第9話 初デートは大切に②
由香里side
ハプニングがあって美波ちゃんに怖い思いをさせてしまった。今回は美波ちゃんが少し大きな声で言い争っていたからすぐに駆け付けられたけど、もし美波ちゃんが無口な子だったらと思うとゾッとする。また私の前から大切な人が消えてしまうのではないかそう思うと震えが止まらなかった。
でもそんな私に気づいたのか、ただ怖かっただけなのかはわからないけど強く抱きしめられたときすごく安心した。もう二度と真紀みたいに誰かに傷付けられたりしないように私がずっと傍に居なきゃ。
「美波ちゃん何飲む?私はオレンジジュースにしよっかな」
「私は、午後ティーで」
「美波ちゃんお金払ってくれる?」
今は水族館に付属してある休憩スペースに来ている。自販機が数台と公園でよく見かける木製のベンチが二個あるだけ。さっきのことがあったせいか一向に離そうにしない私の右手。これでは右ポケットに入っているスマホが取れない。まぁ美波ちゃんの小さくかわいい手を握っていられるのはうれしいけど。
そんなこんなで飲み物を買った二人はベンチに座って飲み物を飲んでいた。
「この後どうしようか、イルカショーは午後でちょっと小腹もすいてきたし何か食べに行く?屋上でちょっとした出店あるみたいだしさ」
「うん、由香里とならどこでもいい」
そう言った美波ちゃんは、飲み物を飲み終えると私の右手を握ってきた。今日はいつもに比べて良く甘えてくる、怖い目に遭った反動かもしれないけど。私も軽く右手を握ると前を向いている美波ちゃんが微笑んだように見えて、少しドキッとしてしまった。
多分これかもそのちょっとした笑顔を私の前でしてくれるのだろう。そのたびに私はドキドキして、我慢できなくて襲っちゃうのかもしれない。でも、その笑顔を見れるのなら我慢も時には悪くないかもと考えてしまう私がいる。
美波side
お昼の時間より少し前、小腹がすいたからと屋上へ。由香里の言った通りいくつもの種類の出店が立ち並んでいた。お昼前ということもあるのかそこまで人は多くなくちらほらと言った感じだ。私はそこまでお腹はすいていないので軽いもので済ませようかな。
「ねぇ美波ちゃん、これとかどうよ」
「棒パン?」
「そうそう串に生地を括り付けて焼くんだって、結構大きいから一本買ってシェアしない?」
「うん、する♪」
棒パンは食べたことはないが一つのものをシェアしながら食べるってなんだかカップルみたいで楽しみ。つい、うれしくなっちゃっていつも一人の時のテンションで返事をしてしてしまった。由香里は気づいていないみたいで注文をしていた、気づかれなかった安心と、少しは気づいてほしかった気持ちがあってモヤモヤしてしまう。
由香里はパンだけだと口の中の水分が無くなりそうだからと言って少し大き目なカップル専用の飲み物を買うことに。ストローがハート型になってるやつだ、初めて買ったかも。
「ん、由香里おいしいよこのパン。焼きたてだから、外はカリカリ中ふわっふわ。パンもほんのり甘いのに粉砂糖が上からまぶしてあってこれまたたまらないよ♪」
「ふふ、美波ちゃんに喜んでもらってうれしい。私にもちょっと頂戴、あーん」
「え、あ、うん熱いから気を付けてね。はい、あーん」
「ん、ありがと。ほんと美味しいね、私初めて食べたけどはまりそう」
「わかる、また食べたくなっちゃうね」
「うん、また此処に来た時に食べようね」
それはデートの予約ってやつですか…私としてはすごくうれしいし、今日の由香里は頼もしいからまた一緒に来たいかも。
軽く昼食を済ませた私たちはごみを捨てて、お土産コーナーに来ていた。
「わー、さっきのグソクムシのぬいぐるみ!大きくてかわいい」
「それ買う?気に入ったなら買ってあげるけど」
「ううん、気持ちはうれしいけど結構高いし、こんなのに生活費使っちゃうのもったいないよ」
「そう?今日の思い出に何か買っていいと思うけど」
「うーん、だとしてもこの大きさだと持ち運ぶの大変そうだし…」
「じゃあ帰りにまた寄ればいいじゃん、えっと大きくないものでーっとこれとかどうかな」
由香里が持って見せてくれたのはウミウシのペアキーホルダーだ。赤と青で別れてあり、こういう所にカップルで来た人が買いそうなものだなんて思ってしまう。
「でもなんでウミウシ?」
「美波ちゃん、目をキラキラさせながら見てたからね。可愛いしよくない?」
「うん、可愛い。ちょっとほしいかも」
「よし来た!買いに行こ」
ウミウシのキーホルダーを買いお互いのスマホに着けることに私が赤で、由香里が青。結構ぶらぶらしてて邪魔そうに見えるけど、よく使うものだからいつでもこれを見て今日のことを思い出せるようにと由香里の提案だった。
あまりこういう、お揃いみたいなのって恥かしくて最初は嫌かもって思ったけど由香里となら少しくらい恥ずかしてもいいかな。
買い物をしているとそろそろイルカショーの時間らしく、会場へと足を運ぶ私たち。どちらからともなく握られた手はいつの間にか恋人繋ぎになっていたことに気づかない二人なのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます