第三章 再び交わった君と

第11話 ロリコンの変態

 由香里との楽しい初デートを終え、翌日には約束通り才川さんが家にやってきた。

 最初は由香里が奇行をしないか不安だったけど、才川さんが居たからかいつも学校で接するような少しそっけない感じだったが無事恙なく才川さんの自宅訪問が終わり今は月曜日の朝。


 デートの日から由香里変わってしまった。極度のスキンシップ全くして来なくなったのだ。私があの後「すごく楽しかった!」と言ったことを気にしているのか多分由香里は我慢している。


 それはまぁ置いといて私は少し遅めに目を覚まし、制服に着替え朝食の準備を始めた。今日は特別な日ではないので、いつも通りトーストにジャムを塗って由香里と共に朝食を楽しむ。


「ねぇ美波ちゃん」

「ん?」

 トーストを齧っていると由香里が話しかけてきた。普段は食事中はあまり話さないので珍しい。


「今日一緒に学校に行かない?」

「え、別にいいけどなんで?」


 いつもは学校で私と由香里が恋人関係にあるのを隠しているので登下校も少しずらし、帰りの買い出しでたまに荷物持ちとして由香里を呼びつける事はあったがこれまで一緒に学校に行こうなどと由香里の方から言ってきたことはなかった。

 どういう心境の変化なのだろうか?


「えっと、もう少し恋人っぽいことしたいなぁなんて…ダメかな?」

「あー、わかった。由香里がしたいなら私はそれで」


「うん、ありがと」


 うん?なんだろう今日の由香里の様子はいつもと違うように見えるけど。少し不安そうにしているっていうのかな?強張った感じの雰囲気を感じる。少し気になった私は直接聞いてみることに。


「ねぇ由香里、今日なんかあった?」

「えっ?…どうして?」


「いつもと様子が違うから、なんか不安そうっていうか。ほんとに大丈夫?」

「あーうん、わかっちゃうか…うん、話すね」


「うん」

「今朝、クラスのグループチャットに私と美波ちゃんがキスしてる写真が送られてきたんだよね」


「え、それって」

「うん、水族館の時の写真で捨て垢で入ってきてたみたいだから誰だかもわからないんだけど」


 つまり、クラスメイトの誰かに私たちの関係をばらすようなことをされてしまったということか。あれ?私グループ入ってないぞ?まぁいいか。


「でもそれって大丈夫なの?由香里は結構有名人だし私みたいなのと仲良くしてるのばれたら困るんじゃない?」


「だから敢えてだよ美波ちゃん」

「敢えて?」


「私結構有名人で一応モテるんだよね。まだ学校に二週間ちょっとしか経っていないのに二回は告白されちゃったし」

「ほへぇ」


 私は由香里の顔と身体を見て改めて思う、あれ私由香里と釣り合って無くね?


「それでね?美波ちゃんが中学の時みたいに何か言われないか心配で…守るためにも今日から学校でも恋人っぽいことして行かないかなって思って」

「あーそれで」


 学校での由香里は超が付くほどの有名人。それに対して私は小学生並みの背丈をした、学校でも才川さんくらいしか碌に話す相手もおらず、休み時間は本を読んで過ごしているような芋くさい女。


 比べるまでもなく私がでも握っていると陰口を言われるに違いない…そこを由香里は心配してくれていたのだろう。私由香里の優しさが本当にうれしいよ。

 

 それからいろいろ話し合った結果、今日から一緒に登下校をすることになり由香里と仲良く恋人つなぎをしながら登校するのだった。



*****



 そして今由香里と一緒に教室に入るとみんなの視線が一斉にこちらに向いた。あ、この感じ怖いかも…


 私が少しばかり不安を感じて固まっていると由香里は繋いでいた手を離し、私と目線を合わせるように屈み私と顔を合わせる。?何をするつもりなのだろ…


「ねぇ、美波ちゃん私たちの関係皆に見せてあげよっか」

「え、それって…」


 いやいや流石みんなが見てる前で流石にしないよね!?多分私の考えていることではないはず…由香里は学校では真面目だしそんな奇行に走ったりしないはず。た、たぶん。


 だが由香里の顔は徐々に私の顔を近づいてきて、私が少し後退しようとすると腰に手を回され顔も背けさせないと頬に手を置いてきた。ごくりと唾を飲み由香里の綺麗な顔が近づいてくる…私は意を決して目をつぶった。


 すると、唇に柔らかいものが触れ離れた。これで終わり…


 そう思っていたのも束の間、私の口の中になにやらねっとりしたものが入ってきて…ん?これってまさか…そう思って私が目を開けると由香里の顔が、いつものベッドの上の獲物のを狙う目をしていた。


 そこで察した、我慢できなかったんだなと…


 腰に回した手がさらに強く引くように力が入り、私は身動きができない状態で数分いや、数十分の間由香里とディープキスすることになったのだ。


 黙って見つめるクラスメイトがいる中激しく響く水音と、私たちの喘ぎ声が教室に響いていた。


 離れた瞬間、私と由香里の口を繋ぐ一本の銀の糸が垂れている。


 終わったころには私は床に倒れこみ見るも無残な恍惚とした表情をしながら由香里を見ると、とても満足そうな表情でよだれを自分の手で拭きながらこちらに向けてきていた。


 私はいつもより激しいキスに動転し、目をつぶるとそのまま気を失ってしまった。


 後から才川さんから聞いた話なのだが、小泉さんはこの一件から「成績優秀スポーツ万能、容姿端麗の有名人」から「みんなの見ている所で激しいディープキスを小さな子に強制するロリコンの変態」としてまた一躍有名人になったのだとか。


 私はというと、ロリコンの変態由香里に弱みでも握られているのでは?と被害者扱いをされ、憐みの視線をしばらく受けると共に中学時代とは逆に心配をするような声を掛けられることになった。


 これが本当に由香里の言っていた恋人なのだろうか…そう思わざる負えない私がいる。

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