肩をマッサージする音
「ん? どうした? なんか気になることでもあるのか?」
「どうしたんだよ、そんなもじもじして。またトイレにでも行きたいのか?」
「トイレじゃないならなんなんだよ。ハッキリしろよ」
「……」
//聞き手が静かな理由を聞く
「--むっ、胸っが当たってる⁉︎ そ、そんな当たる程大きい胸は持ってねぇぞ⁉︎」
「小さくても確かな感触が……じゃねぇ! やめろ! 恥ずかしくて死ねるぅ……」
「でもそんなに感触あるものなのか? その、俺、えー……カップとかなんだけど」
//SE 胸を触る音
「うん、最高の感触でしたじゃねぇよ⁉︎ 俺にからかわれた分しっかりやり返してくるのやめろ!」
「マッサージにこんな危険があったとは……。美容師さんたちも大変だな」
「ま、まあ、でも俺たち付き合ってるんだし? 胸くらい当たっても問題無いというか、ちゃんとお願いしてくれれば別に触ってもいいというか、むしろ触ってもらいたいと言うか……」
「ご、ごめん! 今のなし! 聞かなかったことにしてくれ!」
「はぁ、おまえといると調子狂うぜ〜」
「じゃあとりあえずマッサージもこれで終しまいな」
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